2006年06月24日(土)
OCEANS 8月号 連載#5 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
夏のコットン“ジワ”の「粋」
服は素材が命である。その理由は2つあり、ひとつは季節感、もうひとつはエイジングだ。今回は私と(注1)服作りの志を共にする中村女史を招き、素材を題材として「粋」について語らうことにした。
中村 赤峰さんの夏服の代名詞は、出会った(注2)二十数年前から変わらず、コットンスーツですね。
赤峰 夏は氷屋、冬は炭屋と言うが、素材にも同じことが当てはまり、夏はコットンやリネン、冬ならウールやカシミヤとなる。素材は季節感をダイレクトに表現する。そして季節感をを自然と取り入れることが粋である。流行がいかに移り変わろうとも、私が夏に(注3)コットンスーツを愛用する理由だ。
中村 日本人は夏に浴衣を着ます。夏のコットンスーツは、浴衣に通じる風物詩ですからね。ベージュのコットン地は夏の日差しに映え、溶け込みます。それがナチュラルに見えます。
赤峰 その“ナチュラル”という見え方が、とても大切だ。だから、コットンスーツでもまっさら、下ろしたてなのは気恥ずかしい。着ていれば自然とシワが入るもので、そのシワが粋なのだ。最近ではシワが入らないことを謳い文句とした化学繊維を混紡した品もあるが、私個人としては、それはコットンスーツの持ち味を消し去っていると思う。それに加工によって味出しをした品というのも、私からすれば無粋である。自分で着込んで、さまざまな思い出を吸い込み、コットンスーツが自然と味わい深くなる。それがいい。では、購入したてのコットンスーツはどうするか?自宅で多少の(注4)慣らし運転をしてから、着ることとなる。
中村 私は長く付き合えるような服作りを基本スタンスとしています。着れば着るほどに魅力が増す服が素敵だと思うのです。
赤峰 まったくその通り。コットンスーツの袖口がすり切れたり、色褪せたりするのは言うなればダシであり、それがそのものの味わいを深める。つまり、それが粋に通じるのだ。
(注1) 「服作りの志」
デザインありきではなく、素材ありきで服を作る。また服が主張しすぎず、着る人を引き立てることに重きがあり、T.P.Oとライフスタイルを念頭に置く。
(注2) 「二十数年前から変わらず」
赤峰氏にとっては褒め言葉。流行に左右されず、自分のスタイルを確立していることの証明として。
(注3) 「コットンスーツ」
取材時に赤峰氏が着ていたのは、フィレンツェのリベラーノ&リベラーノにて仕立てたコットンスーツ。イギリスのカーリントン製のコットンギャバジンを使用。
(注4) 「慣らし運転」
新品をそのまま着ないのが赤峰氏流。ある程度馴染んできた頃合を見計らってから着用する。今回のコットンスーツは一度洗ってから着始めたそう。
左が中村三加子さん。赤峰氏とはかつて同じ会社でともにデザイナーを務めていた間柄。現在は株式会社オールウェイズを立ち上げ、婦人ブランドの開発に携わっている。
2004年には自作ブランド「Mikako Nakamura」を発表した。
ユナイテッドアローズ本店にて扱われるほか、東京・目白にサロン、ニューヨークにショールームを開設している。
清涼感を引き立てる、夏のブラックタイ
写真上はマイケル・ダグラスの父親で、同じく俳優のカーク・ダグラス、下はご存じクラーク・ゲーブルだ。夏に黒タイとは意外であるが、奇をてらったテクニックではない。ウェルドレッサーの例を見てわかるように、Vゾーンを端正に見せ、逆に涼しげな印象を与える。
赤峰氏もベージュのコットンスーツに黒タイを合わせ、実践している。
赤峰氏の夏の定番アイテム、普遍的な魅力を持つコットンスーツ
写真左は赤峰氏。ベージュの3ボタン段返りのコットンスーツを軸に、Vゾーンは白のレギュラーカラーシャツと芯のないシルク製の黒タイで構成し、胸ポケットに白のリネン製チーフを挿している。ベーシックでありながら、今日的な感覚の着こなし。「ポケットに手をつっこんだときにできる腕のシワ、フロントのボタンホールの辺りにできるシワ。そんな自然な着ジワがコットンスーツならではの粋である」と語る。
