2007年04月24日(火)
OCEANS 6月号 連載#15 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
茶革の“粋”
骨太な茶革のブリーフがスーツ姿に深みを与えてくれる
赤峰氏が着ているのは、グレーのキッドモヘア素材のダブルブレストスーツ。そして、氏が携えているのは、25年ほど前にミラノにて購入したヴァレクストラのブリーフケースだ。素材はチンギアーレ。丈夫であるがゆえに、長く使い続けることができ、茶革が見事な味わいに変化している。氏曰く「ヴァレクレストラはブランドでありながらこれ見よがしにならない、粋なブランド。職人を大事にしているからこそ、優れた革製品が作られている。機能性のためのデザインは飽きることがなく、初めは硬かったチンギアーレも使い込むうちに柔らかくなってきた。イタリアでも、イギリスでも、このブリーフケースを携えていると、どこのものか?と尋ねられることが多い。それは革が魅力的に映ることにほかならない。ヴァレクレストラだと答えると、皆、納得する」。
今の世の中は、時間に追われている。利便性ばかりが求められ、何事も即物的である気がしてならない。それはファッションについても然り。しかし、そうしたマーケティング主導で作られたモノには魅力を感じられるものが少ない。イタリアでは「(注1)ファット ア マーノ」という言葉が重んじられる。職人の手作りによるモノは完成までに長き時間を要し、そして時間をかけた分だけ魅力を備えていく。私はブランドの名前にはこだわらないし、ブランド名があからさまなのは好まない。しかし、職人を育て、大事にし続けているブランドを選ぶのは、ゆったりとした時間の中で良質なモノを作り上げ、必然的にクオリティが高いからだ。特に革製品は、それがことさらである。
(注2)ヴァレクストラのブリーフケースはそうした理由で選び、ミラノの店で購入して以来、25年ほど使い続けている。デザインありきではなく目的に適ったシンプルで飽きのこないもので、素材の(注3)チンギアーレはとても丈夫。使い始めは硬いが、使うたびに柔らかくなり、しっくりと手になじむ。それが心地よい。やや明るめの茶を選ぶのは、黒よりも味が出やすく、茶の色合いが濃くなるにつれ、艶が増して美しい風合いとなるから。キズですら、味となり魅力のひとつとなる。(注4)スマイソンのパスポートケース、ティファニーのアンティーク時計、(注5)チェレリーニのコインケースも使うほどに味わい深くなる茶革がいい。まだ幾分、味が足りないが、今よりも来年、そして5年後、10年後の色合いが楽しみだ。
長く愛用して味の出た茶革の小物を身につけていると、揺ぎない芯が自分に一本通っているようにすら思える。そして、きっとそれは男らしい趣味のよさでもあるのだ。多少、値が張ったとしても結果的に得をするということを思えば、その価値以上の価値を見出すことができるはず。
最後に着こなしについて触れよう。革小物は色を揃えるのが基本だ。特に鞄と靴。財布や名刺入れ、時計のベルトも揃っていた方がスマートに見える。黒であれば黒で統一すること。それは難しくない。茶であればもちろん茶で統一を。その際、濃淡までも合わせようとする向きもあるが、私は気にしない。揃いすぎているのも不自然で、使っている年月に応じて色合いが変わるのだから。
(注1) 「ファット ア マーノ」
「fatto a mano」はイタリア語で手作りという意。職人が丁寧に一針一針縫い上げた革製品は、丈夫で傷んでも直しが利き、長く愛用できる。
(注2) 「ヴァレクストラ」
1937年、ミラノにて創業した老舗。クオリティを重視した革製品に定評がある。日本では銀座に路面店があり、多数のアイテムを揃える。
(注3) 「チンギアーレ」
イタリア語でイノシシ革の意。古くから高級素材として用いられ、鞄や財布のほか、グローブにも使われる。丈夫で、キズつきにくいことが特性。
(注4) 「スマイソン」
創業は1887年。英国王室御用達の老舗で、ステーショナリーを中心として扱う。ロンドンではニューボンドストリートにショップを構える。赤峰氏はパスポートケースのほか、特注したネーム入りの便箋も愛用。
(注5) 「チェレリーニ」
1956年にフィレンツェにて創業以来、クオリティ重視の姿勢を貫き、熟練の職人が丹念に革製品を作り上げ、各界の名士を顧客に抱える。
経年変化が魅力となる茶革の鞄を愛用する、英国紳士の粋
赤峰氏所蔵の本「BRITISH POLITICAL」より。写真の人物はチャーチル時代の内閣で活躍した政治家、HUGH DALTON。デスクの上に置かれているブリーフケースにご注目を。何年も使い込んだのであろう、深い味わいに変化している茶革が見て取れる。まるで、これまで歩んできた自分の歴史が刻み込まれているかのようだ。特に英国紳士にはモノを長く使い続ける精神が根付く。氏はそうした姿勢をとても粋と感じる。
金具を修理し、寿命を延ばす。
そして、永く愛用し続ける!
