2007年08月24日(金)
OCEANS 10月号 連載#19 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
(最終回)
無造作の“粋”
「お洒落ですね」と言われるのが好きではない。お洒落に見えるとは、言い換えれば不自然に目立っているということである。私は誰かの関心を得るために服を選び、着ているわけでは毛頭ない。ましてや、モテるためとは論外も甚だしい。服は自分を実像以上に見せるための手段ではない。だから、「お洒落ですね」と言われれば、その時の格好がその場にそぐわなかったのだと判断する。服を上手に着こなすとは、服が板についているということ。つまり、着ている本人よりも前に出ない。あくまで控えめで、目立たない。それがつまるところ、自然に見える「無造作の粋」なのだ。
ただし、無造作に見えるためのマニュアルなどというものはない。己の生き様すべて服装に表れるのだ。しかし、無造作に服を着こなしたいと願う者に対して、赤峰流を伝えることはできる。今回はそうした参考例と捉えていただきたい。同じように真似をしたとて、それはその時点で無造作ではなくなるのではあるが。
まず、基本はルールを知り、それを実践することが肝要。ルールとは、先達のさまざまな流儀の中から、最良の見え方をする着こなしとして定着したものだ。ジャケットのラペルの角度とシャツの襟の角度とを合わせるとか、ジャケットの袖口からシャツのカフスを少しだけ覗かせるとか、パンツの裾を少し弛むぐらいの長さにするとか、そういった類のことである。(注1)ジャストフィットの服を着ることも前提となる。そういう要素ができあがってこそ、自分らしいこなし方ができる。しかし、ルールに縛られる必要はない。チーフは(注2)TVホールドで入れなければならないか?そんなことはない。その日の気分で、無造作に挿せばいい。タイは大剣の先がベルトに掛かる長さにしなければならないか?そんなことは気にしなくてよい。多少、長かろうが短かろうが構わない。つまり、無造作とは「自分らしさ」と同義なのである。
また、加えて服が板に付く赤峰流儀を挙げるならば、服を愛でること。つまり服を長く着続けること。買った服を、あまり着ないのでは、服が使命を果たせず哀れ。主となったからには、その服をとことん着倒す。その結果、服の持ち味を知り、自然と服が板につく。そのためには、素材と仕立てを見極めて、耐久性を求めることが不可欠だ。私が(注3)ヘビーウェイトの生地を用いた服を好むのはそういう理由がある。
(注4)クラーク・ゲーブル、(注5)フランク・シナトラなどの先達がなぜ粋に見えるか?それは、彼らがいかに上手に服を無造作に自分らしく着こなしているからにほかならない。その境地に立ち入るには、マニュアルはない。私とて、道程にいるのである。
(注1) 「ジャストフィット」
マエストロのスーツはオーダーでの仕立て。オーダーでなければならぬ、ことはないが、ジャストフィットを求めるならば必然となる。また体形を維持し続けることも必要となる。
(注2) 「TVホールド」
アメリカのテレビアナウンサーが始めたといわれる、ポケットからチーフを1cmほど水平に覗かせる挿し方。最も一般的で広く定着している。
(注3) 「ヘビーウェイト」
スーツやシャツなどの生地はウェイト、つまり重さで種別される。厚地であればヘビーウェイトとなり、ウェイトと丈夫さはおおよそ比例するもの。
(注4) 「クラーク・ゲーブル」
アメリカの映画俳優。代表作は『風と共に去りぬ』など。
(注5) 「フランク・シナトラ」
20世紀を代表する歌手であり、映画俳優としても活躍。代表作は『上流社会』など。
[これがマエストロの粋の原点]
映画スターから学んだ無造作な着こなし
赤峰氏の会社、インコントロにはこれらの映画スターのポートレートが飾られている。イヴ・モンタン、カーク・ダグラス・・・etc.皆、服が板についており、それゆえに、立ち居振る舞いが自然で粋に見える。赤峰氏が参考とするお手本だ。
■無造作な粋が自然と盛り込まれたマエストロ流儀の着こなし方
「テクニックうんぬんではなく、ルールに則ったうえで、その先は自分の感覚で自由に着こなせばいい」と語る赤峰氏。今回は、氏の敬愛する、映画俳優らのモノクロームのポートレートのように、モノトーンでのスーツスタイルを拝見させていただいた。スーツは、氏の行きつけでもあるフィレンツェの「リベラーノ リベラーノ」で仕立てたもの。生地は「ドーメル」のトニックを用いている。袖口は本切羽仕様だが、これ見よがしにボタンを開けることはなく、手を洗うときに袖をまくるために利用する。トレンチコートは、「アキュアスキュータム」の1941年製のヴィンテージ。着続けられて、味わいが深くなった服が装いを自然に見せる。服が板につくとは、こういうことを言うのである。
