2006年10月24日(火)
OCEANS 12月号 連載#9 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
これ見よがしにならないマエストロ流のこなし方
ラグランスリーブでダブルブレスト6ボタンのレザーコートは、1940年代のダンヒル製でロンドン大学の教授から譲り受けたもの。フィレンツェのリベラーノリベラーノにて仕立てたドーメル社製のガンクラブチェックの生地を使用したスーツに、チャーチのハンティング用ブーツを合わせた着こなしで。取材時は白シャツにホーランド ホーランドの鳥のクレスト柄のタイを合わせて。よりスポーティにこなすならタートルネックのニットを合わせるのがおすすめ。
レザーコートの「粋」
前号ではカシミアのアルスターコートを題材にして粋について話したが、同じコートでも素材がレザーとなると趣はまったく異なる。今回は(注1)ダンヒルのレザーコートを取り上げる。1940年代のドライビング用コートで、親交のあるロンドン大学の教授から譲り受けたものだ。私は服との一期一会を大切にしており、このコートはまさにそのひとつ。偶然に出会い、運よく手に入り、以来、冬が訪れる度に愛用している。説明は割愛するが、移動手段が馬から車に替わり始めた頃に創業したブランドがダンヒル。乗馬、狩猟などのクラススポーツのひとつとしてドライビングが加わり、粋な装いが生まれた。このコートを粋に感じるのは、そうした背景からである。防寒性が高く、前振りの袖で、機能性も申し分ない。(注2)ベルスタッフのライダーズジャケットも然りである。
レザーはウールやカシミア素材と比べて、まったく性質が異なる。経年変化、味の深まり方が違うのだ。レザーは着込まないと、その魅力を発揮しない。しかし、いったんなじみ始めると、自分の皮膚のような感覚でまるで体の一部のようになっていく。キズが付いても、またそれが味わいに。着るほどにいい風合いになる条件は、上質なレザーであること。今でもダンヒルが素晴らしいのは、質のよいものをずっと作り続けていることにある。それは歴史に裏打ちされている。一朝一夕になし得ない品格が、そこには存在する。他には(注3)コノリーも挙げられる。
レザーのコートを粋に着こなすために、気をつけていることがひとつある。それは、「リッチ」に見えないようにすること。レザーはおおむね、高価である。だからこそ、リッチ風に着飾るのは、これ見よがしそのもの。リッチとクラス感はまったく違う。着込んで味わいが深くなったレザーであれば、それを着ている本人と自然な調和が生まれる。だからこれ見よがしなリッチにはならないのだ。これからレザーの新しいアイテムを手に入れるなら、着て外出する前に、できるだけ自宅で試し着を繰り返して、体になじませていただきたい。いかにも下ろし立てに見えるのでは、まるで借り物を着ているようだ。ダンヒルのレザーコートも、今よりは来年、そして10年後のほうが、さらに粋になっていると思うのである。
(注1) 「ダンヒル」
創業者であるアルフレッド・ダンヒルは、1880年代に馬具専門卸業を営む父の家業を引き継いだが、自動車のアクセサリーや小物販売に転身。今日では車を中心としたライフスタイルを提案するラグジュアリーブランドとして発展。
(注2) 「ベルスタッフ」
1924年、イギリスにて創業。本格ライダーズジャケットを扱う老舗。完全防水と通気性の両方を兼ね備えた「ワックスコットン」を世界で最初に使用し、イタリアや日本で大ブレイク。
(注3) 「コノリー」
創業1874年の英国王室御用達のタンナー。ロールス・ロイス、ベントレー、など高級車の内装用皮革として名高く、コノリーレザーと呼ばれ、レザー小物まで展開。
ダンヒルの歴史を語る資料として貴重な「ONE HUNDRED YEARS AND MORE」。
車を中心としたライフスタイル、それにまつわるアイテムを提案した広告などが収められている。
1900〜1970年のカーレースの模様を掲載している写真集。
クラシカルなレーシングカーとともに、当時の粋なドライビングスタイルを紹介。
現代に通じるよきお手本集。
赤峰氏の所蔵本より。
粋な男の一人として、赤峰氏が挙げるのは名優クラーク・ゲーブル。エポーレット付きのレザーコートにタートルネックを合わせ、パイプでタバコをくゆらせる。この姿が実に洒脱。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
Y.アカミネのカバーコート
乗馬用のコートをイメージして、街着用としてデザインしたコート。Y.アカミネにて4年ほど前に製作。素材はウェイトの軽いキャバリーツイル。上襟はベルベット素材。軽快に歩きたいから、着丈を短めに。ドライビングコート同様、クラススポーツ感が漂う一着。赤峰氏はジャケット代わりとして、カシミアニットに5ポケットパンツ、足元はジョッパーブーツで合わせるのがお気に入り。
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2006年10月06日(金)