少々乱暴に扱っても革はへこたれないが、25年も使っていたら、金具の部分が壊れてしまったそう。赤峰氏は靴の修理で知られるユニオンワークスに依頼し、壊れた金具を取り替えた。「壊れたら修理して使う。使い捨てはしない。この鞄はまだまだ現役だ。今後、この革はもっといい色に変化していくだろう。」
今後の革の味わいの変化が
楽しみなパスポートケース
ロンドンにあるスマイソンで5年ほど前に購入したピッグレザーのパスポートケース。こちらは海外出張のときに使用。同じものを長く使っていたが、ミラノからフィレンツェに向かう列車の中で盗難にあってしまったとのこと。お金よりも、味の出ていたパスポートケースを失ったことが残念と語る。
腕時計よりも魅力を感じるのは
味が出ている茶革のベルト
ステンレスベルトの腕時計は好まない赤峰氏。このティファニーの腕時計は10年ほど前に、ニューヨークのアンティークショップで見つけて購入。革に汗が染み込んで、部分的に色が濃くなる。それは使い続けていれば自然なこと。そういう変化を楽しむことに、革の醍醐味があるのだ。
海外出張時に便利な
仕分けのできるコインケース
フィレンツェのチェリーニで購入。グリーン、レッド、ベーシュ、ネイビー、それぞれのジッパーごとに4室に分かれているので、ユーロ、ポンド、ドル、円の小銭を仕分けられるのが重宝する。普段、赤峰氏は財布を使わないそう。札やカードは特大のクリップで挟んで使用している。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
Y.アカミネのコードストライプのサマージャケット
赤峰氏のプライベートブランド、Y.アカミネの2007年春夏コレクションにラインナップされているジャケット。かつてロンドンで購入したジャケットを今日的に復刻したもの。素材はイタリアのファブリックメーカー、フェルラ社によるもので麻×シルクの混紡。ネイビーのコードストライプが特徴的。デザインは2ボタン、センターベント、ポケットはチェンジポケット付きのスラントで英国調。白シャツにグレーパンツでリゾート風のこなしがおすすめ。ジャケットは日本橋三越本店、他にて展開
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2007年03月24日(土)
OCEANS 5月号 連載#14 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
白シャツの“粋”
白のシャツが粋に映えるのはグレースーツとのハーモニー
何気ないが何気なくない、そんな目標となる白シャツのこなし方。シャツは本文中にもあるように、パリのヴァンドーム広場にあるダンヒルのシャツバーにて購入。ヘビーウェイトのボブリンで、ドレッシーすぎないテイストを醸し出す。ダブルブレストのグレースーツは、マエストロ赤峰氏自身のブランド、アカミネ ロイヤルラインのもの。英国を代表する生地メーカー、ドーメルのハウンドトゥースを使用している。無彩色でのエレガントな着こなしだ。
無造作に見えることが、白シャツをこなす、見よがし方
タイを外し、ダブルカフスを開けて、袖をまくり上げてこなす。こんなラフな雰囲気も白シャツのエレガンスが際立つ。上質な生地であるがゆえ、シワ感が美しい。ポイントになっているスクエアのカフスリンクはオニキス。フランス製で、ブランド名は不明。
