AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2006年09月24日(日)

OCEANS 11月号 連載#8 [OCEANS掲載記事]

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King of Elegance

マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」


 
マエストロ赤峰さんのアルスターコートのこなし方

フィレンツェのリベラーノ&リベラーノで10年ほど前に仕立てたアルスターコートは、スコットランド・コロンビー社製のカシミアを使用。ツイードジャケット、ラウンドカラーのシャツ、ブラウンウールのタイ、グレーフレンネルのパンツ、ブラウンスウェードのシューズを合わせ、粋なこなしを実践している。

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アルスターコートの「粋」

秋冬の粋を語るには、コートを取り上げないわけにはいかないだろう。まずモデルではトレンチコートや(注1)バルカラーコート、そして(注2)ダッフルコート、Pコートについて。私はこれらの普遍的なモデルを好む。ただしかし、もともと、ミリタリーや作業着として生まれ、後にファッションに転じたコートであるために、いささかドレスマインドに欠ける。もちろん、それが持ち味なのだから、粋にこなせるかどうかはTPO次第となる。(注3)チェスターフィールドコートもいい。これは昼夜兼用の正装用コートであるから、ドレスアップしたフォーマルシーンにふさわしい。私が好むコートのひとつである。けれども、日常のシーンで着るにはドレッシーすぎて、応用度に欠けるところがある。
 少々、前口上が長くなったが、こうしてコートを俯瞰し、もしも1着だけコートを選ぶとするならば、私の場合、アルスターコートに辿り着く。この名はあまり聞き慣れないかもしれないが、いわゆるオーバーコートの典型。ラペル幅が広く、ハイウエストで丈は膝下程度、腰ベルトもしくは背バンド付きで、ダブルブレストの6つもしくは8つボタン、そして折り返しのある袖口が特徴に挙げられる。セミフォーマルのポジショニングであり、“ドレス・スポルティーボ”といった感覚でこなすのが好きである。ドレスに振っても、スポーティに振っても、立ち姿が実にエレガント。つまり、魅力は着こなしの幅が広いことだ。カラーは(注4)キャメルがいい。ネイビーやグレーよりも上品にこなせて、アルスターコートの持ち味が引き出される。素材はヘビーウェイトのウールが一般的ではあるが、(注5)カシミアであれば、より品のよさが際立つ。
 アルスターコートは、日本でも昭和初期に紳士が好んで着ていた。外套(がいとう)という呼び方がしっくりとくる。私は西洋の服飾を何でも賞賛し、彼らの真似をしようとは思わない。ただし、歴史的背景は大切にしたいと思っている。服飾の歴史が浅い我々日本人は、基本を知って、それから応用するべきだと思っている。あの(注6)白洲次郎が、サヴィルロウで仕立てたスーツを着ても、日本人のマインドを表していたように。アルスターコートの粋なこなし方も、然りだ。

(注1) 「バルカラーコート」
着脱が楽な、ラグランスリープ(襟ぐりから袖下にかけて斜めの切り替え線の入った袖)が特徴。日本では、ステンカラーコートとも呼ばれている。


(注2) 「ダッフルコート」
別名、モンゴメリーコート。モンゴメリーという英国軍人の名に由来。イタリアでもモンゴメリーといえば、ダッフルのことを指す。


(注3) 「チェスターフィールドコート」
本来は黒か濃紺で、上襟のベルベットが特徴だが、最近では襟付きの比翼仕立てのコート全般の呼称として使用されている。


(注4) 「キャメル」
ここでは色のこと。キャメルヘアと言えばラクダ毛のこと。とても上等でキャメルヘアのコートはエレガントの極みとされる。


(注5) 「カシミア」
赤峰氏のアルスターコートは、キャメルカラーのカシミア製。162ページからのデニムにカシミアを合わせる特集もご参考に。


(注5) 「白洲次郎」
ご存知、日本における粋を極めようとした第一人者。英国のスーツの聖地、サヴィルロウでスーツを仕立てていたことは、つとに有名な逸話である。

 
 

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コートの羽織り方にも粋な作法があるんです

右上■その1.コートのポケットではなく、ボタンを留めずにパンツのポケットに直接手を入れる。
左上■その2.袖を通さずに、肩掛けにする。
右下■その3.片方の肩だけに引っ掛けるetc.
あくまで、さりげなく。これらに共通するのは、「自然な立ち居振る舞いに見える」ことで、これ見よがしなのはいけない。胸ポケットにチーフを挿すのは○でも、グローブを入れるのは×、との弁も頂戴いたしました。

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赤峰氏所有の「MAN'S FASHION」誌から。
イラストのアルスターコートは、アルスターのデザインが生まれた当時にほぼ忠実。そして、それがほぼ変わらず、今に受け継がれていることがわかります。

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このスクラップブックは、赤峰氏が高校生の頃にアイテム別にさまざまな粋な着こなしを切り抜いて集めていたもの(驚き!!)。その中から、アルスターコートを着ているクラーク・ゲーブルを発見。まさに粋な立ち居振る舞い。

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アルスターコートは、別名でブリティッシュ・ウォーマー、またはポロ・コートとも呼ばれます。
そして、こちらは1970年、ブリオーニ的、つまり、イタリア的に解釈されたもの。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘暑い夏は肌感覚で素材を吟味’』2012年6月23日(土)掲載

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