2013年09月09日(月)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『スタンダードをつくる』 2013年9月7日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
ヨーロッパでは、物心ついた頃から革靴を履き、「ディナーの時には上着を着なさい」と教育を受けます。紺、茶、グレーが男の基本的な色みであることや、適切なサイズ選びなど、装いの基本を父親が息子に教え込んでいきます。
一方、日本において洋装が一般化してからまだ60年余り。「スタンダード」が確立せず、親から子への「服育」も不十分だと感じています。
基本がないままに、「違い」を競い、おかしなファッションが生まれているのが、現在の日本ではないでしょうか
売り手にも問題があります。次々と新しいモノを買ってもらわなければならない事情から、基本となる品ぞろえを怠ってきました。普遍のスタイルを示さないまま、トレンドの追いかけごっこに駆り立てるアパレルの状況は、たいへん腹立たしい。
今こそ、「ジャパニーズ・ジェントルマン」の基準を打ち立てなければならない。そんな思いで私が関わっているのが、オンワード樫山が展開する「五大陸」というブランドです。
店頭に並びだした今年の秋冬物にも、変わったものはありません。あくまでも「スタンダード」に視点を置いた商品が並んでいます。ただし現代の「着捨て」「履き捨て」の風潮にははっきりと「否」を掲げ、尾州の毛織物、京都の絹、遠州のシャツ地など、手間がかかった上質な素材にこだわって、最低でも5年は着られるものだけをそろえています。
「このコラムで、繰り返し赤峰の主張は聞かされたけれど、実践するとしてどこで探せばよいのか」と疑問を感じた方もいらしたと聞きます。五大陸は全国にお店がありますので、何も買わずとも、ぜひ訪ねてご覧頂ければ幸いです。
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※朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。
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2013年08月29日(木)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『生きざまを撮る男』 2013年8月24日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
もう7年ほど前になるでしょうか。年に2回訪れるイタリア・フィレンツェの男性服見本市「ピッティ・ウオモ」の会場で、眼光鋭い男から「あなたの写真を撮らせてくれないか」と声をかけられました。
男の名は、スコット・シューマン。ストリートスナップを生業とする、世界的なカメラマンです。
彼が撮るのは、「ピカピカに着飾った人々」ではありません。真骨頂は「ダシが効いた男たち」ではないでしょうか。
着込んでほつれた上着の縁や、くたびれてきたシャツのしわまで、撮影対象に迫っていきます。結果、彼が撮った写真には、服を着た人々の生活や生きざまがにじむのです。
彼が「この街ではこんな人が生きているよ」と伝えているサイト「サルトリアリスト」には、世界中から日に何千、何万とアクセスがあるといいます。かねてファッションは真新しいもの、生活感を感じさせないものが良いとされてきたと思いますが、今や人々の日常の装いこそが関心を呼び、共感を得ていることがわかります。
裏を返せば、先進的な服を着るのがかっこいいのではなく、自分が選んだ服を着て、「創造的に生きていくこと」こそが問われているのでしょう。
また、移り気で常に服装を「ファッショナブルに」変化させていかなければならないと考えていては、外見ににじみ出るような個性は育たない。私は「個性とは脈々と続けていくことだ」と思います。
スコットとは以来、会っては食事をともにし、親交を温めています。今年6月にミラノで再会した時には、「撮りためた写真で今度、『アカミネ・アルバム』を作るよ」と言ってくれました。
完成が楽しみです。
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2013年08月05日(月)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『シャツの腕まくり』 2013年8月3日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
暑い季節の装いの主役と言えるシャツ。今回は、粋な着こなしについてお伝えします。
男性のスタイルが何となく決まらない場合、問題はサイズ合わせにあることが多い。サイズが大きいと、シャツの肩のラインが、腕の方に落ち込んでしまいます。小さいサイズも試し、肩がぴたりと合ったものを着るとスタイリッシュに見えます。
シャツでは、台襟の高さも印象を大きく左右します。西洋では、一番上の台襟ボタンの位置が高く、首を覆うことが大切に考えられています。一方、日本は和服の着合わせの文化もあり、ボタン位置が低い方が楽だからと、どんどん下がっていった歴史があります。ここが下がりすぎるときちんと見えないことに注意してください。台襟が4センチほどあるといいでしょう。