シャツ一枚だけを選ぶのならば、それは白に限るだろう。日本では白無地のシャツはビジネス用と狭義で捉えられがちだ。そして、平凡でツマラナイというようなネガティブなイメージを持つ人も多いのではないか。しかし、実は白シャツをエレガントにこなすことこそ、お洒落の究極だと思うのである。それは(注1)ケーリー・グラントしかり、(注2)ハンフリー・ボガートしかり。彼らの過去の着こなしは、白シャツの魅力を今に伝えてくれるよきお手本だ。白のシャツは過度に主張することなく、着ている本人を引き立てる。だから彼らが格好よく映えるのだ。
では、どのような白のシャツを選べばよいのか?日本人の傾向としては、ブランドネームに踊らされるキライがある。しかし、ブランドは選択の“道標”にはなるが、本質的なタグネームに捉われず、モノとしての良し悪しを見極める目を養いたい。白のシャツはその題材としては、もっともハードルが高いアイテムだろう。私の場合の条件は、素材が(注3)ヘビーウェイトの上質なコットンであることだ。それは長く着られ、(注4)着れば着るほどに生地が体になじみ、より魅力的な風合いへと変化していくからである。ハンドの袖付けがどうだのといった、ウンチクのためのディテールには惑わされないことだ。グレーのダブルブレストスーツの中に着ているのは、パリのヴァンドーム広場にある(注5)ダンヒルのショップで6年ほど前に買い求めたシャツであるが、生地はコットンのヘビーウェイトな(注6)ポプリン。何気ないが、実はカラーが切り替えてあるダブルカフスということで、実は何気なくないというのがミソ。質のいい生地はシワ感さえもエレガントに映える。この先、クタクタになって擦り切れても、それがよい味になる。スーツに合わせる白のシャツ。ということだけでなく、これからの季節には当然、シャツ一枚だけで出歩く“シャツが主役”のシーンも増える。そうしたときに、白のシャツ一枚でサマになる着こなしこそ、究極だ。
最後に、コットンのシャツは洗いざらしもいいのだが、私はアイロンをかけることが多い。それはホテルのシーツのようにパリッとした肌触りが心地よいからだ。そして着たシワ感が、ナチュラルで粋に見える。
(注1) 「ケーリー・グラント」
1904年イギリス生まれのアメリカ人俳優。代表作は「北北西に進路を取れ」。スクリーンにおける洒脱な着こなしは、赤峰氏のイメージソースになっている。
(注2) 「ハンフリー・ボガート」
1899年生まれ、ニューヨーク出身の俳優。愛称はボギー。ヘビースモーカーとして知られ、ハットを被り、トレンチコートの襟を立て、タバコをくゆらせる姿が代名詞的。赤峰氏も認める、ハードボイルドな男の格好よさを体現している。
(注3) 「ヘビーウェイト」
糸の打ち込み本数が多く、地厚な生地。そうした目がしっかりと詰まっている生地を赤峰氏は好む。
(注4) 「着れば着るほど」
赤峰氏のモノ選びの基本は、長く愛用できること。着続けることで魅力を増すことに重きが置かれる。
(注5) 「ダンヒル」
“ブランド名に左右されない”というのが赤峰氏の信条。しかし、“背景に由来があるブランドには、必然的によいモノが多い”とも語る。英国を代表するブランドであるダンヒルはそのひとつといえる。
(注6) 「ポプリン」
1685年に登場し、18世紀初頭から一般化した織り方のひとつ。横の方向に畝を作った織物のことで、生地には独特のコシや張りが出る。
1_ 「Bogie」より。
ハンフリー・ボガードの無造作な雰囲気が粋な白のシャツのこなし。
2_ 「CARY GRANT A CELEBRATION OF STYLE」より。
白のシャツ一枚で、かようにも格好よく着こなすことができるという最高の手本。
3_ 「Sinatora」より。
胸元を開けて、袖をまくっている姿が、シンプルでありながらも、実にナチュラルで粋。小物使いもさすが。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