無造作@
「TVホールドもするし、スリーピークスにするときもある。けれど、ルールには縛られない」。何気なく折り畳んだチーフを、ふんわりと入れる。自然にサングラスを覗かせるのもいい。
無造作A
「ワザワザするわけではないが、シャツのカフスが折れていることが多い」。腕時計はカフスから半分くらい見せるのが一般的。しかし、赤峰氏はあえて腕時計をカフスに隠れるように巻いて時計の露出を避けるのだとか。
無造作B
「タイは一回巻いたら、それで決まり。何度も巻き直したりはしない」。小剣は大剣裏のループに通さず、このようにズレてもお構いなし。長さもあまり、気にしていない。これぞ赤峰流儀。
無造作C
「ルールとしてはありえないがシャツの襟がハネていても気にしない。むしろ、自然ではないか」。襟裏のキーパーは抜くことが多く、シャツの襟を柔らかく自然に見せている。
無造作D
「もちろん、袖を通してベルトを締めるときもあれば、肩から羽織るだけのときもある。このように片方の肩に引っ掛けるだけのときも」。こうした着流し感が、無造作に見えるのだ。
無造作E
「鞄はそれこそ無造作に、乱暴に扱う。用を足すために、地面に置いて、足で挟むのも自然な振る舞い」。過敏に大事に扱うことは無粋。真っ当に使って、味が出てこそ、魅力が自然と増す。
■ 来月からマエストロの連載がリニューアルします! ■
次号より、読者のさまざまな質問に、マエストロこと赤峰氏が答えるという形式の連載内容にリニューアルします。乞うご期待!
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2007年08月06日(月)
MEN'S EX 9月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.16 [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。
「今月のテーマ」
羽織りものを素敵に着こなす方法
時が経つのは早いもので、まだまだ暑い日が続くなぁなんて思っていると、いつの間にやら涼しさを感じる季節になっています。そんな季節にあると便利なのが、羽織りもの。ただ、実際にカッコよく着ようとすると、どう合わせていいのか、案外難しかったりもします。今回は、羽織りものの素敵な着こなし方を、たっぷりとお話しいただきました。
■(写真右)赤峰幸生氏
・'50年代のシェットランドウールのジップアップカーディガン
・ラコステのクラブラインの長袖ポロ
・ブルーシステムの5ポケットパンツ
・リヴェラーノ&リヴェラーノのUチップシューズ
■(写真左)菊池武夫氏
・ボルサリーノのキャスケット
・ヴィンテージのシルクスカーフ
・メンズメルローズのジップアップカーディガン
・ベルヴェストのパンツ(3ピーススーツのパンツ)
・アディダスの「スーパースター」リザード型押し
今回の対談の舞台となったのは、六本木ヒルズにあるイタリアンレストラン「イル・ムリーノ ニューヨーク」。広々としたラウンジで繰り広げられたおふたりの話は、服の話から人生論まで実に多彩。大いに盛り上がりました。
■ビシッとクリースの入ったパンツは合わせたくない
M.E. 秋口に向けて、ちょっとした羽織りものがあると便利だと思うのですが、単にニットやカーディガンを羽織るだけでは着こなしがシンプルになりすぎてしまってカッコよく見えない、という読者からの悩みの声も聞きます。そこで今回お2人には、どうしたら羽織りものをカッコよく着られるのか、といったテーマを中心にお話しいただければと思います。
赤峰 羽織りものというテーマで、菊池先生も僕もジップアップニットをチョイスしたわけですが、このジップアップニットというのは非常に使い勝手のいいアイテムなんです。いわゆるシーズンアイテムじゃないから、寒いと思えば軽く羽織ればいいし、暑いと思えば脱げばいい。これからの季節にはとても重宝しますね。しかもボタンではなく、ジップアップというのもポイント。イージーに着られるので、現代のようにコンビニエントな着方が重要視される時代にピッタリです。