10年前にリベラーノ&リベラーノにて仕立てた一着。取材時に着ていたコットンスーツと仕立て先も生地も同じ。着用感により味の具合が異なり、それを楽しみながら、ケースバイケースで着分けているそうだ。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
エルマンノ ダエッリのスイムショーツ
1970年代、フィレンツェを中心に活躍したデザイナー、エルマンノ ダエッリによるスイムショーツが、赤峰氏のリゾート用ワードローブのひとつ。イメージは1960年代のイタリア映画「太陽の下の18才」。ラコステの赤のポロシャツを合わせるのが定番的な着こなしだそう。
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2006年05月24日(水)
OCEANS 7月号 連載#4 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
英国素材の「粋」
洋服の良し悪しを決めるのは、まず素材である。だから、私がデザインするY.アカミネは素材ありき。よい素材を求めて世界中を巡る。その経験からして、英国素材は特別だ。今回は英国毛製品輸出教会の理事長であるピーター・アクロイド氏を招き、英国素材について語らうことにした。
赤峰 ずばり英国素材のよさとは?
アクロイド ファッションには変えるべきものと、変えてはいけないものがあります。英国の素材は1世紀以上、変えなかったよさがあるのです。一言で言えば、積み重ねられた伝統。ここ30年間、他の国の素材を求められもしました。しかし、今では英国らしい素材が望まれています。
赤峰 具体的におすすめの素材は?
アクロイド 話題に挙がることが多い素材は(注1)エスコリアルです。私が着ているネイビースーツは、(注2)テイラー&ロッジ社が取り扱うエスコリアル素材で仕立てました。(注3)英国素材は重いという印象があるでしょう。しかし、エスコリアルは軽く、柔らかで、伸縮性が高く、すばらしい着心地をもたらす素材です。
赤峰 英国人が考える、粋な着こなし、また理想像とは?
アクロイド ずばり、「アンダーステイティッド」、つまりこれ見よがしでない見よがし方な装いでしょう。控えめで、周りの人への礼儀、敬意を重んじた着こなし。そのお手本は内面的な品性がにじみ出ているチャールズ皇太子です。我々、英国人は恵まれている。なぜなら服装に関心の高い王室が英国にあるから。(注4)サヴィルロウは、ロイヤルパレスからほど近く、ロイヤルワラント(王室御用達)を戴き、保護され、発展してきたのです。最近では(注5)オズワルドやリチャードら新鋭も参入し、活性化してきました。とはいえ、素材もそうであるように、英国のクロージングにこそ本質があり、また、その本質は変わりません。
赤峰 英国素材に触れることは、素材にこだわることがクロージングの第一主義であることを教えてくれる。これからは、英国をお手本のひとつとしながら、日本人のスタンダードを構築することが課題であろう。
(注1) 「エスコリアル」
限られた地域の小さな羊の群れから生産される、希少性のある原毛。年間の生産量も限られているため、高級素材として取り扱われる。「軽さ」「柔らかさ」「伸縮性」がその特徴。
(注2) 「テイラー&ロッジ社」
英国の毛織産地、ハダースフィールドにあるメーカー。120年以上の歴史を持つ名門。
(注3) 「英国素材は重い」
打込がよく、ドライタッチで、ヘビーウェイトなのが英国素材の特徴。エスコリアル素材とは対極的。
(注4) 「サヴィルロウ」
言わずと知れたスーツの聖地。古くからテーラーが集う通りである。王室御用達の店も多い。
(注5) 「オズワルドやリチャード」
