AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2007年05月07日(月)

MEN'S EX 6月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.13 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
トレンドのライトグレイの取り入れ方

今回のBe Buffalo Forever!は、ハロッズのクリエイティブ・ディレクターとしてご活躍の坂田真彦さんをゲストにお迎えして、3者対談を行いました。テーマは、今季の流行色であるライトグレイの取り入れ方。日本人には難しいとされてきたこの色も、3人にかかれば、「なるほど」と頷くことしきりです。三者三様の解釈も伺え、多彩な話題で実に有意義なトークでした。

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■(写真右)菊池武夫氏
・ボルサリーノの帽子
・ロンドンで購入したシルクのスカーフ
・40カラッツ&525の2006年秋冬のシャツ
・40カラッツ&525の今季もののカーゴパンツ
・アディダスのスニーカー
 




■(写真中央)坂田真彦氏
・ハロッズのモヘア混ウールのビスポーク
・ハロッズのタブカラー&ダブルカフスのビスポークシャツ
・ハロッズのタイ
・イタリアのリッチオーネが'70年代に仕立てたウエストコート
・ジェフリー・ウエストのチャッカブーツ
  
■(写真左)赤峰幸生氏
・シャルベでビスポークしたポプリンのシャツ
・ニッキーのタイ
・Y.アカミネの今季もののコットンジャケット
・アカミネ ロイヤルラインのヴィンテージ フランネルのパンツ
・アラン・マカフィーの'60年代製白のヌバックシューズ

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撮影の合間の雑談では、10年前のN.Y.の古着屋話を手始めに、「今のファッションシーンは、N.Y.がアツい」という話題で盛り上がっていました。

■ビジネスで着られるかどうかだけで服を選ぶのではない
菊池  グレイという色はもともと好きで、特にライトグレイやミディアムグレイといわれている色がいいですね。黒や白って確かになんにでも合うんですけど、そのどちらでもない気分のときにこのあたりの色がハマってくるんですよ。だから2年前くらい前でしょうか、ライトグレイやミディアムグレイを中心にいろいろと服を作ってみたんですけど、売れなかったですねぇ(笑)。スーツもありましたけど、全然売れなかった。
赤峰  日本の場合、グレイの人気は高いんですけど、やっぱりチャコールグレイなんですよね。日本は目立たないことが美徳とされる社会ですからね。ビジネスウェアとしてのスーツを考えたとき、ライトグレイやミディアムグレイでは目立ってしまうみたいで、敬遠されるようです。
坂田  もったいないですよね。ビジネスで着られるかどうかだけで服を選ぶのではなくて、遊びで着るスーツというのもあるわけですから。
赤峰  そうなんですよ。服を着る愉しみを狭めていますよね。そもそもグレイって肌の色を問わない、凄く合わせやすい色。色白の人でもライトグレイやミディアムグレイを合わせてみるとキレイで品がいいですよ。
菊池  合いますね。日焼けしたらしたで、今度は全体的に締まって見えてバランスはいいですし。
坂田  僕は、ライトからミディアムにかけてのグレイって男っぽくて都会的な色だなと思うんですよ。しかも、今日着ているスーツもそうなんですが、モヘアみたいに光沢感があると余計そういった雰囲気が出ますよね。ビジネスの現場ではあまり目立たないほうがいいのかもしれませんが、それでもギリギリのところで自分を主張する姿勢はもっていたいですね。
菊池  そういう意味では、坂田くんの格好は似合ってる。白のベストを入れたモノトーンな感じがシック。
赤峰  モヘアの光沢感が今の時代感と合ってますよ。洒脱というのかな、クラシックなところをビシッと押さえつつ、ちゃんと遊びが入っている。
坂田  ありがとうございます。お2人からそんなことを仰っていただけると、恐縮しちゃいますね(笑)。
M.E.  では、坂田さんから見てお2人の格好はいかがですか?
坂田  本当にカッコいいと思いますよ。勉強になります。例えば赤峰先生がお召しになっているオフホワイトのパンツ。グレイと組み合わせると凄くエレガントですよね。
赤峰  いわゆるエレガントスポーティなんですよね。ジャケットがライトグレイじゃないですか。これがダークになるとドレッシーな感じが出てくるけど、ここまで明るいとスポーティさ、軽快さが出る。
菊池  1930年代のテニスルックのスタイルという雰囲気ですね。
赤峰  さすが菊池先生。まさしくそれをイメージしました。テニスクラブのメンバーがするジャケットスタイルですね。
坂田  タケ先生はシャツが印象的です。それはシルクですよね?
菊池  そう。
坂田  ウエイト感を含め、ライトグレイってドレープした柔らかい感じが凄く合うんだってことがわかりました。レディスではよく見るんですけど、メンズでも取り入れられるんですね。自分の頭の中にはなかったので、とても新鮮でした。
菊池  確かにこういうのってメンズにはない。シルクならではのドレープの感じはキレイだよね。