Y.アカミネ コレクションのアイリッシュリネンジャケット
赤峰氏のプライベートレーベルの2007年春夏コレクションで展開しているジャケット。モデル名は「LEE」。素材はざっくりとしたナチュラルカラーのアイリッシュリネン。将校のジャケットがイメージの源になっているミリタリーなデザインで、一枚仕立て、肩パッドなし、バックベルト付き、ベンツは深め。白シャツと合わせるのがおすすめ。
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2007年02月24日(土)
OCEANS 4月号 連載#13 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
グレーの“粋”
今年1月、次の秋冬に向けた服飾見本市(注1)ピッティウォモに行ってきた。クラシックには流行りという概念はないが、旬というものはある。メーカー主導とはいえ、時代性として少なからず意識し、柔軟な姿勢で取り入れることを推奨したい。では、その具体的な内容であるが、イタリアを中心に世界中のメーカーが集うピッティの会場で、注目すべきは(注2)グレーであった。ライトからミディアムまで、(注3)明るいトーンのグレーがこれほどに目立ったことは、かつてないようにも思われる。これは今季の春夏にも通じるトレンドだ。スタンダードなカラーゆえに、着こなしは比較的、容易に思われるが、黒やネイビーに比べて、ごまかしのきかないカラーであることに留意したい。まず、グレーは無彩色であるがゆえに、光の当たり具合やドレープにより、素材感が際立って見える。だからこそ、グレーは(注4)上質な素材であることが他の色以上に求められる。かつて、日本ではグレースーツと言えば、ネズミ色スーツと揶揄されたこともあるが、質のいい素材のピュアなグレーは実にエレガントだ。そして、質のいいグレースーツやジャケットは、旬でありながら10年以上着続けられることも魅力的だ。
上質なグレーのスーツやジャケットを手に入れたなら、次は着こなし方が課題。日本人はとかく、(注5)単品へのこだわりが強い。しかし、スーツやジャケットを着たときのエレガントな見せ方のポイントは、ズバリ色合わせのみ。点ではなく線で見せる、つまり、どのように色を繋げるかということだ。無難なのは黒。ただし、グレーに合わせる場合、黒の分量は少なめに。全体が重くならないようにしたい。そこで、おすすめしたいのは茶だ。その際はグレーと茶のトーンが揃うように心がけたい。自然に色が繋がっているようなハーモニーが、エレガントに見える秘訣。赤や青などアクセントカラーを差し込むなら一色だけ、しかも小さな面積で。ビジネスシーンはもちろんだが、この春夏にはグレーをベースにしたスポーティな着こなしもおすすめだ。今回は参考になるように、2パターンをご覧いただこう。
ドレスマインドを宿した、リゾートでのシックな着こなし
ダブルブレストのジャケットは、赤峰氏がディレクションを手がけるプライベートブランド、Y.アカミネの2007年春夏コレクションからの一着。素材はウールのようにソフトな手触りを得られる平織りのコットン。ラペル幅が広めで、着丈はやや短く、ドロップはきつめ。また、玉縁ポケットで、白の貝ボタンを採用している。イタリアンカラーの白シャツをインナーに、パンツは茶のコーデュロイ。足元はストール マンテラッシのスエードスリッポン。ジャケットのライトグレーのトーンに対して、パンツと靴の茶のトーンを揃え、キレイなグラデーションを作っているのがポイントに。
ダブルブレストのスーツは、ポロシャツを合わせて脱力で!