菊池 襟がついているのもいいんですよね。例えばトレンチコートなんかはしっかりと襟を立たせて着たりしますが、男性の心理として首のところが守られていると安心感がある。何よりエレガントに見えますし。
赤峰 わかります。首を無防備にさらしていると、どことなく落ち着かない感覚ってありますよね。
M.E. 実際、お2人の着こなしを拝見しても、襟がしっかりと立てられていて、特にタケ先生は上までビシッと閉めています。
菊池 僕の場合、タイトに着る習慣があるので、上のほうまでキチンと留めたい。でも、全部ちゃんと留めるのはイヤなんです。どこかで崩れていないと。だから今回もダブルジップのものを選んで下を開けています。こうしないと落ち着かない(笑)。
赤峰 今は、鎌が高くてフィット感があり、それによって上の分量と下の分量との差をハッキリ出す着こなしが気分ですしね。僕は今日たまたまボリューム感のあるものを着ていますが、これはヴィンテージなので、どうしてもこういうシルエットになってしまう。それこそ'50年前の(注1)シェットランドで編まれたものですから。もちろんこれはこれで味わいがあるのですが、仮に現代的に作り直してみても面白いと思うんですよね。
菊池 あぁ、いいですね。着丈を短くして、ややタイトに仕上げてね。
赤峰 そうです。簡単にいうと、ベルスタッフのブルゾンみたいなシルエットでしょうか。袖はちょっと前振りで長めの丈にして、襟はグッと立たせる。腰周りも絞ってスリムにしたらカッコいいと思います。
M.E. それから、おふたりともカジュアルなパンツを合わせているのが面白いと思いました。
菊池 僕のは、以前「(注2)マフィアの着こなし」(2007年2月号)をやったときに着ていたスリーピースのパンツ。わざとクリースを消してちょっとカジュアルにしています。そもそも僕は根が結構マジメでして、どこかキチンとしだすと全部しないといけないと思ってしまうんです。そうなりたくないからどうしても崩したくなっちゃう。
赤峰 確かにバランスを考えるとそうですよね。僕もジップアップニットに関しては、ビシッとクリースの入ったパンツで穿きたいとは思わない。ジップアップニット自体、お洒落なアイテムになりがちなので、ヘンに小洒落て見えてしまうのがイヤ。もっとラフにしたいですよね。だからイタリアでよく見るんですが、クリースの入ったパンツにカシミアのジップアップニットというスタイルは、クラシックではあるけど、妙にお行儀がよすぎて僕はあまり好きじゃないですね。
菊池 じゃあ、その格好にタイドアップなんてしたら許せないんじゃないですか?
赤峰 あぁ、それは一番嫌いです。タイドアップしてジップアップニットを羽織って、その上にジャケットを着るスタイル。これもイタリアに行くとよく見るんですけど、もうノーサンキューです(笑)
■その国の文化や街の匂いといったものに興味がある
菊池 僕は上まで留めているけど、やはり羽織りものである以上、サラッと開けて着るのもいいと思います。ただ、それにはある程度首が太くないとサマにならないような気がします。でないと、ちょっと印象が弱々しくなっちゃうと思うんです。
赤峰 先生は首周りに対する意識が高いですよね。誤解を怖れずいうなら、そこさえ決まってしまえば、あとはもうなんとかなるぞっていうノリが先生にはあるような気がします。そしてそれこそが菊池武夫的着こなしのキモだと僕は見ています。違っていたらごめんなさい(笑)。
菊池 いえいえ、図星ですよ、本当に。逆に赤峰さんの場合、どちらにも対応できる感じがありますよね。そのときの気分でいろいろとできちゃう感じが。
赤峰 そうですね。イギリスに行けばイギリスっぽい気分で着るし、イタリアへ行けばイタリアっぽく着る。その時どきに応じて切り替えていく、そんな感じはあります。だから読者の人たちには、きれいめに着ようとするときに、クリースの入ったパンツを持ってくればいいという発想ではなく、そこからもう一歩、今までとは違う意識で着てみてはいかがでしょうか、といいたいですね。
菊池 うん。クリースが入っていると、パッと見洒落てるんだけど、当たり前すぎるというか、なんだかあまり深みがない。つまらないですよね。
M.E. また、羽織りものには、ジップアップニット以外にカーディガンもありますけど、カーディガンを上手に着るのは意外に難しいのではないかなと思うのですが。