英国のデザイナーであるオズワルド・ボーテング、リチャード・ジェームスのこと。他にも新鋭がサヴィルロウに出店し、ニューブリティッシュとして話題を呼んでいる。
写真左が英国毛製品輸出教会の理事長であるピーター・アクロイド氏。英国素材の歴史、そしてトレンドを熟知するキーパーソン。
アカデミー賞脚本賞を獲得した、ロバート・アルトマン監督作「ゴスフォードパーク」。英国上流階級が描かれ、登場する人物たちの装いはクラシカルでエレガント。まさに、アンダーステイティッドな装いの参考となる映画。
左がウィリアム ハルステッド、
下がリード&テイラーのエスコリアルのバンチ。
両メーカーは英国を基盤とするエスコリアルギルドのメンバー。
取材時にアクロイド氏が着用していたジャケット。素材はテイラー&ロッジ社製のエスコリアル。シワになりにくく、かつ、復元力に優れるので出張にもってこいだとのこと。
エスコリアルの原毛はニュージーランド、オーストラリアのタスマニア島、ビクトリア州で飼育される羊から生産。生産量が極めて少なく、限られたメーカーのみに供給される。軽く、ソフトで、ナチュラルな伸縮性がその特徴。
品がよくて控えめ、アンダーステイティッドな装いを実践
赤峰氏、アクロイド氏ともに他者への礼儀や敬意を払う控えめな着こなし。アクロイド氏は来日に際し、着用しているネイビーのスーツの他に、ブラキッシュネイビー(黒に近いネイビー)のスーツを持ってきているそうだ。「ワードローブから選び抜かれた少ないアイテムで、いかにうまく着回すか。旅もまた、お洒落のレベルアップには欠かせない」とは赤峰氏の弁。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
ロイヤルオックスフォードの白シャツ
赤峰氏が1976年にWAY-OUTを自由が丘に創業し、初めて英国のデヴィット・ジョン・アンダーソンのロイヤルオックスフォードを手掛けた思い出の一着。ヴィンテージと言えるシャツではあるが、色褪せてしまうどころか、今の時代の気分にぴったりなナローカラー。赤峰氏は比較的、カジュアルなアイテムと合わせて着用することが多いそう。
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2006年05月06日(土)
MEN'S EX 6月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.1 [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマをひとつ決め、それに基づいてファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。
「今月のテーマ」
紺のブレザーを自分流に着る
プレッピー再燃の波を受け、今年の再注目アイテムとなっている紺のブレザー。巷で騒がれているこのアイテムをファッション界の2人の巨匠は自分流にどう着るのか?紺のブレザーにまつわる思い出話は、いつの間にやらどんどんディープな方向へと進んでいきました。
■ファッション界の巨匠がお手本にしたものは?
日本のファッション界を代表する2人の巨匠、菊池さんと赤峰さんが、紺ブレについて語ります。まずは赤峰さんが、時代を遡って紺ブレとの出会いを話してくださいました。
赤峰(以下赤) 色気づき出したのは中学生になってからですね。学者の叔父がいつもネイビーのブレザーを着ていて、それにレジメンタルのネクタイを合わせているのに触発されまして。その後は渋谷のサカエヤとか、横須賀とか、米軍キャンプの払い下げのものとか、アメリカのブレザーをずっと探していました。'60年代はアメリカからのインフルエンスが強くて、ブレザー、ボタンダウン、レジメンタル、ジャズ、この4つがセットになっていましたからね。マディソン・アヴェニューの男のスタイルに対しての憧れがあって、アメリカの洗礼を受けながらブレザーに入っていきました。菊池さんはどんな感じだったんですか?