MEN'S EX 11月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.6 [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマをひとつ決め、それに基づいてファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。
「今月のテーマ」
タイドアップのジャケットスタイル
今回のテーマはタイドアップしたエレガントなジャケットスタイル。今回は、いつにも増してエレガントな着こなしを披露してくれました。菊池さんがプロデュースするショップ、40カラッツ&525にて撮影。ひょんなことからお2人でタッグを組み、夢のコラボジャケットを作ることになりました。
■(写真右)菊池武夫氏
・ボサリーノのキャスケット
・ドルチェ&ガッバーナの白シャツ
・アルテアに別注した40カラッツ&525のタイ
・ルイ・ヴィトンのシルクシフォンストール
・スクーデリのヴェスト
・40カラッツ&525のカシミア製1枚仕立てジャケット
・プラダの7〜8年前のジョッパーズ
・カチンのハラコ風シューズ
■(写真左)赤峰幸生氏
・シャルベのロイヤルオックスフォードオーダーシャツ
・ニッキーのカシミアニットタイ
・Y.アカミネのラムズウールのジャケット
・イ プロンティの赤メガネ
・マビテックスのウールパンツ
・ジョージクレバリーのストレートチップ
連載ネームの「Be Buffalo Forever!」をブランド名にしたジャケットを作りませんか、というM.E.の提案に興味を示してくださったお2人。
お2人の力を結集して1着のジャケットを作ることに決定。いつの間にか連載の話しは終わり、そっちの話で盛り上がりっ放しに。
一週間後に再びミーティングの約束。春夏の商品化に向け始動です。
■ジャケパンはエレガントに着てこそカッコいい
M.E. 今回のテーマはジャケット&パンツです。ヨーロッパだとジャケット&パンツでビジネスに臨むのは以前から当たり前のことになっていますけど、日本ではジャケパンっていうと、カジュアルなイメージが先行しています。それを覆す提案をしたかったわけですが、お2人の今日のスタイルはいつになくドレッシーですね。
菊池 きちんとした格好をしたいっていうのがここ最近の気分なんです。そういうのが前提にあって、夏頃から細いパンツを穿きたくて、でもただ細いだけだと、ヒネリがなさすぎますよね。その点、(注1)ジョッパーズだと上が緩くなっていてシルエットに表情があるでしょう。そんなわけで、今日はジョッパーズを合わせてみたんです。あとはベストを着たくて仕方がなかったっていうのもあって、その2つで上手く自分らしさを表現してみました。
赤峰 今日のスタイリングは先生でないと着こなせないですよね。何げない感じですけど、難易度は凄く高い。'30年代のドレスアップしたリッチな紳士の雰囲気を見事に醸し出していますよね。レベル5って感じです(笑)。
菊池 震度5って感じですかね(笑)。
(撮影中に震度3の地震があったばかりだったので)
赤峰 ハッハッハッ(笑)。震度5ですね。で、そのカシミアのジャケットもいい味出していますよね。
菊池 最近は肩がキチッとしたタイプのジャケットが人気ですけど、私がそういうのを着ると、急に借り物の猫みたいになってしまうんです。今日着ているジャケットは去年40カラッツ&525で作ったもので、新品の感じがイヤだったので、洗濯機で洗ってしまったんです。着慣れた感じを出したかったんですよね。で、乾燥機に入れて全体的に縮めようと思ったら、丈しか縮まなくて失敗してしまったんです(笑)。とはいえ、前回着たのが新作で落ち着かなかったので、今日は着慣れているものを選びました。
赤峰 洋服を自分のイメージの顔つきにしたいっていう気持ちがあるんでしょうね。それ、よくわかります。そのときの菊池さんの顔ってもの凄く真剣なんでしょうね(笑)。
菊池 きっとそうだと思います(笑)。
赤峰 あと、今日の菊池さんのスタイリングを見て感じた点は、リアルなクラシックであるということ。近年いわれているイタリアのクラシックとは趣を全く異にする、クラシック違いなんですよね。往年のヨーロッパの紳士の本物のスタイルですよね。その中にフレンチっぽい着こなしを取り入れているあたりは菊池さんならではです。
菊池 そのとおり。イタリアでもないし、英国でもないんです。フランスなんですよね。英国は時として真面目すぎな感じがしますよね。
赤峰 確かに。本当、パリって感じなんです。昔のロンシャン競馬場とかで双眼鏡を持っている紳士って感じ(笑)。この上にカシミアのグレイのオーバーコートとか着たらカッコイイですよね。
菊池 ああ〜、いいですよね。確かにそういう気分です。ところで赤峰さんが着てらっしゃるジャケット、実は今日、僕もそれを着ようかなって思っていたんです。
M.E. 持っていらっしゃるんですか?
