2013年02月04日(月)
朝日新聞be on Saturday “赤峰幸生の男の流儀” 『見直されるツイード』 2013年2月2日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
1年ほど前から、ざっくりとした味わいのツイード素材が見直され、今季はスーツやジャケットが数多く登場しています。丈夫で長年愛用できる点が、使い捨てのファストファッションに疲れ、「スローウエア」を求める現代の心理に響いているのでしょう。この流れは当分続くとみています。
スコットランドやアイルランドといった寒冷地で育った羊の毛はバリバリとしていて、紡いだ糸も太い。織り上げた生地の表面を、昔はアザミのトゲでかいて起毛させ、温かみのある風合いを出したのがツイードです。保温性が高く、歴史の上では狩猟やゴルフなど、スポーツの場面で重宝されてきました。大自然に抜群になじむ装いを作ります。
色は枯れた草原を思わせるベージュが基本。スコットランドでは、そこにさまざまに染めた糸を織り込んで固有のチェック柄、ハウスチェックを作り、家紋のようなものとして受け継いできました。
かつてのごわごわとして硬いツイードと、現代のものは似て非なるもの。改まった場を除き、スポーティーなドレススタイルとして、仕事から休日まで幅広く活躍する素材に生まれ変わっています。
コーディネートで一考していただきたいのは、素材感を合わせること。中にシャツを着る際には、ドレッシーなブロードではなく、綾織りやオックスフォードなど、表情のあるものを選ぶ。ネクタイもツルツルとしたシルクではなく、ウールを選択。パンツも起毛したフランネルのグレーがいい。これでこなれ感のある着こなしが完成します。
何年も着て、ひじの生地が薄くなったら、レザーのパッチをあてる。そんな服の愛し方ができたら、本当に粋ですね!
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2013年01月21日(月)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「冬はフランネルであったかく’』2013年1月19日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
一年で最も寒い時期になりました。ぬくもりを求める方にぴったりのスーツ素材、「フランネル」について今回はお伝えしましょう。
フランネルとは略してフラノとも言い、生地の表面を起毛させたネル仕上げ素材。弾力があって保温性に優れています。もともとはテニスの白いスラックスなど、スポーツをしたり、見たりする時のために生まれました。ですからあくまでスポーティーでドレッシー。仕事の場はOKですが、本来はパーティーなど、フォーマルな場面で身に着けるものではないことは知っておきましょう。
フランネルの中でも基本とされるのが、着回しのよいミディアムグレー。ネイビーはブレザーによく使われます。原毛の挽き方で、生地の表情がザラッとした、言わば「粗びき」から、きめの細かい「細びき」までありますが、個性的なスーツが目立ち始めた最近の流れなら、粗びきの方が面白いかもしれません。「チョークストライプ」と呼ばれる太めの白いラインが入ったものも、フラノなら微妙なかすれ具合でカッコイイ。
毛羽だった表面仕上げだから、スエードの靴とは抜群の相性です。そしてスポーティーなので、ネクタイを締めず、タートルネックのセーターを合わせてもしっくり決まる。あえてコートは着ず、アクティブにレザー手袋、流行のキャスケットといったコーディネートはいかがでしょう。
春には白フランネルのバミューダパンツに洗いざらしのオックスフォードシャツ、スニーカーといった合わせも。まだちょっと気が早いですね。まずは日本には厳しい冬があるからフランネルを楽しむ。そんな過ごし方が粋ですね!
