2006年08月24日(木)
OCEANS 10月号 連載#7 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
ハンティングジャケットをタイドアップで粋にこなす
ジャケットはハリスツイードのエクスクルーシブ生地を使用したY.アカミネの2006年秋冬コレクション。マチ幅のあるフラップ付きのアウトポケットが特徴。白シャツに合わせたチェックタイは、ロンドンのボンドストリートにかつてあったツイードの生地屋「W.Bill」のもの。スコットランド製で、柄の名称はズバリ「GUNN」。ハンティングジャケットに似合う、名パートナー。パンツは重厚感のジャケットに合わせて、ウェイトが重いグレーフランネルを。シューズは17年前くらいに購入した「チャーチ」で、編み上げのブラウンストレートチップブーツ。今年の秋冬の赤峰氏流、ハンティングスタイルだ。
ハンティングスタイルの「粋」
カジュアルウェアという言葉が好きではない。アメリカから影響を受けたこの言葉が広範囲で使われるようになり、「カジュアルウェア=略式・簡略=自由でなんでも許される」と解釈されている。そんな、服の作法を知らない、知ろうともしない人がいるから、好まないのだ。私は日本人が欧米のマネをすることを勧めるつもりはまるでない。しかし、洋服が生まれた背景に敬意を持ち、当たり前のことは当たり前に取り入れるのが筋だと思っている。例えば、イギリスやフランス、イタリアの人々は休日の服装をカジュアルなどとは定義しない。スポーツスタイルとして捉えている。テニス、ヨット、ゴルフ、ポロ、スキー、ドライビングなどのクラススポーツのための服装。従って、それぞれのクラススポーツのためのスタイルには、その場にふさわしい作法、つまりT.P.O.が求められる。スポーティであっても、あくまでその世界での正装なのである。
さて、そうした事柄を踏まえて、秋冬のクラススポーツスタイルとして粋だと思うのはハンティングだ。スポーツも季節が大事で、春(注1)夏はマリン、秋冬はハンティングとなる。イタリアでは狩りを(注2)カッチャというが、ハンティングは秋冬のクラススポーツの代表。フランスの「(注3)アダム」でも、秋冬号は必ずハンティングスタイルを掲載する。実際に狩りをすることではなく、あくまでもファッションとしてだが、メンズクロージングは服の生まれた背景、その名残をデザインとして取り入れ、あくまでも本流の香りを漂わせるのが粋だ。例えば、ボタンダウンシャツはポロ競技において、襟が邪魔にならないようボタンを留めたのが始まりであり、ポロシャツは言うまでもなくテニスが発祥。クラススポーツスタイルとは、別の言い回しをするならルーツファッションともなるだろう。そして、歴史上でそうした装いが最もうまかったのは、かの(注4)ウィンザー公。その影響は今でも多大だ。私はこの秋冬、ハンティングの名残であるディティールをデザインとして取り入れた、(注5)ハリスツイードのハンティングジャケットを着る。それは流行うんぬんではなく、いつもの流儀であり、これからも変わることのない私流の着こなしだ。。
(注1) 「夏はマリン」
小誌9月号でも特集。夏はクラススポーツのひとつであるヨットが、粋な着こなしのための要素に。
(注2) 「カッチャ」
イタリア語で「狩り」の意味。「カッチャトーレ」となると「狩人」。イタリアでも英国調の着こなしが正統として好まれ、ハンティングがカッチャスタイルとして定着している。
(注3) 「アダム」
1930〜70年代にかけて粋な男性のバイブルとして支持されていたフランスの雑誌。イラストをとおして解説されていた。
(注4) 「ウィンザー公」
英国王室の中だけでなく、広く史上無二のウェルドレッサーとして語り継がれる、エドワード8世。
(注5) 「ハリスツイード」
ツイード素材で有名なスコットランドの生地メーカー。
赤峰氏が所有する「アダム」より。このように秋冬になるとハンティングスタイルをイラストで紹介していた。粋な男のスタイルの見本として参考になる、まさにファッションバイブル。
こちらの絵本も赤峰氏の所有。英国の伝統的なハンティングスタイルが描かれている。
アメリカナイズされたハンティングスタイルなら1953年に製作されたジョン・フォード監督、クラーク・ゲーブル主演の名作映画「モガンボ」がいいお手本。アフリカのジャングルを舞台に繰り広げられる恋愛・冒険娯楽大作だ。
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 0 )