■グレイは、組み合わせ次第で実におもしろい表情に
赤峰  グレイといえば“タテ目”の時代のベンツのマットなグレイ。あれは凄くキレイでした。
菊池  はいはい、わかります。メタリックじゃないヤツですよね。確かにカッコよかった。
赤峰  ボディはグレイなんだけど、中のシートは赤だったりして、あの色のコンビネーションの美しさというのは今でも記憶に強烈に残ってます。先ほど気付きましたが、菊池先生も靴下を赤で合わせていらっしゃいますよね。グレイと赤の組み合わせはやっぱりカッコいいですよ。
坂田  わかります。僕も'50年代の、グレイとサーモンピンクからレッドの色合わせが好きなんですよ。グレイのブルゾンにアーガイルのプリントがしてあったり。
赤峰  あとは、グレイと茶、そして日本人はあまりやらないけど、グレイと黄色もいい。
菊池  あぁ、黄色はキレイですよ。ちょっとトーンを変えた、クリーミーなベーシュみたいなものとも合います。
赤峰  そう考えると、グレイというのは組み合わせ次第で実に面白い表情を見せてくれますね。
菊池  僕は若い頃ジャズがもの凄く好きだったんですが、'50年代、'60年代のジャズマンはよくグレイの光った感じのスーツを着てましたよ。モヘアの光沢というよりも、安っぽい化繊の妖しい光沢ですね。でもなんていうのかな、そういった感じが逆にシャープに見えて、えらくカッコよかった。
赤峰  いわゆるシャンタンみたいな生地でしょう。
菊池  そうです。ちょっと趣味が悪い感じの。
坂田  そういう崩れたところに色気だったり、魅力だったりを感じることってありますよね。
赤峰  桜の花は、青空よりも曇り空で見たほうがキレイっていうじゃないですか。まさしくそんな感じですよね。
菊池  で、またピンクのシャツを合わせたりするんですけど、黒人だから妙に似合うんですよ。
菊池  黒人といえば、(注1)サミー・デイビスJr.、などは、テカテカ光ったグレイのスーツなんかがよく似合ってましたよね。それとシャンタンのスーツだと、(注2)ケーリー・グラントあたりが着ていた、深めの2つボタンのスーツなんかは洒落てましたよ。
坂田  「007」のときの(注3)ショーン・コネリーも、サヴィル・ロウ仕立てのグレイスーツをスキがなく着てました。
菊池  あぁ、あれもよかったですね。
坂田  そういった意味では、グレイというのはかなり振り幅がありますよね。エレガントにまとめることもできるし、ちょっとギリギリのところを攻めてもそれはそれでカッコいい。
菊池  同じグレイにしてもトーンだったり、素材だったりでいろいろと幅が出てくるから、そこを愉しみながら着てもらえるとおもしろいんですけどね。ひとつの趣味や志向に固執しすぎると、そこから少しでもハズれた時点で、もうダメだ、って感じになっちゃうでしょ。日本人はエレガンスということをわりに知っている人種だと思うんだけど、それでもやっぱり取り入れ方が下手ですよね。
赤峰  日本人だと、白州次郎がグレイのダブルブレストを着ていましたよね。あれはエレガントでした。
菊池  何よりあの人は顔がいいし、背も180cmぐらいありましたからね。
赤峰  今季はライトグレイが流行ですが、こうやって改めてグレイという色を考えてみると、僕自身凄く好きな色なんだなと実感します。ワードローブの実に8割ぐらいはグレイですからね。
坂田  色のトーンだったり、素材のバリエーションだったり、楽しみ方が豊富ですからね。
赤峰  そう。カシミアもいいし、(注4)トニックもいいし、シルクもいい。
坂田  それ以外にも高密度のナイロンとか、ポリエステルもいいですよね。
菊池  レザーもね。マットなグレイのレザーもこれまたカッコいいですよ。
赤峰  年齢はあまり関係ないんでしょうけど、それでもやはり髪の毛に白いものが目立つようになってきたら、グレイ、それもライトやミディアムあたりのグレイを着てほしいという思いはありますね。
菊池  白髪が入ったような年齢の人がグレイを着ていると、妙にエレガンスを感じさせるんですよね。

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(注1) 「サミー・デイビスJr.」
1925年にニューヨーク生まれ。3歳で初舞台を踏み、その後フランク・シナトラに才能を見出され、20世紀のアメリカを代表するエンターテイナーのひとりに。'90年死去。

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(注2) 「ケーリー・グラント」
1904年英国生まれ。「めぐり逢い」('57年)、「北北西に進路を取れ」('59年)、「シャレード」('63年)など、映画史に残る名作に出演した二枚目スター。'86年死去。

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(注3) 「ショーン・コネリー」
1930年スコットランド生まれ。「007」シリーズの初代ジェームズ・ボンド役で有名に。その後も多数の映画に出演。'99年にはナイトの爵位も得た。昨年、俳優引退。

(注4) 「トニック」
ドーメル社が開発したモヘア混紡の生地。3本の撚糸で織り上げていることによる張りの強さと、モヘアならではの贅沢な光沢感がが特徴。独特の風合いにファンは多い。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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朝日新聞be on Saturday “赤峰幸生の男の流儀” 『クラシック・ニューを探して』 2013年2月16日(土)掲載

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