AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2013年09月12日(木)

MEN'S EX 2013年10月号 赤峰幸生の「服育のすゝめ」 vol. 10 [MEN'S EX 掲載記事]

自分の定番≠作ろう その@

『リヴェラーノ&リヴェラーノ』

消費的なファッションから真の洒落者は生まれない

仕事柄、世界各地で多くの洒落者を目にする機会がありますが、彼らには共通する点があります。それは、確固たる自分のスタイルを持っているということ。誰かの家を訪ねたとき、その人の生活が染み込んだ、その家ならではの匂いを感じるように、着こなしからその人ならではの匂いが薫る。そんな装いを見ると「こいつ、ヤリな」と思ってしまいます。

自分のスタイルを確立する方法。それは、これと決めた自分の定番アイテムを、ある程度長く着続けていくことです。すると、服が自分に一体化して着こなせる≠謔、になります。そして、自分ならでのスタイルが培われていくのです。

トレンドを追い求めるあまり、消費的なファッションの陥っていないでしょうか。それでは、自分のスタイルを築くことはできません。自分の定番を持っている人は、流行に振り回されるのではなく、自分の定番を軸として、そこに流行を調味料のように加えます。そのため、時代遅れに映ることもないのです。そんな自分の定番≠作るためのご参考に、私が愛する定番をご紹介しましょう。

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初回の赤峰的定番は、フィレンツェのサルト、リヴェラーノ&リヴェラーノのスーツ。現オーナーのアントニオとは30年来の友人で、今では家族ぐるみの付き合い。もちろん他のサルトとも交流を持っていますが、リヴェラーノは行きつけとしてとりわけ懇意にしています。今まで何着もス ミズーラしましたが、それらはすべて私の定番品。10年、15年前に作った服もいまだに来ています。

私がなぜリヴェラーノにこだわるのか。……その理由を説明するのは、実は少々難しいことです。特徴的なディテールはいくつかありますが、私にとってそれらは、リヴェラーノにこだわる最大の理由にはなりません。強いて言うなれば、アントニオとの信頼関係。これが一番の理由です。注文服においては、作り手との意思疎通が最も重要。互いの好みと美意識を理解し、共感してこそ、満足のいく一着が生まれるのです。アントニオは私の最も良き理解者のひとり。生地から仕立ての好みまで、完全に把握しています。私が彼を訪ねると、彼は店の奥から、他の客には出さないような、目付けのある重厚な生地を出してきます。生地に対する私のこだわりとして、横糸の密度が高いヘビーウェイトのものを選ぶ、というものがあります。10年、20年と長く着るためには、耐久性が重要だからです。よって私のスーツはもっぱら、英国生地や自分で企画した日本生地で仕立てられたものるその重厚な生地を使いつつ、仕立ては柔らかく。これが私のこだわりなのです。アントニオはそんな私の好みを重々知っているからこそ、とっておきの生地を出してくれるのです。

「クラシックはひとつ」とアントニオはいつも語ります。数多くのサルトをとっかえひっかえするのではなく、軸足をひとつに置くべしという意味です。こんな考え方も大いに賛同するところ。私のクラシックスタイルを体現する一着が、リヴェラーノのスーツなのです。

今月の総括

長く愛用する自分の定番を持てば、流行を超えたスタイルを築ける

Posted by インコントロ STAFF at 10時09分 Permalink  コメント ( 0 )

2013年09月09日(月)

朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『スタンダードをつくる』 2013年9月7日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]

 ヨーロッパでは、物心ついた頃から革靴を履き、「ディナーの時には上着を着なさい」と教育を受けます。紺、茶、グレーが男の基本的な色みであることや、適切なサイズ選びなど、装いの基本を父親が息子に教え込んでいきます。

 一方、日本において洋装が一般化してからまだ60年余り。「スタンダード」が確立せず、親から子への「服育」も不十分だと感じています。
 
基本がないままに、「違い」を競い、おかしなファッションが生まれているのが、現在の日本ではないでしょうか

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イラスト・YAB

 売り手にも問題があります。次々と新しいモノを買ってもらわなければならない事情から、基本となる品ぞろえを怠ってきました。普遍のスタイルを示さないまま、トレンドの追いかけごっこに駆り立てるアパレルの状況は、たいへん腹立たしい。
 
今こそ、「ジャパニーズ・ジェントルマン」の基準を打ち立てなければならない。そんな思いで私が関わっているのが、オンワード樫山が展開する「五大陸」というブランドです。
 
店頭に並びだした今年の秋冬物にも、変わったものはありません。あくまでも「スタンダード」に視点を置いた商品が並んでいます。ただし現代の「着捨て」「履き捨て」の風潮にははっきりと「否」を掲げ、尾州の毛織物、京都の絹、遠州のシャツ地など、手間がかかった上質な素材にこだわって、最低でも5年は着られるものだけをそろえています。