菊池(以下菊) 僕も小さい頃からお洒落に対する意識は強かったですね。ただ、洋服に下駄を合わせたり、シャツに合わせて手拭いを首に巻いたり、ちょっとひねくれていたところはありました。子供のときびっくりしたのは、父親が真っ白なフランネルにストライプのパイピングが入ったブレザーを着ていたことかなぁ。胸にはドイツのワシのワッペンがついていて、随分と派手なのを着ているなって思いました。
赤 イメージでいうと、ベルリンのオリンピックのユニフォームみたいな感じなんでしょうね。
菊 そうそう(笑)。ネイビーのブレザーを初めて着たのはそれからずっとあとの20代後半になってからです。ただ、スーツは18歳から着ていました。襟が小さくてノーパッドで肩が狭く、丈も短めのやつです。パンツもピタピタのを穿いて、それにチェッカーブーツを合わせたりしていました。ダクロンとか光っている素材、昔流行りましたよね。そういうのをよく作っていました。
赤 コンポラが流行った時代ですよね。いわゆる(注1)ピーコック革命の頃で、玉虫のグリーン系で、ポップスでいうと(注2)チャービー・チェッカーとかそのへんがイメージですよね。
菊 それにソウルの雰囲気が混じっている感じ。赤峰さんと同じ時代ですけど、僕の場合はちょっとハミ出てるっていうのかな。でも全く違うってわけではないんですよね。
■気になっているブレザーは最近あまり見ないフランネル
赤 28歳で独立して会社を作ったんですけど、当初は元町の(注3)信濃屋のオリジナルのブレザーとかシャツを作っていたんです。
菊 へぇ、それは凄い。
赤 当時はイギリスの(注4)フォックスブラザーズのフランネルを使ったブレザーが信濃屋のオリジナルの定番でした。ほかにアクアスキュータムも置いてあって、そっちは薄手のメルトンみたいなカチカチの、ストラッチャン&シュトラウド社っていうフラノ専門の生地メーカーの生地を使っていました。世界ビリヤード選手権のビリヤード台のフエルトを作っているところで、毛並みがもの凄くきれいでしたね。
菊 最近、フランネルのブレザーって見かけないですよね。でも、自分の中ではフラノがもの凄く気分なんです。そういえば、横浜といえば(注5)ポピーにはよく行きましたね。
赤 ポピーには当時、ルイ・アームストロングみたいな感じの番頭さんがいて、ネイビーのブレザーにキャンディストライプのボタンダウンシャツを合わせて、黒のニットタイをしていましてね。カッコよかったなぁ。ところで、今日着ていらっしゃる菊池さんのジャケット、くるみボタンを使っていて懐かしいですね。
菊 これはベルヴェスト製の(注6)40カラッツ&525のオリジナルです。くるみボタンとワッペンがポイントになっています。本当はワッペンじゃなくて本物の刺繍を入れたかったんですけどね。イタリアとかイギリスのクラシックなホテルってバスローブにイニシャルが入っているけど、ああいうのっていいですよね。キラキラしていないところもいい。
赤 ブレザーは一番の便利モノ、コンビニなアイテムですよね。グレイのパンツに合わせても、あるいは5ポケットパンツに合わせてもいい。ネイビーという色が抑えてくれるので、オールマイティに決まりますから。いわば、男の服の楷書体なんです。字が上手く書けなくなると楷書に戻るみたいな感じで、結局は基本の紺ブレに戻るんですよね。
菊 時間帯も広いですしね。本当、便利な1着です。いってしまえば、カーディガンみたいなもので、そういうマインドがブレザーというアイテムの役割としてありますよね。ただ、自分にとってネイビーは必需品っていう感覚なので、そこから一歩進むとしたら、今だったらグレイフランネルのブレザーが着たいなぁ。白のフランネルのパンツを合わせてね。2パッチポケットで2つボタンか、ハイの3つボタンかな。夏だったらシルクが入った素材もいいですね。これもやっぱり紺じゃなくてグレイですけど(笑)。
赤 お洒落ですねぇ。自分の場合、夏場だったらアイリッシュリネンのモイ・ガッシェルっていう生地屋があって、そこってパナマのガチガチの麻が得意なんですよ。麻でも600gくらいあるやつで、裾がクルクル丸まったりしないんです。胸ポケットにサックスのグレイがかったイニシャルを刺繍で入れて、ボタンは白蝶貝でね。それにドリルクロスのバミューダみたいな太めのショトパンツを合わせたいですね。着込んでいって味が出てくるブレザーが昔から好きなんです。
菊 今日着てらっしゃるブレザーもかなりヘビーウエイトっぽいですよね。
■2人の巨匠が生み出した自分流の着こなしとは?