赤峰 そうかもしれませんね。カーディガンというと、ウーステッドの梳毛のものが一般化していますけど、ローゲージのカーディガンもありますし、ボタンにしたってローボタンもあればハイボタンもある。たくさんのバリエーションが用意されていますからね。ただ、若い人たちの中には、カーディガンをジジくさい、という人もいる。そのジジくささが逆にカッコいいんだけどなぁ。
菊池 そうですよ。今の時代はそういう発想だと思います。僕自身、基本とか、無難とか、そういったものから極力ハズれるようにやってきましたから。もちろん、この場合はこう着る、という基本があるのは頭ではよくわかっているんですよ。でも、それをそのまま鵜呑みにするんじゃなくて、必ず自分なりのスタイルを作り上げたいと思うんですよね。
赤峰 いやぁ、よくわかります。若い時分から(注3)英国的伝統をキチンと見て、それから(注4)フレンチのとっぽさを見て、(注5)アメリカのイージーさも見て。そうした蓄積を通して、現在の先生のスタイルというのは出来上がってきているわけですよ。だから若い人にいいたいのは、単に見かけを真似するのではなく、自分なりの歩みで自分なりのスタイルを見つけてほしいってこと。
菊池 うん。少なくともそういった意識はもっていてほしいですね。
赤峰 となると、大事なのは内面の充実でしょうか。外見をどんなに飾っても、やはり内面が磨かれていないとそれなりにしか見えてこない。ある意味で洋服以上に気を使わないといけない部分だと思うんです。
菊池 そう思います。よくいわれていることだけど、それは真実ですよ。服だけじゃなくて、アートとか音楽とか料理とか、いろいろなものに対して幅広く興味をもつことで、服の着こなしも間違いなく変わってくる。佇まいに滲み出てくるんです。
赤峰 服はやはり文化のひとつですからね。先生も僕も、その国の文化に興味があるわけですよ。もちろんどんな着こなしが流行っているかということもチェックしますけど、それ以上にその国の文化や街の匂いといったものに興味があるんです。
(注1) 「シェットランド」
スコットランドの北にあるシェットランド諸島が原産地のウール。シェットランドシープのウールは軽くて柔らかく、1頭でさらに何色もの色をもっているのが特徴。その原毛を紡いで島内で編んだものがシェットランドニットです。
(注2) 「マフィアの着こなし」
2007年2月号の連載のテーマは「マフィアの着こなし」。このとき菊池さんは、ヴェルベストの3ピーススーツを着てご登場。スーツのときはビシッとクリースが入っていたものの、今回は同じパンツでクリースをとってご登場。
(MEN'S EX 2007年2月号記事→)
(注3) 「英国的伝統」
英国は流儀の国で、服を着ること、紅茶を飲むという行為一つにも、そこには流儀があります。この流儀こそが、英国の伝統と格式を守ってきたという意味。
(注4) 「フレンチのとっぽさ」
パリでのナンパや話の場はカフェにあり、カフェには男と女がツッパってカッコよく見せようとする文化、自分を主張するためのパフォーマンスがあるという意味。
(注5) 「アメリカのイージーさ」
スラングで簡略化した言葉がいい例ですが、アメリカはなんでも簡略化してしまう文化があります。英国とは反対の、崩した、イージーな空気が根底に流れているという意味。
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赤峰さん的ジップニットの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]
さりげなく色を合わせています
襟に入った黒のラインとインナーに着た黒のポロ。さりげなく色を合わせるとは、さすが赤峰さん、ニクイです。また、襟は無造作に立たせると、カッコよく決まるそうです。
黒とエクリュでまとめました
2色以上は原則使わないのが赤峰流。今回もエクリュと黒で上品にまとめています。ちなみにこのカーディガン、50年前のシェットランドで編まれたものだそうです。
5ポケットでもドレスシューズを
カジュアルなイメージのある5ポケットパンツですが、足元にあえてドレスシューズを合わせています。大人のエレガンスをキチッとキープしているあたりは、見習いたいところ。
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菊池さん的ジップニットの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]
首周りが実にオシャレです