菊池 実は赤峰さんの展示会で見て気に入ってしまって、お店の商品としてジャケットを何種類か買い付けたんです。でも、赤峰さんが着てこられたので、諦めました(笑)。
赤峰 '60年代くらいのハリウッドの連中が着ていたような感じをイメージしたんです。今日着ているジャケットのイメージがあるのは、(注2)ジョージ・ハミルトンです。白黒の千鳥格子に白シャツって感じで。これは英国のアーカイブの生地を復刻して作ったものなんですけど、ピュア・ラムズウールを使っていて、風合いが凄くいいんです。
菊池 コシがあるけど、ソフトなんですよね。着込むほどに味わいも増していきそうですし。で、そのジャケットを凄くエレガントに着ていらっしゃる。'60年代風の着こなしというだけあって、ネクタイも細くて、パンツもダブルで太くあげていて、細かいところも抜かりないですよね。
赤峰 ちゃんとアメリカンポケットになっているんですけど、これはかれこれ17年くらい穿いているマビテックスのパンツです。フレンチ・アメリカンって感じですね。本当は昔のケーリー・グラントのやつみたいに、こういう格好にダボダボのシャツを、巻き込んで入れるようにして合わせるのがスタイルなんです。でも、まんま昔のままにしてもしょうがないので、そこまでは再現しませんでしたけど(笑)。近年出回っているノーパッドでアンコンタイプのとは方向性を全く異にするジャケットっていうのかな。ドレスのマインドがベースにあるんです。
■お2人ともフレンチの着こなしが最近の気分
菊池 ところで、赤峰さんがほかに気になっているジャケットってありますか?
赤峰 グレンチェックのジャケットは相当気になっています。千鳥格子かグレンチェックのジャケットのスタイルかな。あとは首が長めのフルタートルネックニットです。今日みたいなジャケットに、シェットランドのタートルの襟口が伸びてきてしまった感じのを合わせてもカッコいいと思うんです。若いときの(注3)クラーク・ゲーブルみたいなイメージです。フレンチでいうとジャン・ギャバンあたりかな。
菊池 そうですね、よくわかります。
赤峰 菊池さんが気になっているアイテムはなんですか?
