AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2007年07月06日(金)

MEN'S EX 8月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.15 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
サマージャケットを涼しく着る方法

暑いからといって、ついついラクな格好をしがちな夏のファッション。
が、果たしてそれで本当にいいのか?
そんなワケで今回は、お2人にサマージャケットを着る意義と、それを涼しく着る方法を伝授していただきました。

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■(写真右)菊池武夫氏
・アンティークの帽子
・フェイヴァーブルックのドクロ柄のスカーフ
・40カラッツ&525のコットンリネンシャツ
・40カラッツ&525のシルクリネンウールのジャケット
・レデストのホワイトジーンズ
・レ ユッカスのスエードシューズ




■(写真左)赤峰幸生氏
・リヴェラーノ&リヴェラーノでス・ミズーラしたリネンシャツ
・ドリアーニのフレスコタイ
・アカミネ ロイヤルラインのシアサッカージャケット
・リヴェラーノ&リヴェラーノのコットンツイルのパンツ
・エルメスのエスパドリーユ



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それにしても、絵になるお2人です。対談にも出てきた畝のあるジャケットの素材が、お2人の着こなしをとっても涼しそうに見せています。

■ヨーロッパではサマージャケットは必須アイテム
菊池  サマージャケットって、カタチよりも、まず素材が一番大切ですよね。
赤峰  そうですね。サマージャケットといえば、やっぱり綿、麻、綿麻素材に限ります。なかでも(注1)シアサッカーとかコードレーンっていうのは、必要不可欠な素材ですよね。イタリア的には“CON GIACCA”というか、ジャケットは羽織るのがスタイルの基本みたいなところがあって、シャツ1枚でもシャツなりのよさがありますけど、人前に出るとなると、季節は関係なくジャケットを羽織って初めてスタイルが完成するというのがありますよね。そういった意味で、サマージャケットは必要不可欠なアイテムなんです。
菊池  英国でアフタヌーンティーを楽しもうと思っていいホテルに入ろうとしても、ジャケットを着てないと絶対入れてくれないじゃないですか。昔はたぶん、帝国ホテルとかでもそういう決まりがあったんでしょうけど、最近はそういうのもなくなってしまいましたよね。ジャケットを着るというのは、自分を正すという意味もある程度はあるので、着る着ないは別として、いつでも持っているっていうのが必要だと思います。
赤峰  そうですね。それはシャツジャケット的な気軽に羽織れるものでもいいし、もちろん、きちんとしたテーラードでもいいし、要はジャケットという1つの羽織れるアイテムを持っていることが重要なんです。これは英国に限ったことではなくて、イタリアでもカメリエーレがタキシードを着ているようなリストランテでは「ジャケットお持ちですか?」って必ず言われますから。
菊池  確かに。あとイギリスの場合、ジャケットがない人には、貸しジャケットがありますよね。それも凄くダブダブのやつ。あれ、わざとダブダブなのを用意しているんです。
赤峰  そうそう。
菊池  もの凄い派手なブルーのやつだったりね。こいつはジャケットを持たずに来たんだぞっていう見せしめみたいなものですよね。ほかの国だと、そういうのはあまりないですけど。
赤峰  どこに出るのでもジャケットを着ていれば、恥ずかしい思いをすることはないですよね。
M.E.  確かにジャケットを着ているときっちり見えるんでしょうけど、日本の気候を考えると、少なくとも物理的にはどうしても暑くなってしまいます。涼しそうに見せるにはどうすればよいのでしょうか?
菊池  やっぱり素材の雰囲気で涼しく見せるということでしょうか。最初に赤峰さんが言った、綿、麻、綿麻。綿はコードレーンだったり、シアサッカーだったり。
赤峰  縦縞っていうのもキーワードになります。サッカーの縞だったり、コードレーンの縞だったり。浴衣もそうですけど、縞ものの柄っていうのは夏場に最適なんです。
菊池  ブルーの色も清涼感を演出してくれますよね。薄い茶色とかエンジとかもありますけど、やっぱり夏はブルーかなと。
赤峰  素材でもより詳しくいうと、クリスプといって、いわゆる強撚でシャリ感が出るヤツがいいですよね。小千谷縮とか越後上布とか浴衣の柄もまるっきり同じで、素材に畝があると生地が肌に全部ひっつかないですから、その分清涼感が保てるんです。素肌に対する密着度が違うんですよね。空気が入るスペースが素材の中にあることが大切なんです。
M.E.  より涼しく見せられるストライプ柄ってあるのでしょうか?
赤峰  ストライプの柄に関しては、あまり関係ないと思います。ただ、カラダが大きめの人はストライプのピッチが広くてもバランスが保てるでしょうし、細い人がピッチの広いものを着たらストライプが勝ちすぎちゃってジャケットに負けてしまうっていうのはありますよね。
M.E.  中に合わせるアイテムも重要ですよね。