「このコラムで、繰り返し赤峰の主張は聞かされたけれど、実践するとしてどこで探せばよいのか」と疑問を感じた方もいらしたと聞きます。五大陸は全国にお店がありますので、何も買わずとも、ぜひ訪ねてご覧頂ければ幸いです。

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※朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

Posted by インコントロ STAFF at 17時10分 Permalink  コメント ( 0 )

2013年08月29日(木)

朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『生きざまを撮る男』 2013年8月24日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]

もう7年ほど前になるでしょうか。年に2回訪れるイタリア・フィレンツェの男性服見本市「ピッティ・ウオモ」の会場で、眼光鋭い男から「あなたの写真を撮らせてくれないか」と声をかけられました。
男の名は、スコット・シューマン。ストリートスナップを生業とする、世界的なカメラマンです。

彼が撮るのは、「ピカピカに着飾った人々」ではありません。真骨頂は「ダシが効いた男たち」ではないでしょうか。
着込んでほつれた上着の縁や、くたびれてきたシャツのしわまで、撮影対象に迫っていきます。結果、彼が撮った写真には、服を着た人々の生活や生きざまがにじむのです。

彼が「この街ではこんな人が生きているよ」と伝えているサイト「サルトリアリスト」には、世界中から日に何千、何万とアクセスがあるといいます。かねてファッションは真新しいもの、生活感を感じさせないものが良いとされてきたと思いますが、今や人々の日常の装いこそが関心を呼び、共感を得ていることがわかります。

裏を返せば、先進的な服を着るのがかっこいいのではなく、自分が選んだ服を着て、「創造的に生きていくこと」こそが問われているのでしょう。

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イラスト・YAB

また、移り気で常に服装を「ファッショナブルに」変化させていかなければならないと考えていては、外見ににじみ出るような個性は育たない。私は「個性とは脈々と続けていくことだ」と思います。

スコットとは以来、会っては食事をともにし、親交を温めています。今年6月にミラノで再会した時には、「撮りためた写真で今度、『アカミネ・アルバム』を作るよ」と言ってくれました。
完成が楽しみです。

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*朝日新聞社に無断で転載することを禁止します
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Posted by インコントロ STAFF at 17時29分 Permalink  コメント ( 0 )

2013年08月05日(月)

MEN'S EX 2013年9月号 赤峰幸生の「服育のすゝめ」 vol. 9 [MEN'S EX 掲載記事]

TPO別粋≠ネ装いそのB
『休日スタイル、どう装う?』

今回のテーマは「カジュアル」。といいつつ、「カジュアル」という言葉があまり好きではありません。私にとって、装いの根幹にあるのはドレスアップ。それを寛いだシーンに相応しくアレンジしたものが休日着なのであって、「カジュアル」という独立したスタイルがあるわけではないのです。たとえポロシャツにジーンズといった休日の典型的スタイルでさえ、ドレスマインドで着こなせば大人らしいエレガンスが漂います。それこそ、大人の粋≠ネ休日の装いといえるでしょう。これが、私が声を大にしてお伝えした装いの基本姿勢です。

赤峰流の休日スタイルはラコステなしには語れない

さて、そのようなドレスマインドで装う休日着♀礎を私の中に形作ったのは、若い頃に観た往年のヨーロッパ映画です。『太陽がいっぱい』『8 1/2』『太陽の下の18歳』・1960年代に公開された映画のなかには、海辺のリゾート地でひと夏を過ごすフランスやイタリアの人々の粋な装いを見ることができます。ヨーロッパの服装文化には、エレガンスにあふれたドレスマインドが息づいているのです。ですから私の休日スタイルは、ヨーロッパ流のリラックススタイルと言い換えて差支えありません。

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そんなヨーロッパ流の休日着において、基本中の基本といえるのがラコステのポロシャツです。たとえばイタリアなどを歩いていると、洒落者のポロシャツは必ずといっていいほどラコステ。もちろん他ブランドのポロシャツも認知されているのですが、それでも皆こぞってラコステを選んでいるのです。というわけで、私にとってもポロシャツといえばラコステ。定番色から赤や黄色など色鮮やかなもの、海外製のメランジカラーなど、数え切れないほど所有していますが、今回は大人の品を表現するものとして、リブの長袖をおすすめしておきます。基本の着方は、袖を少しまくりあげて着る装い。長袖のポロを一枚で着るなら、襟ボタンを全部留めてお坊ちゃん≠ネ雰囲気で着るのも面白いでしょう。パンツはオフ白の5ポケット。それに足元はエスパドリーユ、もしくはスペルガなどクラシックスニーカーというが、私の定番的な着方です。ビーチサイドのリゾートシーンならパンツを水着に替えて、ジャケットを羽織る装いもエレガントで気に入っています。