菊池 第1回のブレザーのときに話しましたけど、ミディアムグレイよりちょっとライトなフランネルのダブルのジャケットを着たいんです。
赤峰 ダブルで下1つ掛けとかで着るとカッコイイですよね。Vゾーンも深めでね。ジャン・ギャバンとか(注4)リノ・ヴァンチュラみたいな感じです。ただ、最近、文化的にジャケットをエレガントに着こなしてる人って少ないなって思うんです。「このオヤジ、お洒落だな」って思える人って、イタリアとか見ていてもほとんどいない。どこか田舎っぽく感じてしまうんですよね。カッコいい人ってもっとシックですよ。さっき話したように、お洒落なフランス人って絶対的な人数は少ないですけど、お洒落な人のレベルは本当に高いですから。
菊池 確かにフランス人のお洒落な人って、本当にシックだと思います。コーディネーションのスキルが高くないと、ジャケット&パンツって上手くこなせないじゃないですか。
赤峰 モーリス・ロネとかもヤバいくらいにカッコいいですしね。
菊池 「死刑台のエレベーター」で彼が見せた着こなしって最高ですよね。
M.E. 実は前から思っていたんですけど、お2人のアイデアを合わせて、「Be Buffalo Forever!」ってブランド名で一着のジャケットを作ってみませんか?今でこそお2人の着こなしは全く異なりますけど、通過してきた原点が一緒なので面白いように話が通じ合っているなって思っていたんです。完成したら、それを着て連載ページにご登場いただいて(笑)。洋服が大好きな読者の琴線に触れるような1着を作って、40カラッツ&525で展開しましょうよ。
菊池 おっ、それは面白いですね(笑)。
赤峰 では、早速打ち合わせしましょうか(笑)。
菊池 今からだと、秋冬は間に合わないから春夏の商品化を目指して練っていきましょう。春夏に向けてだったら、時間はたっぷりありますし、きっと面白いものができますよ。
※そんなわけで、本連載でお2人のコラボレーションによるジャケットを作ることになりました。お二人ともかなりやる気になっていただいており、現在打ち合わせを重ねているところです。お二人が手掛けた夢のコラボジャケット、上手くいけば3月号あたりでお披露目できるかと思います。
(注1) 「ジョッパーズ」
乗馬用の長ズボン。動きやすさを重視しているため、上方部はゆったりしていて、膝から裾にかけてはスリムでぴったりフィットしたシルエットが特徴。
(注2) 「ジョージ・ハミルトン」
1939年、テネシー州メンフィス生まれ。役者としては有名ではないが、赤峰さんは彼の着こなしを絶賛。作品としての代表作は'79年の「ドラキュラ都へ行く」など。
(注3) 「クラーク・ゲーブル」
1901年、オハイオ州生まれ。'24年に「禁断の楽園」でデビュー。'34年の「或る夜の出来事」でアカデミー主演男優賞を受賞。'39年の「風と共に去りぬ」で大スターに。
(注4) 「リノ・ヴァンチュラ」
1919年、伊パルマ生まれ。幼少時にフランスへ移住。'54年に「現金に手を出すな」でデビュー。ギャングや刑事の役を多く演じた。代表作は「情報は俺が貰った」など。
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菊池さん的JKの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]
ヴェストを取り入れてフォーマル感を演出
ヴェストでフォーマル感を演出しているのが肝。で、気がつけば3号連続の紹介となる、ルイ・ヴィトンのシルクシフォンのモノグラム柄スカーフ。菊池さんの定番アイテムです。
ジョッパーズでシルエットが◎です
気分的に穿きたかったというジョッパーズ。フツウのスリムパンツではなく、太もものあたりにふっくらボリュームがあるので、菊池さんならではのスタイリングが完成します。
圧倒的な素材感で個性を演出します
かなりインパクト大なハラコ風シューズ。シックな黒でまとめながらも、ハラコ風のモコモコが圧倒的な存在感を放ちます。フォルムが美しいので、違和感なくまとまっています。
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赤峰さん的JKの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]
差し色として色メガネを使います。
赤峰さんの最近のお気に入りである色メガネ。色を抑えた着こなしの中で、差し色として使うのが赤峰流。普段は胸ポケットに挿した白チーフの後ろからチラリと覗かせています。
'60年代のアメリカを意識しています
ネクタイはやや長めのものを選び、ノットを小さく結んでいます。'60年代のアメリカを意識しているということで、パンツもLポケットのタイプを合わせるこだわりようです。
シャツのカフで赤峰流ニュアンスを
赤峰さんはベーシックなアイテムを好みますが、その中で自分なりの着こなしをどう表現するかにこだわります。シャツのカフで写真のようにニュアンスをつけるのも、氏の定番。
