AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2007年09月06日(木)

MEN'S EX 10月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.17 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
自分のスーツスタイルの見つけ方

男だったら、いつかは自分のスーツスタイルを築きたいと憧れるものです。が、当然ながら、それは一朝一夕で身につけられるものではありません。お2人は、自分のスーツスタイルをどのように築いていったのでしょう?自らの経験を語っていただきました。近道はあるのでしょうか?

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■(写真右)赤峰幸生氏
・アカミネ ロイヤルラインの白のポプリンシャツ
・タックスの'60年代製ジャカードタイ
・アイリッシュリネン カンパニーのチーフ
・リヴェラーノ&リヴェラーノのグレイフランネルスーツ
・ジョン ロブのシューズ

■(写真左)菊池武夫氏
・五大陸ボウタイ
・ダンヒル シャツバーのシャツ
・アンティークのシルクストールをチーフ使い
・ロロ・ピアーナのスーパー120'sを使用した40カラッツ&525のオリジナルスーツ
・デュカルのシューズ



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ビシッと着たスーツスタイルは実に自然体でもの凄い貫禄があります。
まさしく男惚れするカッコよさ!
スーツに対する自論を展開してくださり、大いに勉強になりました。

■それぞれ自分を象徴するスーツの素材・色柄がある
菊池  随分前からスーツを着ることってほとんどなかったんですけど、ここ最近なんとなくスーツを着たいなと思っているんです。僕はストレートな着こなしができないので、ついついひねってしまうんですけど、そのぶんベースとなるスーツはオーソドックスなほうがいいですね。僕なりのコーディネイションで、らしさを出せればいいなと思っています。
赤峰  らしさといえば、今日はボウタイが見事に決まってらっしゃいますね。
菊池  ボウタイは前からしたいなと思っていて、僕よりも振れ幅があって面白く着ている人たち、チェックのジャケットにボウタイみたいな感じの捉え方で、着こなしてみたいなと思っていたんです。最近は海外に買い付けに行っていても、大きな流れではファッションがあまり変わっていないですから。どうにかして違う方向にもっていこうとしたときに、一番面白いのはスーツかもしれないって思ったんです。でもまだ僕自身の中で掴まえきれていないので、しばらくスーツを着てみようと思っています。
赤峰  読者の中心層のビジネスマンは何着もスーツを持っているわけですけど、彼らの中でスーツを着ることとか買うことの意識が変わってきているんじゃないかと思うんです。今までは極端な話、3つボタンのサイドベンツだったらまず無難、みたいなのがありましたよね。ただ、そういうのも一巡してしまって、(注1)クラシコイタリアも終わってしまって、消費者は今、上質感のある日常のものをベーシックに回帰して着ることを求めているんだと思うんです。ベーシックな日常に自分なりの変化をどうやってつけるのかということに、消費者の意識が傾いているのかなと。今までは生地メーカーやブランド名が上質の代名詞でしたけど、もっと全体で判断する時代になってきましたよね。
M.E.  なるほど。
赤峰  今日着ているグレイもそうですけど、(注2)より上質性の高いグレイとか上質性の高いネイビーとかね。ごくごくフツウの色にしか見えなくても、その中でも微妙な差があって、いろいろな質があるんです。
菊池  今日着ていらっしゃるずっしりしたグレイフランネルは、凄く赤峰さんっぽい感じがします。赤峰さんと聞いてイメージする素材として成立していますよね。
赤峰  ありがとうございます。ミディアムグレイのフラノは最も好きな素材のひとつなんです。菊池さんもいつもおっしゃられていますけど、スーツって、新しく作ったふうに見られるのが一番恥ずかしいんですよね。
菊池  そうなんです。私の場合、今着たばかりっていう感覚を自分で意識しだしたら、どうにも落ち着かなくなってしまいます。たとえ新調したものであったとしても、あたかもずっと着ているように見せたいっていうのがあります。だから、極端な話、スーツを洗濯機で洗ってしまうことだってあるんです。
赤峰  タケ先生はストライプっていうイメージがありますけど。
菊池  ストライプは大好きで、今日着ているような紺のストライプはとにかく多いですね。あとは、グレイ系、それにサキソニーかフラノが多いです。今日もグレイを着るかこれを着るか迷っていたんです。結局のところ、昔から同じようなものばかりを選んでしまっている。黒はほとんど着なくて、ダークスーツだったら、自分の場合はほとんどが紺。
M.E.  自分なりの色というか、イメージを作ることが大切なんでしょうね。
赤峰  そうなんです。ひと口にグレイといっても、質とか厚み色とか、もの凄く奥が深くて、それを自分の中で極めていくのが面白いんです。例えばフラノって毛羽があるじゃないですか。僕の大好きな打ち込みのしっかりしたミディアムグレイのフラノの中でも、着込んで毛羽が取れてきたフラノのほうが、自分にフィットしているっていうか、いいアジが出ていてもっと好きなんです。
菊池  10年くらい着込んでいくとそうなりますよね。
赤峰  そうなんです。そのくらい着込んでいくと、本当にいい感じになってきます。ただ、映画の中とかで、着ているのは新調したスーツなんだけれど、長年着込んでいるかのような雰囲気を出している俳優さんいるじゃないですか。ヴィンテージだろうが新調したものだろうが、見た人からはわからないっていうのが、僕の中での理想なんです。いかにもヴィンテージを着ているよ、新調したものを着ているよっていうのはちょっと嫌ですね。

