AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2012年09月08日(土)

朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘センスは染み込ませるもの’』2012年9月8日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]

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 「ファッションセンスを磨くにはどうしたらいいのか」と人から尋ねられれば、「五感を総動員し、まずは感じてください」とアドバイスするようにしています。

 現代の男性は、ゴッホやフェルメールの名画を見ても、数十億円といったお金の尺度でとらえてしまい、素直に「美しい」「きれいだ」と感じる態度を失ってしまっていませんか。服でもまず、見て美しいと感じるもの、触って心地よいものを選ぶ。モノに対するエモーション、感動を大事にしていきましょう。

 では自分の感性をどう育てていくか。

 私は毎朝5時に起きて、近くの川辺を犬と散歩します。のんびり雲の動きや空の青を眺め、葉の色の違いを一枚一枚確かめ、小鳥の鳴き声を楽しんでいます。

 また買い物に出掛ければ、八百屋や魚屋で商品の色や形を見るのが大好きです。デパ地下の食品売り場では「試食荒らし」に走り、とにかく食べてみることをよくやっています。生活の身近なところから感じることが大切です。

 仕事柄、年に4回訪れる欧州では、時間の許す限り、2時間でも3時間でもカフェで地元の人たちの服合わせの技を見ています。
 

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イラスト・YAB

 多くの方はファッションセンスを有名ブランドの服を着ることだと思っているかもしれませんが、それは違います。センスとは、磨くものではなく、よく感じて染み込ませるものなのです。何度となく、見たり、聴いたり、味わったり、触ったりを繰り返すことで板についてくることなのです。

 さあ、パソコンの電源をオフにする日を決めて、美しきものを感じ取ってください。
 

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*朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

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2012年08月25日(土)

朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘茶の靴のススメ’』2012年8月25日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]

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 かつての日本では、ビジネスシーンにおける靴は「黒」と相場が決まっていましたが、最近は茶色の靴を着用する人の割合が増えてきたように思います。暑い季節に黒はいかにも重い。茶色をぜひ薦めたいと思います。

 洋装の本場である欧州においては、年間を通じて茶色が日常靴の基本。大地の色ですから自然で、日常的に活躍する少し明るめの紺色やミディアムグレーのスーツ、スラックスと抜群に相性がよいのは茶系の靴なのです。

 靴を選ぶ時は、最低5年は履けるものを選びましょう。私は英国製を中心に、10年以上愛用することが多い。割高に感じる人がいるかもしれませんが、15年以上も履くと結果的に割安になります。

 デザインはトレンドにとらわれず、シンプルな自然体のデザインを選ぶべきでしょう。数年前に流行した、極端に先端のとがった靴などの「時代のはやり」を消費する必要はありません。

 ひも付きやローファーモデルをカーフ(子牛革)やスエード(裏革)で。仕立てがしっかりした靴ほど最初はやや硬く感じますが、荒馬を乗りこなすように時間が経つと自分の足になじんできます。

 さて、皮物の「三種の神器」と言えば、靴、ベルト、カバン。「四種」になれば時計のベルトまで。同じ茶色をあわせた上に、濃淡のトーンや素材も統一するとこなれてみえます。

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イラスト・YAB

 付言すれば靴下は、スラックスか靴のどちらかと色をそろえるようにします。色の数を絞ることによって、足元がスッキリとして見栄えがいいのです。

 
「男のおしゃれは茶の足元から」を忘れずに。茶系の靴を履きこなして粋に参りましょう。

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*朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

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2012年08月04日(土)

朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘自分のスタイルをさがして’』2012年8月4日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]

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 こう暑いと「ダラ〜」としてしまっている人はいませんか?特に黒いカバンのひもを長く伸ばし、片方の肩に「だらり」とかけている姿はいただけません。日本の崩れたサラリーマンを象徴するスタイルのように思います。

 意外に思われる方もいるかもしれませんが、普段の私はスーツを着ていてもナイロンのデイパック(小型のリュックサック)を愛用しています。それを両肩で背負うのではなく、片側でかつぐ。活動的に歩き回るのが好きな私の生活スタイルに、とてもマッチしているのです。

 ただし、スーツにはアウトドアテイストが強いものは似合いません。使い込んでいるのは、フランスのエルベシャプリエというブランドで、シンプルなデザインでロゴも控えめ。茶、黒、グレーの3色を、服の色に合わせて使い分けています。

 かつては高級とされるブランドのバッグを持ったこともありました。ただ、試行錯誤の末にたどり着いたのが現在のリュックスタイル。「ブランド軸」ではなく、「モノ本位」「自分本位」で選択することが大切だと思います。