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2006年09月29日(金)
エスクァイア日本版「LAST(vol.8)」11月号臨時増刊(男の靴雑誌)に登場しました。 [LAST掲載記事]
紳士の着こなしに欠かすことの出来ない「靴」と「服地」との関係をご覧下さい。
Fabric & Shoes
達人たちが選ぶ、ファブリックと靴。
靴とスーツの着こなしを考えるなら、生地、ファブリックへの視点は欠かせない。そこで紳士の着こなしを熟知した6名の達人たちに、今気になる素材と靴のマリアージュを聞いた。
Akamine's choice 1
「ジョシュアフランスのオイスター、グレーバーズアイ」×「英国調の黒のフルブローグ・オックスフォード」
ジェントルマンズドレスアップといいましょうか、今季の全体の気分としてモノトーンを軸足にして、英国素材に注目しています。このジョシュアフランスのオイスターというシリーズは、世界の錚々たるテーラーでジェントルマン御用達の重要なバンチです。通常300g/m前後が多いですが、このバースアイは400g/mと重く、シワになりにくい反面、クリースが取りにくい。鳥の目のような柄は、紳士用スーツ生地に多用されます。服を持つと重く感じますが、着ると軽い本物です。リアルなものをきっちり捉えるのが、時代の要請でしょう。
ウェイトが重いので、それに見合うものとして靴はフルブローグ・オックスフォードがいいでしょう。色は生地のトーンに合わせ黒。私は長年、フローシャイムのインペリアムを愛用してますが、英国調のものもいい。イメージはウィンストン・チャーチル。英国を代表する紳士の身嗜みには見習うところが多く、ダブルブレストに黒のフルブローグは象徴的着こなしです(談)。
【GEORGE CLEVERLEY】
伝説の靴職人、ジョージ・クレバリーの遺志を継ぎジョージ・グラスゴウらにより復活。無骨なフルブローグも、細身でエレガントなトゥシェイプに仕上げてしまうのは、ここならではの力量だろう。¥73,500(ジョージ クレバリー/ビームス ジャパン5F tel.03-5368-73005)
Akamine's choice 2
「ドーメルのスポーテックスヴィンテージ、白黒グレン&ブルーオーバープレイド」×「英国調のパンチドキャップトゥ・オックスフォード」
今年から来年にかけてはモノトーンです。このウィンザー公が着用したことから名付けられた、白黒グレナカートのプリンス・オブ・ウェールズ・チェックは、男のエレガンスの象徴です。ドーメルのスポーテックスヴィンテージは、1922年に初めてのスポーツクローズ用として作られたもので、それを復刻。380g/mあり重厚感があります。是非2Bシングルブレストで着て戴きたい。靴は黒のセミブローグ。
映画「第三の男」でオーソン・ウェルズがしていたスタイルが、今も頭から離れないくらい格好良かった。日本人は甲広ですから、なるべくレースを絞り込んで先を長く見せ、シャープに履き込んで欲しい。ロングノーズのものではなく、ベーシックな靴でそうするのです。そしてパンツ裾はダブルで、幅は5.5cm、丈はワンクッション入るか入らない程度が粋。今はなきワイルドスミスのパンチドキャップトゥ・オックスフォードを愛用していますが、細身のフォルムで繊細な仕上げの英国調のものが生地に合います(談)。
【JOHN LOBB】
切り返しはギザとパンチ入りで、カーフの光沢が美しい。ラスト7000のスマートなフォルムが持つ、絶妙なバランスに魅了される。150年近い長い歴史の中で培われた、男の英国靴のエレガンスが凝縮されている。¥199,500(ジョン ロブ/ジョン ロブ ジャパン tel.03-6267-6010)
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2006年09月24日(日)
OCEANS 11月号 連載#8 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
マエストロ赤峰さんのアルスターコートのこなし方
フィレンツェのリベラーノ&リベラーノで10年ほど前に仕立てたアルスターコートは、スコットランド・コロンビー社製のカシミアを使用。ツイードジャケット、ラウンドカラーのシャツ、ブラウンウールのタイ、グレーフレンネルのパンツ、ブラウンスウェードのシューズを合わせ、粋なこなしを実践している。
アルスターコートの「粋」
秋冬の粋を語るには、コートを取り上げないわけにはいかないだろう。まずモデルではトレンチコートや(注1)バルカラーコート、そして(注2)ダッフルコート、Pコートについて。私はこれらの普遍的なモデルを好む。ただしかし、もともと、ミリタリーや作業着として生まれ、後にファッションに転じたコートであるために、いささかドレスマインドに欠ける。もちろん、それが持ち味なのだから、粋にこなせるかどうかはTPO次第となる。(注3)チェスターフィールドコートもいい。これは昼夜兼用の正装用コートであるから、ドレスアップしたフォーマルシーンにふさわしい。私が好むコートのひとつである。けれども、日常のシーンで着るにはドレッシーすぎて、応用度に欠けるところがある。