フィレンツェのテーラー、リベラーノ リベラーノにて8年ほど前に仕立てた6ボタンダブルブレストのスーツ。素材は英国のテキスタイルメーカー、ウィリアムハルステッド社のキッドモヘア。グレーのオーセンティックな一着は、長く使える現役選手、そんな見本でもある。インナーのポロシャツは、シーアイランドコットン製。かつて赤峰氏がディレクションしていたグレンオーバーのもので、28年ほど前から愛用。カラートーンを合わせているとともに、素材感のハーモニーも絶妙。手にはペルソールのサングラス、足元は右と同じスエードのスリッポン。
(注1) 「ピッティウォモ」
毎年1月と6月にイタリアのフィレンツェにて催されるメンズの国際服飾見本市。クラシコ・イタリア協会に属するメーカーを筆頭に、クラシックからストリートまで、世界中のメーカーが集う。それに伴い、世界中のバイヤーも勢揃い。次のメンズファッショントレンドが模索される場所なのだ。
(注2) 「グレー」
1月のメンズミラノコレクションでもグレーが主流。つまりこのグレーのトレンドは今年の秋冬まで続くということ。2006年6月号の本誌でも、「都市型グレースーツ」を特集。
(注3) 「明るいトーン」
グレーはトーンによって、さまざまなカテゴリーに分かれる。特にトレンドとして浮上しているのは、ライトグレーからミディアムグレー。チャコールまではいかないミディアムダークまでの、比較的明るめのトーン。
(注4) 「上質な素材」
特に注目すべきは、モヘアやシルクの混紡されている素材。シャイニーなグレーが、春夏にふさわしい清涼感を演出し、シックな雰囲気を醸し出す。
(注5) 「単品へのこだわり」
スーツやジャケットを購入する際には、どのように着こなすのかを頭の中でイメージすることが重要だ。ブランドのネームに惑わされがちだと単品を選んでしまう!とは赤峰氏の指摘。
写真集「Dressing in the Dark」を見ると、映画のシーンからメンズスタイルが考察できる。グレーの着こなしで参考となるのは、左のジョージ・クルーニーの着こなし。グレージャケットに白シャツが、シンプルでシック。
写真集「ALBUM ANTONIONI」より。参考にしていただきたいのは、椅子に座っているジャック・ニコルソン。グレーのこなしではないものの、脱力しながらもエレガンスをキープしているのが洒脱。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
赤峰氏がプロデュースする「きもの」のスミズーラ会を紹介!
ニッポンの男ならしっかり着こなしたい「きもの」。ということで、今月は赤峰氏がセレクションする「きもの」スミズーラ会「柳裳苑」を読者だけに特別ご紹介!3月11日、12日に東京はホテルニューオータニの芙蓉の間にて開催。会場では洋服と同じ色あわせで、氏が考える王道の5つのコーディネートが楽しめます。紋付き袴、おめし、つむぎ等を全国各地から調達。また、帯や雪駄にいたる小物まで用意し、皆さまのご来場を心よりお待ちしています。(ホテルニューオータニ)
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2007年01月24日(水)
OCEANS 3月号 連載#12 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
モヘアスーツの「粋」
クラシックとは流行に左右されないこと。だから、スーツに関して言えば、若干のバランスを変えることはあっても、いつの時代も基本的なデザインは決まっている。では、スーツを仕立てる際の一番のカンドコロは何か?それは生地である。デザインうんぬんではなく、まずは生地ありき。着こなしも、生地から着想を得ることが多い。
今回、着用している(注1)モヘアスーツも然り。生地はロンドンのリージェントストリートにある反物屋にて手に入れた(注2)ウィリアム・ハルステッド社のデッドストック。このモヘア生地に出会ったのは、およそ6年前。アメリカ映画「北北西に進路を取れ」に出演していたケーリー・グラントのイメージが真っ先に浮かんだ。彼のモヘアスーツの着こなしがあまりにも粋であったのだ。モヘアのよさは、独特のシャリ感と光沢感に尽きる。ギラギラとした光沢ではなく、ナチュラルで控えめであるがゆえにエレガントであり、セミフォーマルに通じるドレッシーな雰囲気を漂わせる。それで清涼感も伝わるから、春夏のスーツとしても最適なのだ。