赤 '98年頃に(注7)リヴェラーノで仕立てたもので、これも400gくらいあります。あと、確かに菊池さんがおっしゃるように、フラノのブレザーは着たいですね。それもダブルがいい。
菊 いいですねぇ。ダブルはやたらと新鮮に見えますよね。ビシッと着ているのがカッコいい。といいつつ、キチッとモノを着るのって最近あんまり得意じゃないんです(笑)。だからこうやって袖口をまくったりしてね。それだけで気分的にものすごくラクになる。これって'70年代の終わり頃、シャツだろうが上着だろうが、みんなやっていましたよね。まくるっていうよりはたくし上げる感じでね。その点、赤峰さんは、きっちりしていますね。正統にグレイパンツを合わせていらっしゃる。
赤 グレイでも明るい色が好きなんです。今日穿いているミディアムグレイでギリギリですね。チャコールは合わせないんです。それなりのコントラストがあるほうが、ネイビーが映えますからね。ベージュのギャバのパンツを合わせて着るのも好きですね。
菊 ネイビーのブレザーの着こなしといえば、アンディ・ウォーホールが自分の中でももの凄く印象に残っているんです。彼はあれをユニフォーム化していたでしょう。本人と服が見事に調和しているっていうのかな。
赤 レジメンタルのネクタイを合わせながら、シャツだけは洗いざらしのダンガリーにしちゃうみたいなね。
菊 そうそう、あのノリが格好よかったですよね。
赤 今は彼がしていたような芯がないペラペラしたネクタイが気分ですよね。ノットも小さいほうがカッコいい。
菊 昔のネクタイってみんなそうでしたよね。プックリした感じはなくて3つ巻きの裏無しが当たり前でしたから。
赤 タイトなシャツのほうが気分だし、ノットも小さいほうが今の気分ですよね。クラシックに紺ブレを着るにしても、合わせを工夫しながら今の時代の気分をどう表現するか、そこが大切なんです。赤いストライプのシャツと赤いネクタイってのも、歳を重ねてきたからできる着こなしで、若い頃はなかなかできませんでしたから(笑)
(注1) 「ピーコック革命」
1960年代後半に起こった、メンズファッションの個性化の動き。日本ではシャツ&ネクタイのカラフル現象が起こりました。
(注2) 「チャビー・チェッカー」
'60年代、日全米に“ツイスト”ダンスブームを巻き起こしたオールディーズ歌手。代表曲は「ザ・ツイスト」、「レッツ ツイスト アゲイン」など。
(注3) 「信濃屋」
日本で最も早くクラシコイタリアの服を展開した横浜・元町の洋品店。ここのバイヤー白井俊夫氏は、ファッション界のゴッドファーザー。
(注4) 「フォックスブラザーズ」
フランネルがあまりにも有名な英国の生地メーカー。フランネルはココのヴィンテージしか使わないっていう頑固なサルトもあるほど。
(注5) 「ポピー」
信濃屋と双璧を成す、元町の老舗洋品店。ここのオリジナルのシャツとネクタイは、当時大人気を呼びました。
(注6) 「40カラッツ&525」
菊池さんがディレクターを務めるブランド&セレクトショップ。青山のショップでは、菊池さんが自らがセレクトしたインポートも展開。
(注7) 「リヴェラーノ」
アントニオ・リヴェラーノ氏率いるフィレンツェのサルト、リヴェラーノ&リヴェラーノのこと。赤峰さんの大のお気に入り。
■(写真右)菊池武夫氏
・菊池さんの必需アイテムのキャスケット
・襟を出して着る40カラッツ&525の白シャツ
・40カラッツ&525のベルヴェスト製紺のブレザー
・シワがナチュラル感を生む40カラッツ&525の白のコットンパンツ
・アディダスのスーパースター
■(写真左)赤峰幸生氏
・KOGENの120双エジプト綿のストライプシャツ
・エディ・モネッティのサテンベースのストライプタイ
・リヴェラーノ&リヴェラーノでス・ミズーラした紺のブレザー
・リヴェラーノ&リヴェラーノでス・ミズーラしたウールパンツ
・ジョン・ロブのスエードシューズ