少々、前口上が長くなったが、こうしてコートを俯瞰し、もしも1着だけコートを選ぶとするならば、私の場合、アルスターコートに辿り着く。この名はあまり聞き慣れないかもしれないが、いわゆるオーバーコートの典型。ラペル幅が広く、ハイウエストで丈は膝下程度、腰ベルトもしくは背バンド付きで、ダブルブレストの6つもしくは8つボタン、そして折り返しのある袖口が特徴に挙げられる。セミフォーマルのポジショニングであり、“ドレス・スポルティーボ”といった感覚でこなすのが好きである。ドレスに振っても、スポーティに振っても、立ち姿が実にエレガント。つまり、魅力は着こなしの幅が広いことだ。カラーは(注4)キャメルがいい。ネイビーやグレーよりも上品にこなせて、アルスターコートの持ち味が引き出される。素材はヘビーウェイトのウールが一般的ではあるが、(注5)カシミアであれば、より品のよさが際立つ。
アルスターコートは、日本でも昭和初期に紳士が好んで着ていた。外套(がいとう)という呼び方がしっくりとくる。私は西洋の服飾を何でも賞賛し、彼らの真似をしようとは思わない。ただし、歴史的背景は大切にしたいと思っている。服飾の歴史が浅い我々日本人は、基本を知って、それから応用するべきだと思っている。あの(注6)白洲次郎が、サヴィルロウで仕立てたスーツを着ても、日本人のマインドを表していたように。アルスターコートの粋なこなし方も、然りだ。
(注1) 「バルカラーコート」
着脱が楽な、ラグランスリープ(襟ぐりから袖下にかけて斜めの切り替え線の入った袖)が特徴。日本では、ステンカラーコートとも呼ばれている。
(注2) 「ダッフルコート」
別名、モンゴメリーコート。モンゴメリーという英国軍人の名に由来。イタリアでもモンゴメリーといえば、ダッフルのことを指す。
(注3) 「チェスターフィールドコート」
本来は黒か濃紺で、上襟のベルベットが特徴だが、最近では襟付きの比翼仕立てのコート全般の呼称として使用されている。
(注4) 「キャメル」
ここでは色のこと。キャメルヘアと言えばラクダ毛のこと。とても上等でキャメルヘアのコートはエレガントの極みとされる。
(注5) 「カシミア」
赤峰氏のアルスターコートは、キャメルカラーのカシミア製。162ページからのデニムにカシミアを合わせる特集もご参考に。
(注5) 「白洲次郎」
ご存知、日本における粋を極めようとした第一人者。英国のスーツの聖地、サヴィルロウでスーツを仕立てていたことは、つとに有名な逸話である。
コートの羽織り方にも粋な作法があるんです
右上■その1.コートのポケットではなく、ボタンを留めずにパンツのポケットに直接手を入れる。
左上■その2.袖を通さずに、肩掛けにする。
右下■その3.片方の肩だけに引っ掛けるetc.
あくまで、さりげなく。これらに共通するのは、「自然な立ち居振る舞いに見える」ことで、これ見よがしなのはいけない。胸ポケットにチーフを挿すのは○でも、グローブを入れるのは×、との弁も頂戴いたしました。
赤峰氏所有の「MAN'S FASHION」誌から。
イラストのアルスターコートは、アルスターのデザインが生まれた当時にほぼ忠実。そして、それがほぼ変わらず、今に受け継がれていることがわかります。
このスクラップブックは、赤峰氏が高校生の頃にアイテム別にさまざまな粋な着こなしを切り抜いて集めていたもの(驚き!!)。その中から、アルスターコートを着ているクラーク・ゲーブルを発見。まさに粋な立ち居振る舞い。
アルスターコートは、別名でブリティッシュ・ウォーマー、またはポロ・コートとも呼ばれます。
そして、こちらは1970年、ブリオーニ的、つまり、イタリア的に解釈されたもの。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
ヴィンテージのC.P.O.アウターシャツ
蔵出しアイテムとして紹介するのは、'60年代のアメリカ軍のC.P.O.(Chief Petty Officerの略で「下士官」の意)と呼ばれるスポーティなシャツジャケット。4年ほど前にパリのヴィンテージショップで見つけて購入。そのコンディションのよさに驚いたそう。圧縮ウールの質感や赤の発色が今のモノにはないクオリティ、とは赤峰氏の弁。流行を追いかけず、服の生まれた背景を大切にしている氏の審美眼にかなった一品。
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2006年09月22日(金)
繊研新聞に掲載されました [繊研新聞掲載記事]
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