私はこのモヘア生地を手に入れ、馴染みの(注3)リベラーノ リベラーノに持ち込み、(注4)赤峰モデルとして仕立てた。テーラーのリベラーノ氏とは長年の付き合いにより、あうんの呼吸でやりとりができる。そのような関係は一朝一夕には成り立たないが、作り手と着手、または売り手と着手のコミュニケーションは、とても重要である。さまざまなお店で買い物をするよりも、特定のショップを行きつけとして、さらに特定の定員と馴染みになるのがいい。そうすれば、自分のワードローブを把握してもらえ、アドバイスも的確に得ることができる。服の主治医のような相手を見つけてほしいと思うのである。私にとって、リベラーノ氏はまさにそういう関係にある。モヘア生地を持ち込み、仕立てを依頼すると、まずは着こなし、さらにはどんなシーンで着るのが粋か、などと話しが広がっていく。だから、仕上がりにブレがなく、いつでも満足ができる一着となるのだ。スーツを新調するときは、店員とコミュニケーションを密に。そして、生地に着目して選ぶこと。それが粋な着こなしに通じる。
(注1) 「モヘア」
アンゴラ山羊の毛を原料にした素材で、春夏用のスーツ地として用いられる。独特のナチュラルな光沢感と、涼しげな織り上がりが持ち味。
(注2) 「ウィリアム・ハルステッド社」
1825年創業、英国の老舗ファブリックメーカー。モヘアの生地はとりわけ高い評価を得ている。
(注3) 「リベラーノ リベラーノ」
赤峰氏が全幅の信頼を寄せる、フィレンツェに店を構えるテーラー。赤峰氏は年に数回、現地を訪れ、6、7着のスーツを仕立てている。
(注4) 「赤峰モデル」
赤峰氏がリベラーノ リベラーノにて製作するオリジナルモデル。基本の3ボタン段返りであるが、ラペルがややナロー。パンツの股上はやや深めになっている。
1959年公開、アルフレッド・ヒッチコック監督作品
「北北西に進路を取れ」のワンシーンより。
右の男性は、主人公ロジャー・ソーンヒルを演じるケーリー・グラント。ブルーのモヘアスーツの粋な着こなし例。
モヘアスーツの応用範囲は広い。Vゾーンのこなし方次第で、ビジネスシーンはもちろん、パーティシーンに対応するドレッシーな雰囲気も醸し出す。
これ見よがしにならない着こなしの赤峰氏流の法則
ブルーのモヘアスーツに合わせているのは、ブルーストライプのシャツとネイビーに赤と白のストライプを配したタイ、そして赤のチーフ。全体はブルートーンでまとめ、赤の中でもイタリア語で「血」を意味するサングエイと呼ばれる鮮やかな赤の1色のみをアクセントカラーとして加えている。また、Vゾーンをストライプ×ストライプで着こなす場合、シャツはストライプの間隔が狭く、タイは間隔が広いものを合わせること。それが、メリハリを上手に利かせるコツ。足元はオーセンティックな黒のストレートチップ。それで、セミフォーマルに通じるシックな着こなしが完成する。
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今月の赤峰ワードロープ [OCEANS掲載記事]
'40年代ヴィンテージのウールギャバジンブルゾン
マエストロ赤峰氏のワードローブからピックアップした今月のアイテムは、フランスのとあるビンテージショップにて購入したウールギャバジン素材のブルゾン。フランスの前衛芸術家や映画監督として知られるジャン・コクトー全盛の、'40年代のデッドストック。着丈が短く、リブが長めで、胸のフラップが飾り。フレンチらしいクチュール感な香りが漂う。ラコステのポロシャツ、リーバイスのデニム、足元にはエスパドリーユを合わせて、春先にスポーティに着こなすのが赤峰氏流。
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2006年12月24日(日)
OCEANS 2月号 連載#11 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
スキーをイメージした休日の上品脱力スタイル
マエストロ曰く、「箱根の富士屋ホテルに行く着こなし」。ハンドニッティングのノルディックセーターに合わせているのは、フランスの王道ブランド、シャルベにてビスポークしたガンクラブチェックのシャツ、ニューヨークの古着屋で購入したグレーコーデュロイのリーバイス501、そして今はないフランスのジャンバディというブランドの黒のローファー。写真では見えてないが、ソックスは赤のカシミア。効かせるのは1色だけ、という着こなしの決め事を徹底して守り、ソックスも赤を選んでいる。いつもながらカラーのハーモニー、素材感のハーモニーが素晴らしい。粋なニットの着こなしのよき参考例。
ハンドニットの「粋」