約2時間にわたるお二人の対談は、40年前の前にまで遡り、服の話で盛り上がっていました。お互いまるで異なるファッションのように見えつつも、根底では似通っている部分が多々あることを、対談を通して実感された様子でした。
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菊池さん的紺ブレの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫 Takeo Kikuchi
1939年東京都生まれ。'70年にビギを設立。'84年にタケオキクチを発表。2004年に信國太志氏にディレクターを引継ぎ、2005年に自らがディレクターを務める40カラッツ&525を始動。デザインはもちろん、海外でのバイイングも手掛ける、日本ファッション界のカリスマ。
帽子とストールは欠かせません
帽子とストールは菊池さんの必須アイテム。ラフなスタイルでも、そこそこキッチリした感じに見せてくれるのだそうです。シャツの襟をガバッと出して着るのも菊池さん流。
シャツ袖を出して着崩します
シャツの袖口も襟同様にガバッと出して着ます。カッチリしすぎず、だらしなくなりすぎず。ジャケットのきっちり感の中にもリラックス感を表現した、菊池さんらしいテクニック!
センスのよさを感じるくるみボタン
紺ブレのボタンは、金でもなければ銀でもなく、なんとくるみボタン。フォーマルのディテールを日常に落とし込んだ、菊池さんならではのヌキどころです。本当、カッコいい!
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赤峰さん的紺ブレの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]
シャツとタイはブルーでなく赤!
イタリアではときたま見かける赤ストライプシャツ&赤のタイも日本では皆無。ノットをキュッと小さく結んでここまでエレガントに着こなせるのは、赤峰さんくらいでは?
男は大きな背中で語るんです
赤峰さんのこだわりのひとつに「男は背中で語る」というのがあります。これぞダンディな赤峰イズム。こればっかりは真似しようにも人生経験と人間の器の問題なので・・・・・・。
紺ブレには明るめグレイパンツ
落ち着いたネイビーには、明るめのグレイパンツを選ぶのが赤峰流。トーンはせいぜいこの日穿いていたミディアムグレイまで。パンツのうしろの直線ラインにもこだわります。
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2006年04月24日(月)
OCEANS 6月号 連載#3 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
フィレンツェ的な「粋」
シックな装いとは?という命題に対して、私は自分自身の毎日の着こなしで答えを出している。しかし、それを言葉で伝えるのは難しい。人の振りを見て我が振り直せ、と言うが、それがシックな装いを知るための近道ではないか。そのためには、良きお手本を見つけることが大事だ。私は年に幾度もイタリアへと赴き、多くの服飾関係者に出会うが、その中でも群を抜いてシックだと思う人物がいる。それはフィレンツェでテーラーを営む、(注1)アントニオ・リベラーノ氏だ。今回、旧知の仲である彼とシックについて語らった。
赤峰 日本人がシックに装うためにアドバイスをしてほしい。
アントニオ 私はテーラーだから、顧客がオーダーに来たら、観察と会話でベストを探る。その経験から導いた基本ルールは4つ。1.自分に似合う色を知る 2.シャツとタイのハーモニー 3.靴とベルトのハーモニー 4.いつ、どこへ行くのか? これらはすべて当たり前のことだが、実践できている人はひと握り。また、着こなしの色は2色の範囲でまとめ、(注2)3色目は小さい面積で使うのがコツ。だが、地味ならいいということではない。ピンクだってシックにこなせる。派手にして、目立とうとするのがよくないだけ。