■歳とともに削ぎ落としていけばいいだけのこと
菊池  自分の好きなスタイル、生地、色が1つ見つかれば、そこからスーツスタイルの奥行きが増していくと思うんです。自分が着ていた服はほとんど捨てていないので、さすがに20代の頃に着ていた服は着られないですけど、20年前、30年前の服だったら今でも着られます。好きなスタイルが変わっていないっていうのもあるかもしれません。その代わり春夏だろうが秋冬だろうが、傾向が似てしまうんです。
赤峰  私も同じです(笑)。今日着ているストライプも、夏用もあれば3シーズン着られるのもあるし、本当同じような柄が自然と揃っているんです。
菊池  ちょっと話は脱線してしまいますけど、服を着るときって、ほとんど上体や胸や肩のあたりで決まってしまうと思うんですよね。それをちゃんとするには肉体的な問題を気にしなければいけないと思うんです。自分たちが若い頃に一番気になったのは、素のカラダつきなんですよね。今の若い人たちって上手く服を着ていると思うんですけど、あまりそういうのを気にしていないと思うんです。どんな体型をしていてもいいと思うんですけど、洋服に着られるのではなく、着るほうにならなければいけないわけですから。そういう意識は、特にスーツの場合、強くもっていたほうがいいと思います。
赤峰  あと、スーツは肩が命っていうじゃないですか。上手に着る人は上着をしっかり肩に乗せているというか、安定感があるんですよね。下はヘラヘラしていてもいいんだけど、肩がしっかり収まっていることが大切なんです。
菊池  ショルダーラインっていう言葉があるくらいですからね。
赤峰  スーツを上手に着ている人ほど肩のラインがきれいに出ていますよね。上下同じでありさえすればスーツだと思って着ている人との差は、歴然としています。
菊池  それはいえるかもしれません。
赤峰  今まで着てきた20年前、30年前のスーツを、ふと思い出すことがあるんです。その中にはもちろん買って失敗したものもありましたけど、失敗の繰り返しの数ほど、そこから学んで上手く着こなしがでいるようになるものだと思うんです。安全や無難ばかりを求めてしまうと、着こなすっていう感覚が薄れてしまいますよね。
菊池  自分のスタイルを築きたいんだったら、やっぱり繰り返し着るしかないんじゃないでしょうか。自分の分身となるような洋服と、ずっと付き合っていくことが大切だと思います。
赤峰  80歳とか90歳で(注3)タイを凄くきれいに結んで、仕立てたスーツやジャケットを着ているお爺さんとかいるじゃないですか。もう「ごめんなさい」、「お見事」って感じですよね。
菊池  敵わないですよね。今になって、若い頃はなんでこんな格好をしていたんだろうって思うことがあるんですけど、とはいえそこから学ぶことも多々あったように思います。今の人たちは、世間的なことをあまりにも先に計算しすぎてしまっているんです。それだと、あまり面白くない。
赤峰  僕も今のスタイルに行き着いたのは50歳を過ぎてからですから。今思えば、50歳までは学習期でした。歳とともに削ぎ落としていけばいいわけですから。若い頃は突っ張っていろいろ着てみるのもいいのでは?




(注1) 「クラシコイタリアも終わってしまって」
クラシコイタリアがブームのときは、クラシコイタリアのみが正義みたいな風潮がありました。が、市場が成熟した現在は、もっと広い意味でクラシックなスーツが国に関係なく受け入れられるようになりました。スーツは次のステージへと突入したのです。

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(注2) 「より上質性の高いグレイとか上質性の高いネイビーとか」
左は1月号でご登場いただいたときの写真。赤峰さんはグレイのフランネル、タケ先生はネイビーのフランネルのスーツを着ています。ベーシックなものこそ、そこに求めるべきものはまず上質であるというのは、お二人の意見の一致するところです。

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(注3) 「タイを凄くきれいに結んで、仕立てたスーツやジャケットを着ているお爺さん」
タイドアップ姿がお洒落なお爺さんといえば、左の写真に写っているA.カラチェニのマリオ・カラチェニさんや、チェサレ・アットリーニさんが最初に思い浮かびます。お二人には、お洒落を超越した何かを感じずにはいられません。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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MEN'S EX 9月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.16

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