そして、上着を脱いだ時のシャツ姿を粋にきめるために、意識して頂きたいのが腕まくり。活動的で、見た目にも涼やかです。袖のカフス幅に合わせて折り込んで、七分丈でも、五分丈ぐらいにしっかりまくってもいい。袖口のボタンを留めたままでは、格好良く見えません。
さらに、シャツの下に着る下着は見えないことが大切です。ネクタイをしないのなら、首ぐりが深いものを選びましょう。
ノーネクタイの時にお薦めしたいのが「襟のロールアップ」のテクニック。襟の中に仕込まれたキーパーを外して、ピンと張った襟に指で内向きのカーブを付けてやる。すると、襟にいい表情が出ます。
襟や袖口の色が異なる「クレリックシャツ」を好んで着る男性がいますが、もともとアイロン掛けが大変だった時代に、襟を取り外せるのが実用的だったから生まれた形状です。色使いの面からは、少々難しいアイテムだと心得てください。
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2013年07月24日(水)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『リネンを味わう時代』 2013年7月20日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
前回は真夏のジェントルマンスタイルのために、リネンの活用についてお伝えしました。この夏は、リネンで作られた服を手に取る人が少なくないと思います。味わいを感じさせる素材が、いま再び注目されているのです。夏の暑さがひどい昨今、高温多湿な日本の気候にあった織物として、見直されている面もあるでしょう。
リネンと言えば、しわです。カチッとしたビジネススーツと異なり、しわになるから麻はいい。緩やかな気分になり、綿とはまた違う良さがあります。生地こそが、まとう喜びをもたらす源泉だと教えてくれる素材でもありましょう。
原料としては、ベルギーや北フランスでとれるリネンがよいとされています。よい生地はどんな素材でも同じですが、繊維が細くて長いものが、上質な服地に生まれ変わるのです。
そして織るのはアイルランドや日本が得意とするところ。
中でも最高とされているのが、アイリッシュ・リネンの名門、スペンス・ブライソン社のものです。私たちが「手持ちが違う」と表現する、際立った肌触りや張りを持っています。
リネンというのはもともと生活資材。今でも上等なシーツやテーブルクロスとして用いられています。通気性に優れ、肌触りがよいのが持ち味ですから、イタリアなどでは肌着も売られています。
本来は決して夏だけの素材ではないのですが、日本ではなぜか春夏のものと誤解されています。イタリア人の友人で、一年中、リネンのジャケットで通している男がいますが、もうテロテロになるまで着込んでいて、とにかくカッコイイ。
力まず、年輪を感じさせる着こなしは、リネンがまさに大人の素材であることを教えてもくれます。
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2013年07月08日(月)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『真夏のジェントルマン』 2013年7月6日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
往年のジェントルマンは、夏の盛りでも、実にきちんとした服装をしていました。脳裏に浮かぶ一人は、かつての英国宰相、ウィンストン・チャーチルです。
今で言うスリーピースである「三つ組」を着込み、パナマ帽をかぶり、ステッキを操る。口元にはトレードマークの葉巻です。思い浮かべて頂けば、「暑い? 紳士たるもの、夏でも粋にきめたいものだ」といったセリフが聞こえてきませんか?
この夏は日本の店頭で、リネンの提案が盛んです。アイテムとしてまず目につくのが、洗いざらしのシャツ。あえてプレスをかけないことで、表情には味わいがあり、暑い日には触り心地がとてもいい。
ドレスシーンで身に着ける場合、赤峰流では、全体を麻の緩い感じでまとめることはせず、ボトムスには、ピシッとクリースの入ったスラックスを合わせることを意識しています。
リネンのジャケットも味わってみて頂きたい。基本はオフで着ることを考える方が多いと思いますが、職場にも着ていけるものならなおいいでしょう。
無地あるいはチェック地がスタンダード。遠目には無地だけれども、近くで見ると細かい千鳥格子であったり、ヘリンボーンであったりといった生地も「旬」な印象です。着る前には、お尻にかかる部分には簡単にアイロンをかけると、きちんとした印象になります。
しっかりとした厚み、重みがあり、しわになりにくい「ハードリネン」も、上級者向けの素材としてお薦めします。
ネクタイをする時は、光沢がある絹ではなく、リネン混紡やニットなど、素材感を合わせると粋。夏ならではのリネンで、ジェントルマンスタイルを楽しみましょう!
Posted by インコントロ STAFF at 17時47分 Permalink コメント ( 0 )
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