赤峰 その通り。これ見よがしとは、意識の問題でもある。そして、人を真似るのが、シックを身に着ける近道だと言ったが、それが自分に似合うのか判断することも大事。ジャケットの丈、裾幅などは人それぞれ身長によって適した長さが違う。
アントニオ 確かに、スーツには(注3)黄金律がある。されど万能ではない。だから、私はひとりひとりの体に合うようにアレンジする。シックに装うには、ジャストサイズが前提だ。
赤峰 私はアントニオが暮らすフィレンツェ的な着こなしを好む。カンパーニャ(田舎)の自然景観が影響し、ナチュラルな色合いや風合いが好まれ、落ち着いていて品がある。ミラノ、ナポリ、イタリアは都市によって着こなしのテイストが異なる。イタリアンクラシックの中でも、フィレンツェ的なこなし方に粋を感じるのは、そうしたわけだ。
(注1) 「アントニオ・リベラーノ」
前号でも紹介したリベラーノ&リベラーノの当主でありテーラー。フィレンツェにアトリエを構える。日本ではユナイテッドアローズ原宿本店 メンズ館にて既製品を扱い、年2回オーダー会も行う。
(注2) 「3色目は小さい面積」
スーツとシャツは面積が大きいのでベーシックカラーが基本。面積が小さいタイやチーフで色を挿すのが、シックな装いのテクニック。
(注3) 「黄金律」
ジャケットの留めるボタン、2ボタンなら1個目、3ボタン段返りなら2個目のボタンの位置は、ウエストの一番くびれているところに合わせる。アントニオ氏は、そんな基本を踏まえ、パーソナリティに合わせて調整を加える。
アントニオ氏のVゾーンは控えめなカントリー・シック
ブラウン千鳥格子のジャケットをパンツとのセットアップではなく、3ピースでもなく、ベストとの2ピースでこなしているのが洒脱。Vゾーンはブルーを基調とし、タイの素材感がジャケットと絶妙なハーモニーを奏でる。足元はブラウンスウェードのチャッカブーツ。まさに、フィレンツェ的な粋を感じさせる品のあるカントリールック。
赤峰氏のVゾーンは、色数を抑えながらも個性が際立つ
取材当日の赤峰氏は、全体に寒色系でまとめたコーディネート。グレーのスーツにブルーストライプのシャツを合わせ、タイはブルー系のボーダー、チーフはブルー系のドット。色数は2色に絞りながら、タイとチーフを効果的なアクセントとしている。だから凡庸にならず、メリハリがあって、シックに見えるという手練な算段。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
ドライコットンのカーディガン
ご紹介するアイテムは、マエストロがデザインする自身のブランド、Y.アカミネの2001年春夏コレクションで展開したカーディガン。
映画「太陽の下の18才」をイメージした太番手のドライコットン製で、リゾートで着ることを想定。生成り色のボディにネイビーのトリミングが上品で、氏はラコステのポロシャツを合わせて着こなしているそうである。
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2006年03月24日(金)
OCEANS 5月号 連載#2 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
ラペル幅の粋
まず、前提としてお伝えしたいのだが、私はクラシックを偏愛しているわけではない。モードにはモードの良さがある(でも、私は触手を伸ばさないがね)。そして、どうやら近頃、モードはクラシック寄りになっているようだ。モードはクラシックのアレンジでありアンチテーゼ。クラシックとは基本であり、基本があるからモード=応用がある。応用をこなすために、基本を知る。本末転倒な話ではないだろう。しかしながら、日本は洋服の歴史が欧米に比べて浅いがゆえに、基本をよく理解もせずして、小手先ばかりに気を使い、翻弄されている。