 「スーツにはかっちりとしたブリーフケースが無難」「地味な黒が汚れも目立たなくていい」といった選び方をしていませんか。私はかばんの選択、その持ち方もゆるがせにしたくないと思います。
 

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イラスト・YAB

 世の男性で、身につけるものについて「何でもいい」「考えるのが面倒」と口にする人ほど、食べるものや人生そのものも大したことがないと感じています。一度しかない人生ですから、衣食住、そして計画して出掛ける旅や選び取る本に至るまで、その楽しさをかみしめることこそが充実した「粋な人生」につながっていくのではないでしょうか。

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*朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

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2012年07月21日(土)

朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘夏に見る「ニッポンの誤解」’』2012年7月21日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]

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 最近は真夏にネクタイをしている男性を見かけることが少なくなりましたが、それでも毎年暑い季節に首をかしげるのが、「白っぽいVゾーン」です。テカテカしたサテン風の素材で、白がらみの甘い色感を多用しています。しかし、こうした日本人独特な色づかいのネクタイでは、顔まわりがぼやけて締まらない。ネクタイをアクセントにしてビシッと決めてください。

 この季節にお薦めしたいのは、水玉がプリントされたネクタイです。明るいブルーに白の水玉が入ったものが、爽やかさを感じさせ、暑い季節の「基本のキ」であります。もちろん、グリーンでも、茶色でも自分の好きな色で構いません。水玉が小さくなれば、よりシックな印象をもたらします。

 ほかにも、例えば春から夏にかけての生地なら、ヤギの毛を使った「モヘア」とウールの混紡が折り目正しいシャッキリ感があって望ましいとか、夏場なら「シアサッカー」や「コードレーン」といった生地がふさわしいといった、基本的な理解が日本では浸透していないように思います。
 

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イラスト・YAB

 こうした言わば「持つべき服の楷書体」を学んでいきませんか。年齢や経験を重ねるうちに、「楷書体」から「行書体」へと学びが移り、その後に自分なりの解釈を加えた「草書体」になる。そうした成熟が装いにもあって欲しいのです。そのためにもまずは誤った認識は捨てて、「楷書体」の理解を進めていきましょう。

 夏のセールの真っ最中、基本の「キ」のお買い得をそろえるチャンスです。改めてグレー、青、茶の「男の三原色」を思い浮かべてください。良いお買い物を!

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*朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

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2012年07月07日(土)

朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘暑い季節の大人カジュアル’』2012年7月7日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]

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 前回は夏のオフィスシーンにおける装いについて、「クールビズありきではなく、会う人への気持ちを表現したい」とお伝えしました。今週はオフの装いについて考えてみたいと思います。

 私が暑い季節のカジュアルの基本にしているのは、ボロシャツ。Tシャツより、やはり襟の付いたものが大人にはふさわしいと思います。特に歴史のある「ラコステ」を愛用していますが、裾を出して着ることが多いので、丈の長さには気を使います。ちょうどお尻のトップにくるぐらい、あるいは少し短いぐらいに、場合によっては直して着ています。身幅もほどほどピタっとしたものを選ぶようにしましょう。ダラリとした印象を与えてはなりません。

 そして、男を最も美しく見せてくれる上着は、盛夏においても活用しています。コットンあるいはリネンのものをさらりと羽織れば、体形をカバーしてくれる上に、簡単にスタイルが決まります。

 下半身には、ショートパンツやバミューダパンツをもってくることが多いのですが、細畝のコーデュロイのジーンズなんかもいいと思います。

 そして活動的に過ごしたいので、足元にはスニーカー。デザインし過ぎたもの、大きさを感じさせるものは避け、コンバースのオールスター(ローカット)やイタリアのスペルガといったものを薦めます。ポロシャツの色に合わせて、白、生成り、紺、黒あたりがいいでしょう。
 

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イラスト・YAB

 「オフだから何でもいいや」なんて、もうやめ。夏の海を思わせる明るいブルーのニットジャケットに、白い波頭に寄せて白色ポロシャツ、砂色ベージュのショートパンツなんてどうですか? 自然からの発想でいかにも粋ですね!

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*朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。

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赤峰 幸生 (あかみね ゆきお)

● イタリア語で「出会い」の意のインコントロは、大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年秋冬からは『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。平行して、(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界を舞台に活躍。 Men’s Ex、OCEANSに連載。MONOCLE(www.monocle.com)、MONSIEUR(www.monsieur.fr)へも一部掲載中。

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