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2013年01月09日(水)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘賢く暮らす時代に’2013年1月5日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
新年明けましておめでとうございます。現在の日本では、大きな経済成長は期待できず、政治も混迷が続いています。ファッション界では、雨後の竹の子のように様々な「トレンド」ができては色あせての繰り返し。ファッションの追いかけごっこもここまで来ると、何を礎に服を着るべきか、迷う方も多いのではないでしょうか。
これまでは、なんでもあるという「百貨」を消費した時代。それが好みの多様化とともに、「五十貨」「三十貨」「十貨」を深掘りする時代に入ったと考えています。使い捨てが行き着いて、賢く、丁寧に暮らしたいという欲求が高まり、質が高い物を長く着ることが見つめ直されているように思います。
信じられる服を、信頼できる販売員から求めたい。できれば、自ら作り消費者に直接手渡すような、作者が見える服が欲しい。買い物なら中身がよくわからない福袋には手を出さず、必要なものを一点ずつ大切に買っていくような感覚です。5年、10年と着込むほどに味が出て、一体感が感じ取れる服をぜひ選び取っていただきたいと思います。
流行は追いかけるのではなく、一つの目安として受け止めることが大切です。欧米の丸写しではなく、日本人としての装いを考えることも求められているようにも思います。「オシャレ」と「洒落る」とは、似ているようで違うものでしょう。
年賀状は、一人ひとりに心を込めて筆を走らせた和紙の手作りと決めています。メールも便利ですが、日本人のけじめとして手書きでしたためる。そんな暮らしをすることが大事だと、改めて考えた年末年始でした。
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2012年12月15日(土)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「トニック」という服地について’』2012年12月15日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
年末ともなれば会食や会合が多くなります。私が公の席でいつも身に着けるスーツと言えば「トニック」。1957年に仏・ドーメル社の4代目、グザビエ・ドーメルが羊と子ヤギの毛(モヘア)を混紡させて作り上げた素材です。完成を祝して「ジン・トニック」で乾杯したことから、この名が付いたと言います。
そもそもの「トニック」を辞書で引くと、「強壮剤、肉体的精神的に元気づけるもの」とあります。スーツ素材のトニックにはピシッと張りがあり、スチームローラーで表面の粒子を焼くことから渋い光沢を放ちます。日本では夏の素材と誤解されていることもありますが、仕事やハレの席で年中活躍します。パーティーでトニックのグレースーツを身にまとい、白いシャツにブラックタイを締めれば、身も心もバチッと決まります。
トニックは60年代には紳士の正装として欠かせないものとなり、世界で1千万メートル以上が売れたといいます。各メーカーがモヘア混の開発を後追いし、現在でも混紡の比率を変えながら、世界中で愛され続けています。
私は生地を探求する中でグザビエと出会い、英・ヨークシャーの生産現場を訪問するなど、親交を温めてきました。今春、彼が亡くなって日本で開かれたしのぶ会には、ビンテージとなった私のスーツを3着、会場に飾ってもらいました。もう10年以上着ているものですが、重みがあって丈夫な生地の魅力は今なお色あせていません。
「革新なくして未来なし」。その精神は5代目のドミニクにも受け継がれています。スーツを見るとき、そのデザインに目を奪われがちですが、技術の粋を集めた服地にもご注目頂きたいと思います。
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2012年12月01日(土)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘コートが気になる季節’』2012年12月1日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
気温が20度を下回ると、コートの季節。今回は、男のカッコイイコート姿についてお伝えしましょう。
コートは貴族の日常着を起源とするものと、軍服に起源するものの二つに分けられます。特にトレンチコートは、もともと兵隊が雨風をしのぐためのもの。ウエストに絞りがなく、コートの上から幅広のベルトをキチッと締め上げて着用していました。
一方、礼服用のチェスターフィールドコート、スポーツ観戦用のカバートコートやポロコートなどは英国貴族の装いを起源とします。よりドレッシーな要素が強いものだと言えます。
現代はその違いがかつてほど明確ではありませんが、歴史を知って身にまとうことで、より深みのある着こなしが生まれることでしょう。
この冬は素材の値段や円高を映して、海外製品がかつてより求めやすい価格になっていて、チェスターフィールドやアルスターコートのような、ハイウエストで絞られたひざ丈のコートが人気です。一時、「ショートコート」が流行し、これまでもひざ上の丈が主流となってきましたが、少し丈が長くなってひざにかかる程度のものも増えてきました。またチェスターフィールドはダブルブレストの製品が目に付きます。
ここにはクラシックに回帰する潮流が見て取れますが、男性の装いが更にエレガントになり、シックを感じさせる流れだと言えましょう。
そして男のコートの決め手は何と言っても後ろ姿。ウエストの絞りや、長めの丈で腰から裾にかけてゆったりと揺れるフレアが、何とも言えない色気を醸し出しますヨ!
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