菊池  シャツでいうと、(注2)ローン、ボイル、リネンのシャツなんかが夏の定番素材です。このへんの素材って、夏に着るには本当にいいですよね。ただ、クオリティの高いものを選ばないと意味がないですけど。
赤峰  コットンのオックスフォードとかだと、ちょっとぽってりしちゃって、夏場のジャケットには合いにくいかなっていう気はします。
M.E.  涼しい格好をしたいときってラフなほう、ラフなほうへと行きがちですけど、菊池さんはいつも必ずスカーフを巻かれていますし、赤峰さんもタイドアップしています。物理的には暑くなりますけど、お2人ともむしろ涼しげな感じが漂っていますよね。
菊池  完全にダラーンとしちゃうと自分も気分的に暑いし、相手から見ても暑くなってしまいますからね。
赤峰  最高なのは「ベニスに死す」の(注3)ダーク・ボガードじゃないけど麻のスーツをビシッと着てタイドアップしたスタイルか、アメリカ的にいうと「卒業」のときの(注4)ダスティン・ホフマンのサッカーのジャケットにニットタイをするみたいに、締まっているほうがカッコいいですよね。1ついえるのは、色が白い分だけ先生はスカーフで、僕はタイでという風に、やや濃いめのものでアクセントをつけないと、ボケボケになってしまうんですよね。メガネでもなんでもいいんですけど、締めるものを入れないと、顔のボケ感が出てしまうんです。
菊池  首の周りに巻くと当然体温が上がりますから暑くなりますけど、お洒落のためには我慢しちゃうんですよね。ジャケットを着るってことも結局は同じです。その辺は一線を画して、ビシッとしていたほうがいいかなって思いまして。実際、着ている本人は思ったよりも暑さを感じないですし、相手にも暑さを感じさせないと思うんです。
赤峰  我々日本人って「暑いですね、寒いですね」と、お互いに季節を語り合うことで挨拶するっていうのが日常じゃないですか。着ていても常に気持ちは涼しげでいるっていうのが大切だと思うんです。「暑いよなぁ」って自分で思っていると、どんなにカッコよく決めていても周囲からはカッコよく見えないんですよね。気の持ちようっていう言葉がありますけど、自分の立ち姿として、それって凄く大事なことだと思うんです。
菊池  役者で本番が始まると汗がピタッと引っ込む人っていますよね。それと同じで、意外と精神的な部分に左右されるところって確かに大きいですよ。
赤峰  暑いからといってシャツ1枚、Tシャツ1枚でいても、結局のところ出るところを憚るじゃないですか。
菊池  自分の問題よりも、全体の中での調和が大切なんですよね。
赤峰  昔的にいうと、失礼があってはいけない、人前に出るっていうのはそういうことなんですよね。「夏は氷屋、冬は炭屋」といって、冬は炭屋をやっている店が夏は氷屋になるという言葉がありますけど、それにたとえて、僕の中では「夏はシアサッカー、冬はハリスツイード」みたいなところがあるんです。サマージャケットは必須のアイテムじゃないかなと思います。最初の1着は紺ブレを持っている人が多いと思うんですけど、2着目のアイテムとして、シアサッカーかコードレーンのジャケットは持っていてほしいですよね。コードレーンやシアサッカーって、日焼けした肌との相性が凄くよくて、皮膚の色とのコントラストにより効果が出ますから。
菊池  あとはリネンですね。僕は麻が大好きなんですけど、今着ているような感じで、柄などで視覚的に涼しさを感じさせるっていうのも大事かなって思います。夏にあえて黒いものを着るのもカッコいいですけど、やっぱり暑いですから。ヨーロッパだと、圧倒的に麻、サッカーが多いですからね。麻の色はやっぱり生成りの無地のものが一番です。
赤峰  コードレーンはその次くらいですかね。コードレーンを好むのってアメリカ人が多いんです。
菊池  まさにそのとおり!
 
 
(注1) 「シアサッカーとかコードレーン」
ともにサマージャケットの代名詞的服地。シアサッカーは縮れのある縞柄、コードレーンは細い畝のある織地の一種で、ともにコットン、ポリエステル混、レーヨン混などが一般的。また、色はどちらも白地にブルーが定番。


(注2) 「ローン、ボイル」
ともに夏のシャツ地を代表する生地。ローンはハンカチなどに使用される細番手の糸を粗めに織った平織りコットン地。ボイルは強撚の糸を綿密度を低くして織った、サラリとした肌触りが特徴の薄手の平織りコットン地。

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(注3) 「ダーク・ボガード」
1921年ロンドン生まれ。劇場の大道具係から俳優に転向した異色の経歴の持ち主。代表作に、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「地獄に落ちた勇者ども」('69年)、「ベニスに死す」('71年)などがあります。'99年死去。

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(注4) 「ダスティン・ホフマン」
1937年ロサンゼルス生まれ。舞台での活躍がマイク・ニコルズ監督に認められ、映画「卒業」('67年)で主役に抜擢。「クレイマー、クレイマー」('79年)、「レインマン」('88年)で、アカデミー主演男優賞を受賞した名俳優。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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