タケ先生のトレードマークといえばスカーフ。今回は'60年代のアンティークを合わせてみたとのこと。また、首から掛けた2本のメガネも実に洒落たアクセントになっています
ダブルジップで表情をつけます
どこか遊び心のある着こなしがタケ先生のスタイルです。カーディガンもダブルジップをチョイスし、下を開けて着こなしに動きを出しています。中に合わせたTシャツがチラリ。
クリースを消したスーツのパンツ
第9回「マフィア」の回で、タケ先生が着用していたベルヴェストのサキソニーフラノの3ピーススーツ。このパンツ、実はそれ。今回はクリースを消してラフに穿いています
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2007年07月24日(火)
OCEANS 9月号 連載#18 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
ネイビーの“粋”
南仏リゾートのマインドで着こなした夏のネイビー
マリアーノ ルビナッチのネイビーシャツは、プルオーバータイプで素材はリネン。ボタンは白蝶貝。パンツはアカミネ ロイヤルラインのシアサッカー。ネイビーキャンバスのエスパドリーユはアンクルに巻く紐が付いていて、アウトソールはレザー。パリのエルメス本店にて購入。基本的に色は2色まででまとめるという、マエストロ赤峰流の原則を実践。プルオーバーのシャツの場合は、上にジャケットなどを羽織らずにシャツ1枚で着る。(日本橋三越本店取扱い)
色の好き嫌いは、それこそ十人十色。しかし、ネイビーが嫌いと言う人はいないのではないだろうか。広範囲にわたる好感度、それこそがネイビーの魅力だ。さらに誰にでも似合う。ネイビーほど、ユーティリティな色は他に見当たらない。
私の場合、ネイビーとの付き合いは幼少期に遡る。子供のときにはネイビーしか着ていなかったほど。セーターにしても、ショートパンツにしても。おそらく、母親が好んでいたのだろう。そうした影響もあって、ネイビーを着ることが自然な感覚として染み付いた。また、(注1)叔父の影響も多大だ。当時、私の叔父は日本橋丸善で仕立てたネイビーのブレザーをよく着ていて、その姿の格好よさに憧れた。キチンと服を着ることが板についていて、それがとても自然で、上品に感じられた。無造作のエレガンスとでも言うべきか。これ見よがしの格好悪さ、逆にこれ見よがしではない格好よさ。私はそうした感覚を母から着せられたネイビーの服、叔父が着ていたネイビーの服から感覚的に学んだのだ。
私の服の基本色はネイビーであるわけだが、着こなしにおいて大切なことは季節感となる。冬であればフランネルのスーツ、ダッフルコート、ニットなどでネイビーを着る。夏であれば、やはり、コットンのポロシャツ、そしてリネンのシャツなどが中心となる。今回、着用しているのは(注2)マリアーノ ルビナッチのリネンシャツ。胸ポケット付きのプルオーバータイプだ。着こなしのコツをあえて言葉とするならば、袖まくりにある。ロングスリーブでは暑いから、袖をまくる。ただそれだけのことなのであるが、見た目にも開放感を与える。何センチ間隔でまくるとか、そういったマニュアルのようなものはない。あくまでも無造作に、たくし上げる。それでいい。ポロシャツの襟を立てるかどうかも、同じこと。首裏に受ける日差しを避けるために、襟を上げる。ただそれだけのことである。今回は、足元の(注3)エスパドリーユでもネイビーを選んだ。適度に素足が露出され、キャンバスの質感が清涼感を与えられる。(注4)ウィンザー公、(注5)イヴ・モンタン、彼らのエスパドリーユのこなし方が理想であり、よき参考例となる。ボトムスはブルーのシアサッカーで、シャツと靴とをつなげた。全体のイメージはニースやサントロペ。南仏の避暑地で過ごすときのリゾートマインドでの着こなしである。リゾートへ赴く際、どうしてか普段は着ていない派手な色をここぞとばかりに着る人が日本人に多く見受けられる。否定はしないが、清涼感を意識しながら、ネイビーを活用してはいかがだろうか。
(注1) 「叔父」
社会学者であった清水幾太郎氏。東京大学卒、著書多数。学習院大学にて教授職も務めた。
(注2) 「マリアーノ ルビナッチ」
ナポリの名店、ロンドンハウスのオーナー、マリアーノ・ルビナッチ氏によるブランド。
(注3) 「エスパドリーユ」
スペインのバスク地方発祥の靴。底にエスパルトという繊維を編み込んでいたことから名付けられた。アッパーはキャンパスが一般に用いられる。特にフランスでリゾート用の靴として定着し、愛用されている。