アメカジなスタイルは苦手なのですが……

ドレスマインドを根幹とするヨーロッパスタイルの対極にあるのは、アメリカ流のカジュアルスタイル。これはどうにも苦手です。Tシャツやアロハなど、アメカジ的なアイテムは全く着ません。ただお断りしておきたいのは、アメリカ服そのものが嫌いというわけではないということ。リーバイス、リー、コンバースなどは大好きなブランドです。それらをヨーロッパ的目線で着るところに、休日の粋≠感じるのです。

Posted by インコントロ STAFF at 12時23分 Permalink  コメント ( 0 )

朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『シャツの腕まくり』 2013年8月3日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]

暑い季節の装いの主役と言えるシャツ。今回は、粋な着こなしについてお伝えします。

男性のスタイルが何となく決まらない場合、問題はサイズ合わせにあることが多い。サイズが大きいと、シャツの肩のラインが、腕の方に落ち込んでしまいます。小さいサイズも試し、肩がぴたりと合ったものを着るとスタイリッシュに見えます。

シャツでは、台襟の高さも印象を大きく左右します。西洋では、一番上の台襟ボタンの位置が高く、首を覆うことが大切に考えられています。一方、日本は和服の着合わせの文化もあり、ボタン位置が低い方が楽だからと、どんどん下がっていった歴史があります。ここが下がりすぎるときちんと見えないことに注意してください。台襟が4センチほどあるといいでしょう。


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イラスト・YAB

そして、上着を脱いだ時のシャツ姿を粋にきめるために、意識して頂きたいのが腕まくり。活動的で、見た目にも涼やかです。袖のカフス幅に合わせて折り込んで、七分丈でも、五分丈ぐらいにしっかりまくってもいい。袖口のボタンを留めたままでは、格好良く見えません。
 
さらに、シャツの下に着る下着は見えないことが大切です。ネクタイをしないのなら、首ぐりが深いものを選びましょう。

ノーネクタイの時にお薦めしたいのが「襟のロールアップ」のテクニック。襟の中に仕込まれたキーパーを外して、ピンと張った襟に指で内向きのカーブを付けてやる。すると、襟にいい表情が出ます。


襟や袖口の色が異なる「クレリックシャツ」を好んで着る男性がいますが、もともとアイロン掛けが大変だった時代に、襟を取り外せるのが実用的だったから生まれた形状です。色使いの面からは、少々難しいアイテムだと心得てください。

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※朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

Posted by インコントロ STAFF at 11時52分 Permalink  コメント ( 0 )

2013年07月24日(水)

朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『リネンを味わう時代』 2013年7月20日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]

前回は真夏のジェントルマンスタイルのために、リネンの活用についてお伝えしました。この夏は、リネンで作られた服を手に取る人が少なくないと思います。味わいを感じさせる素材が、いま再び注目されているのです。夏の暑さがひどい昨今、高温多湿な日本の気候にあった織物として、見直されている面もあるでしょう。
 

リネンと言えば、しわです。カチッとしたビジネススーツと異なり、しわになるから麻はいい。緩やかな気分になり、綿とはまた違う良さがあります。生地こそが、まとう喜びをもたらす源泉だと教えてくれる素材でもありましょう。

原料としては、ベルギーや北フランスでとれるリネンがよいとされています。よい生地はどんな素材でも同じですが、繊維が細くて長いものが、上質な服地に生まれ変わるのです。
 
そして織るのはアイルランドや日本が得意とするところ。
中でも最高とされているのが、アイリッシュ・リネンの名門、スペンス・ブライソン社のものです。私たちが「手持ちが違う」と表現する、際立った肌触りや張りを持っています。

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イラスト・YAB

リネンというのはもともと生活資材。今でも上等なシーツやテーブルクロスとして用いられています。通気性に優れ、肌触りがよいのが持ち味ですから、イタリアなどでは肌着も売られています。
 

本来は決して夏だけの素材ではないのですが、日本ではなぜか春夏のものと誤解されています。イタリア人の友人で、一年中、リネンのジャケットで通している男がいますが、もうテロテロになるまで着込んでいて、とにかくカッコイイ。
力まず、年輪を感じさせる着こなしは、リネンがまさに大人の素材であることを教えてもくれます。
 

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※朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

Posted by インコントロ STAFF at 14時34分 Permalink  コメント ( 0 )

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赤峰 幸生 (あかみね ゆきお)

● イタリア語で「出会い」の意のインコントロは、大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年秋冬からは『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。平行して、(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界を舞台に活躍。 Men’s Ex、OCEANSに連載。MONOCLE(www.monocle.com)、MONSIEUR(www.monsieur.fr)へも一部掲載中。

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