これまでにもクラススポーツの粋について何度か話をしてきました。狩猟、ヨット、テニス、ドライブなど、それぞれのシーンにふさわしいスポーティな着こなしについての・・・。それはアメリカ文化に影響された“カジュアル”とは一線を画すもの。着こなしの背景、そしてそこから生まれる品のよさ=クラススポーツの着こなしです。
ということで、今回はクラススポーツの中でも、スキーに行く時の着こなしについて。中心のアイテムは、ハンドニッティング(手編み)の(注1)ノルディックセーターだ。今年の1月、ミラノにある(注2)ラヴィッツァという店にて購入。私はヴィンテージの服を好む。何度も何度も袖を通し、時間をかけて生まれるエイジング、つまり(注3)着込んだ服の味わいにこそ、粋を感じるからだ。それゆえに、まっさらな新品の服を選ぶときにも、5年着て、さらに10年着て、ヴィンテージのような味が生まれることを想像する。このノルディックセーターもそうだ。今はまだ味わいが足りないが、これから着続けていくことで、こなれ感が増していくことだろう。
次は着こなしについて。私にはある種の決め事がある。それは効かせる色は1色まで、ということだ。ノルディックセーターは白×グレーに赤が効かせてある。その配色を考慮して、パンツはグレーのコーデュロイ、靴は黒のローファーに。そしてシャツはセーターと同じく、赤を効かせた(注4)ガンクラブチェック。このようにまとめれば、決してこれ見よがしに派手すぎることはなく、かつ地味すぎることもない。効かせる色は1色だけ、という決め事は(注5)スーツスタイルでもジャケットスタイルでも通じることである。
よく、服を選ぶ際のコツを尋ねられる。私の場合は店に入ってから、アレコレと迷うことはない。それは自分に似合うもの、そして自分に似合うワードロープを把握しているからだ。アドバイスをするならば、やはりまずはワードロープを検証することをすすめる。よく着る服はどれか?それらの服の共通項を探る。そして着こなしが上手くなるには、人をよく観察して、いいところを盗むことだ。私は映画や写真集からインスピレーションを受けることが多い。粋な参考を見つけること。それがコツになる。
(注1) 「ノルディックセーター」
スキーの本場、北欧のバルト3国、エストニアのブランド、レヴァンディのセーター(日本ではなじみが薄いかも・・・)。編み地がとてもしっかりしているハンドニッティングが特徴。最近の機械で編んだセーターにはない、独特の「温もり」も実に粋なポイント。元は民族衣装のひとつともいえる。
(注2) 「ラヴィッツァ」
赤峰さんも一目を置く、ミラノにあるクラススポーツ・ファッションを中心としたショップ。日本ではなかなかお目にかかれない本格派アイテムが多数、揃っている。
(注3) 「着込んだ服の味わい」
擦り切れていたり、色がかすんでいたり。10年、20年と愛用したアイテムも多い。それが味わい深くて、粋。
(注4) 「ガンクラブチェック」
呼称の通り、クラススポーツのひとつ、狩猟の仲間が集うクラブで愛用されたことに由来するチェック。格子の中に他色の格子を配する二十格子の柄のこと。白、黒、赤茶の配色が一般的。
(注5) 「スーツスタイル」
効かせる色は1色だけという法則は、スーツの着こなしでも同じ。次号ではモヘア混紡スーツを題材に、その具体例を紹介予定。
赤峰のブックコレクションから、フランスのスキースタイルを紹介している「le ski et ses modes」より。
スキーに行く際の、王道の着こなしが紹介されている。
時代が移り変わっても、古臭く見えない、よき参考書。
こちらも赤峰氏の所蔵本、「A HISTORY OF MEN'S FASHION」より。シャツの上にノルディックセーターを合わせている着こなしが、誌面にて取り上げられている。
目指すべきは、こうした気品が漂う雰囲気だ。
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今月の赤峰ワードローブ [OCEANS掲載記事]
バーバリーのバルカラーコート
マエストロのワードロープから披露していただいた今月のアイテムは、12〜13年前にロンドンのヴィンテージショップにて購入した'60年代のバーバリーのバルカラーコート。名品として広く知られるコートだが、やはり'60年代のヴィンテージとなると独特の味わいが醸し出されている。リバーシブルだが、マエストロはチェック側を好んで着用するとのこと。防水性の高いコットンギャバジンは今なお、十分な機能性を発揮。ニットの上に羽織って着ることが多いそうだ。
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