(注4) 「ウィンザー公」
1910年にプリンス・オブ・ウェールズとなり、後にエドワード8世に。退位後、ウィンザー公の称号を与えられた。稀代の洒落者として名高く、ファッションに多大な影響を与えた。
(注5) 「イブ・モンタン」
'50〜'60年代にフランスで活躍したシャンソン歌手・俳優。「枯葉」や「セ・シ・ボン」などの名唱で“世界の恋人”と謳われた。マリリン・モンローと浮き名を流したことは」有名。
赤峰氏が影響を受けたネイビーの粋な着こなし
1_紺ブレを着ている叔父の清水氏。ローマにて。
2_「Montand」より。シャツの袖をまくり上げ、エスパドリーユを洒脱に履いているイブ・モンタン。
3_「FRENCH RIVIERA」より。エスパドリーユをスーツに合わせているウィンザー公。
夏のネイビーの着こなしは“本場”南仏のリゾートで映える
仕事柄、海外へ出向くことが多い赤峰氏。南仏のリゾート地ではバカンスを過ごし、ネイビーの着こなしを“本場”にて楽しむことも多々。実際に見て、肌で感じ、自らの感性でアレンジする。それがマエストロ流。上の写真は南仏の代表的なリゾート地であるサントロペ。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
ポロ競技のユニフォームの白ポロシャツ
スイスのサンモリッツで行われるポロ競技用の公式ユニフォーム。このポロシャツはイタリアのファブリックメーカー、グアベロ社のチームのもの。白地にネイビーのレタードが、上品かつ爽やか。マエストロ赤峰はこのポロシャツにシアサッカーのパンツや5ポケットパンツなどを合わせて、スポーティな着こなしを楽しむ。
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2007年07月12日(木)
MONSIEUR(ムッシュー)5-6月号に掲載されました [MONSIEUR掲載記事]
1920年創刊の世界で一番旧いフランスの男性誌。Men's ExでもMONSIEUR通信として編集長:フランソワ=ジャン・ダーンさんのコラムが紹介されていますが、現在はまだ日本では残念ながら流通していません。...にも関わらず、海老蔵のパリ公演では前売りチケットが約一年前に完売(!)したり、何かと日本に対する注目が高い中、5-6月号の日本特集にて、「LES BRUMMEL DES TOKYO」という見出しで、弊社の代表:赤峰がインタビューを受け掲載して頂きました。
「LES BRUMMEL DES TOKYO」→「東京のブランメル」*注釈:ジョージ・ブランメル(1778〜1840)19世紀初頭にダンディズムの思想が形成され、新しい紳士服の趣向が誕生した。ダンディズムの創始者とされるジョージ・ブランメル(1778〜1840)は、平民の生まれながら、生来のエレガンスの素質やその優雅な風姿がイギリス皇太子のちのジョージ4世に認められ、19世紀初頭の社交界の流行を支配するようにまでなった。ダンディズムの趣向はブランメルが1810年代末に失墜したのちも強い影響力をもって19世紀前半の男性服の流行を支配したが、それは目に見える衣服の形よりむしろ衣服に対する精神的な姿が重要視されるものだった。
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2007年07月10日(火)
マルチェロ・マストロヤンニ ラテンラヴァーを知る10の断章 [書籍]
没後10年を迎えたイタリアが生んだ希代の俳優、マルチェロ・マストロヤンニ。2006年カンヌ国際映画際にて、彼のドキュメンタリー<マルチェロ・マストロヤンニ甘い追憶>が上映され、大喝采を浴びました。日本では6月30日より渋谷のBunkamuraで上映されています。
そのマストロヤンニにフォーカスした10のキーワードの中の「ファッション」パートで、弊社代表 赤峰 が、信濃屋白井様、テーラーケイド山本様とご一緒に鼎談をさせていただき、一部掲載していただきました。
こちらで全ページを分かりやすく紹介することはできませんが、全国一般書店にて発売となっていますので、ご興味のある方は是非ご一読を!
◆発行所:株式会社 エスクァイアマガジンジャパン
◆本の題名:マルチェロ・マストロヤンニ(ラテンラヴァーを知る10の断章)
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