さて、第2回のテーマは「ラペル幅の粋」について。先にモードに触れたのにはわけがある。スーツの印象を決定付けるのは、ラペル幅であるからだ。モードは(注1)ラペル幅をいじることでスーツに個性ををもたらす。正統なスーツのラペルは目立たない。なぜなら、中庸な幅で全体に自然と溶け込むからだ。中庸を具体的な数字で説明すると9.5〜10cmが目安。クラシックスーツならば、恐らくその範囲内であるはずだ。ただし、誤解されないよう付け加えると、基本であることは絶対条件ではない。
例えば、私が着ている(注2)リベラーノ&リベラーノであつらえたジャケットの場合、ラペル幅は9cm。あえて、ややナローにし、モダニティを取り入れている。そういった、基本を知ったうえで好みを反映することは構わない。そしてスーツの顔であるラペルは、幅に加え、(注3)ゴージラインやノッチが一体となって完成される。
今回はラペルについて言及したが、私が伝えたいことは、粋とは「あざとさ」や「これ見よがし」ではないということ。まずは、洋服と自分を調和させる術を知る。そして、実践することこそが粋なのだ。しかしながら、これが明文化されているわけではなく、ルールに則ればいいわけでもなく、ことのほか難しい。だから、クラシック道を歩み始めると奥が深く、そして面白いのである。
(注1) 「ラペル幅をいじる」
ラペルとはジャケットの下襟のこと。いじるとは幅を細くしたり、太くしたりして標準からアレンジすること。ディオールオムはラペルを細くし、ドルチェ&ガッパーナやグッチはラペルを太くする傾向にある。
(注2) 「リベラーノ&リベラーノ」
フィレンツェ屈指のテーラーであり、アントニオ・リベラーノ氏が率いる。赤峰氏とは旧知の友であり、お互いを尊敬し合い、高め合う間柄である。
(注3) 「ゴージラインやノッチ」
ゴージラインとは上襟と下襟をつなぐ縫い目の線。その高低や角度によって印象が様変わりする。ノッチとはV字形の刻み目のこと。一般的なノッチドラペルの他に下襟が長く上に向くピークドラペルやクローバーリーフラペル、フィッシュマウスラペルなど様々なデザインがある。
マエストロの蔵書のひとつ「L'ELEGANZA MASCHILE」。イタリアンエレガンスの教科書的な本。載っているジャケットのラペルはみんな中庸な幅。クラシックは流行に左右されず、今に伝えられているのです。
「THE MODERN MITCHELL SYSTEM」は、'50年代のアメリカの型紙の参考書。スーツはイギリスで生まれ、イタリアで成熟した。そして、アメリカでは両国をお手本に進化します。こうして数値化して基本を取り入れたのです。
男の粋な装いをイラストで紹介する「MAN'S FASHION」。描かれているスーツやジャケットのラペルも、また中庸な幅ばかり。クロージングの基本は普遍的。そして世界で通用するのは、やっぱり王道のスタイルです。
スタンダードを知っているからこそ、ラペル幅をアレンジしても自然にこなせる
マエストロ赤峰氏が着用しているのは、フレンツェに店を構えるリベラーノ&リベラーノにて誂えたブラウントロピカル地のスーツ。ラペルは赤峰氏のスーツワードロープの中では最も細く9cm。合わせている白のシャツは細番手のツイル地で、タイは平織りのマイクロハウンドトゥース柄。白のチーフは基本のTVフォールドにて。全体のハーモニーが自然に見えて、実にエレガントである。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
バラクータのG12
ウェルドレッサーであるマエストロのこだわりは、スーツだけに留まりません。今月の秘蔵のワードロープからの蔵出しアイテムは、バラクータのG12です。ネイビーのポプリン製で、ナチュラルな味の出方がいい雰囲気。購入は約30年前、マンチェスターにて。そして、このブルゾンをきっかけにマエストロがバラクータを日本に紹介したんです。まさに歴史を物語る逸品!
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