AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2006年10月24日(火)

OCEANS 12月号 連載#9 [OCEANS掲載記事]

King of Elegance

マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」

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これ見よがしにならないマエストロ流のこなし方

ラグランスリーブでダブルブレスト6ボタンのレザーコートは、1940年代のダンヒル製でロンドン大学の教授から譲り受けたもの。フィレンツェのリベラーノリベラーノにて仕立てたドーメル社製のガンクラブチェックの生地を使用したスーツに、チャーチのハンティング用ブーツを合わせた着こなしで。取材時は白シャツにホーランド ホーランドの鳥のクレスト柄のタイを合わせて。よりスポーティにこなすならタートルネックのニットを合わせるのがおすすめ。

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レザーコートの「粋」

 前号ではカシミアのアルスターコートを題材にして粋について話したが、同じコートでも素材がレザーとなると趣はまったく異なる。今回は(注1)ダンヒルのレザーコートを取り上げる。1940年代のドライビング用コートで、親交のあるロンドン大学の教授から譲り受けたものだ。私は服との一期一会を大切にしており、このコートはまさにそのひとつ。偶然に出会い、運よく手に入り、以来、冬が訪れる度に愛用している。説明は割愛するが、移動手段が馬から車に替わり始めた頃に創業したブランドがダンヒル。乗馬、狩猟などのクラススポーツのひとつとしてドライビングが加わり、粋な装いが生まれた。このコートを粋に感じるのは、そうした背景からである。防寒性が高く、前振りの袖で、機能性も申し分ない。(注2)ベルスタッフのライダーズジャケットも然りである。
 レザーはウールやカシミア素材と比べて、まったく性質が異なる。経年変化、味の深まり方が違うのだ。レザーは着込まないと、その魅力を発揮しない。しかし、いったんなじみ始めると、自分の皮膚のような感覚でまるで体の一部のようになっていく。キズが付いても、またそれが味わいに。着るほどにいい風合いになる条件は、上質なレザーであること。今でもダンヒルが素晴らしいのは、質のよいものをずっと作り続けていることにある。それは歴史に裏打ちされている。一朝一夕になし得ない品格が、そこには存在する。他には(注3)コノリーも挙げられる。
 レザーのコートを粋に着こなすために、気をつけていることがひとつある。それは、「リッチ」に見えないようにすること。レザーはおおむね、高価である。だからこそ、リッチ風に着飾るのは、これ見よがしそのもの。リッチとクラス感はまったく違う。着込んで味わいが深くなったレザーであれば、それを着ている本人と自然な調和が生まれる。だからこれ見よがしなリッチにはならないのだ。これからレザーの新しいアイテムを手に入れるなら、着て外出する前に、できるだけ自宅で試し着を繰り返して、体になじませていただきたい。いかにも下ろし立てに見えるのでは、まるで借り物を着ているようだ。ダンヒルのレザーコートも、今よりは来年、そして10年後のほうが、さらに粋になっていると思うのである。

(注1) 「ダンヒル」
創業者であるアルフレッド・ダンヒルは、1880年代に馬具専門卸業を営む父の家業を引き継いだが、自動車のアクセサリーや小物販売に転身。今日では車を中心としたライフスタイルを提案するラグジュアリーブランドとして発展。


(注2) 「ベルスタッフ」
1924年、イギリスにて創業。本格ライダーズジャケットを扱う老舗。完全防水と通気性の両方を兼ね備えた「ワックスコットン」を世界で最初に使用し、イタリアや日本で大ブレイク。


(注3) 「コノリー」
創業1874年の英国王室御用達のタンナー。ロールス・ロイス、ベントレー、など高級車の内装用皮革として名高く、コノリーレザーと呼ばれ、レザー小物まで展開。


 

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ダンヒルの歴史を語る資料として貴重な「ONE HUNDRED YEARS AND MORE」。
車を中心としたライフスタイル、それにまつわるアイテムを提案した広告などが収められている。

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1900〜1970年のカーレースの模様を掲載している写真集。
クラシカルなレーシングカーとともに、当時の粋なドライビングスタイルを紹介。
現代に通じるよきお手本集。
赤峰氏の所蔵本より。

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粋な男の一人として、赤峰氏が挙げるのは名優クラーク・ゲーブル。エポーレット付きのレザーコートにタートルネックを合わせ、パイプでタバコをくゆらせる。この姿が実に洒脱。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 2 )

コメント

時代を超えても存在感のあるヴィンテージなもの、服を扱う自分にとって、自分自身が又ヴィンテージと言われる生き方をしているのか、いつも自問自答いたしております。2007秋冬より日本橋三越本店2FにてAkamineRoyalLineをスタートさせました。10着ても耐え忍べる服作りをテーマに日本の男の品格とは何か、いつも問いかけております。
これからもよろしくお願い致します。

Aka 2007年09月21日 11時18分 [削除]

赤峰先生の記事を読んで、いつも勉強させていただいております。自分もヘビーウェイトで仕立て栄えする生地が好きですので、非常に参考になります。
この記事のダンヒルのビンテージレザーコートすばらしいですね。小生もこのようなレザーコートを購入したいと思うのですが、最近のレザーコートはラムか、もしくは非常に薄く削ぎ、なめしたぺらぺらのカーフなどばかりで、着込んではじめて自分のものになるようなものが見つかりません。薄くて軽く、しなやかなレザーも素晴らしいとは思うのですが、どうせならしっかりしたものが欲しいと思ってしまいます。がっちりした素材でも、仕立てが良ければ重さは感じないと思いますし。
赤峰先生のコートのような60年の歳月を経ても、なお輝いているようなレザーコートは手に入らないのでしょうか?お忙しいとは思いますが出来ましたら、何かご助言いただければと思います。
それではこれからもお体に気をつけて、日本のファッション界をリードし続けてください。毎月の先生の記事、楽しみにしております。

れの 2007年09月09日 04時58分 [削除]

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朝日新聞土曜版be 赤峰幸生の男の流儀 『豊かさ問い続ける』 2014年8月23日(土)掲載

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