2008年05月24日(土)
OCEANS 7月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]
マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、
少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆様の”駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、”人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!
今月のお悩みキーワード
“日本人の品格”
[今月の質問]
毎月「オトナ相談室」の痛快なマエストロ節に、深く感銘を受けています。突然ですが、私はいわゆる帰国子女で、子供のころから海外の文化に深く浸ってきました。現在も日本にある外資系企業で、さまざまな国籍の人々とともに働いています。最近特に「日本人」である自分を強く意識することがよくあります。果たして、日本人としてふさわしい「品格」を身に付けられているのか。30代半ばにしてお恥ずかしいかぎりですが、正直その自身はありません。今からでも間に合うのであれば、マエストロにぜひ「日本人としての品格」を身に付けるためのヒントを教えていただきたいと思っています。(36歳・兵庫県在住・外資系メーカー勤務R・Kさん)
Q.うわぁ、この深刻な悩み、どうしましょう?「品格」ブームに完全に乗り遅れちゃっていまさら難しいですよねっ?マエストロッ!
やかましいわ!ブームだトレンドだ、お前はブンブンとカナブンのようにうるさい男だな!「品格」がブームだと?てめぇ、ふざけるな!まったく、これだから「品格」を失った世の中だと嘆かざるを得ない。だから、「品格」について書かれた本などが売れてしまうのだ。実に嘆かわしい。「品格」、そしてそれが満たされる所作とは本来、誰かから教えてもらうものではない。自然と備わるものである。とはいえ、そういった本が売れるということは、「品格」を持ちたいと思う輩が多いということの裏返し。かすかな望みが見出せそうだ。悩みを寄せてくれた読者の方も、海外経験や職場の環境が、「日本人としての自分」を俯瞰して見ようと思わせるきっかけになったのだろう。
「品格」とは、毎日の暮らしぶり、そして長きに渡る生きざまに現れる。まず、すべての基本となるのは他者への配慮を念頭に置くという姿勢である。自分がよければそれでいい。そんな輩のなんと多いことか! タバコのポイ捨てなど、愚の骨頂だ。耐震強度偽装問題、賞味期限切れ問題、そのすべてに通じるのは、自分たちさえよければいい、という愚かな考え方だ。「品格」のある人とは、人に生かされていることを知っている。目の前の茶碗のごはんにありがたみを感じることができる。何事にも常に、感謝の気持ちを持ち得る人であってこそ、「品格」が備わり得るのである。「品格」に関する本を読むことは悪くない。問題なのは、読んだだけで「品格」を備えた気になっている輩がとっても多いのではないかということだ。あなたの行動が変わらなければ、習慣は変わらない。習慣を変えなければ、人は変わらないのだ。今回の相談者は、立派な経歴と社会的立場をお持ちのようだが、それは同じだと心得ていただきたい。「品格」のある人になりたいと願うことは素晴らしいことだ。まずは、自分自身の普段の行動を顧みてほしい。そして、感謝の気持ちを抱いて生きているか、いま一度自分に問い正してほしい。
Q.では、日本人らしい「品格」とは具体的にどういうことなんでしょう?マエストロ、簡単に教えてっ!
てめぇ、このやろう。何にも聞いてやがらねぇのか!とはいうものの、お前に限っては難しく言うわけにはいかないな、まぁ教えてやろう。そもそも「品格」とは何か。確かに、その答えをひと言で提示するのは難しいが、日本人が昔から持ち続けている「謙虚さ」、「礼儀正しさ」、「思いやり」といった道徳観と言い換えることができるだろう。しかしそれらは、今やすっかり薄れてしまった。農耕民族である日本人は、それらの道徳観念を生んだ、よい意味での「集団主義」であった。しかし、今や「個人主義」がまかり通っている。競争社会の弊害として「合理主義」も極端化し、一切の無駄が省かれている。生活における日本古来からの「情緒」も消えかけている。ITの進化により、何よりもスピードが求められ、生活のゆとりがないのだ。住みやすい社会は、日本人が失いかけているよき道徳観なくしては、成り立たない。では、何が必要か。答えは、「日本人が日本人に還る」ことである。
(→)休日になると、よく画材道具一式を持ってひとりでスケッチに出かけるというマエストロ。この日は、自然の木を被写体としてペンを滑らせるように絵を描かれていらっしゃいました。木の模様の隅々までを捉えようとするその目は、なんとも気迫のあるものでした。こうやって絵を描いていると、声を掛けられることも多いそう。その出会いというのもまた、スケッチをするひとつの醍醐味なのだとか。
Q.え?日本人に還る?必要なのは、昔の日本人を顧みることよりも、このIT社会を生き抜く「進化」では?
馬鹿やろう!何が進化だ!日本、そして日本人について何も知らねぇで、何を言ってやがる。おととい来やがれっ!
進化と言えば聞こえがいいが、言葉だけで実態が伴わなくていったい何になる。そして、日本人としての「品格」に必要なのは、日本特有の物事をしっかり知ることから始めるべきだと言いたい。
まずは日本語だ。パソコンばかりを使う習慣が定着しきって、自分で文字を書かなくなっている。メールに依存してばかりいるから、手紙のよさを知らない。自分で文字を書くことは面倒だと、わざわざ紙とペンを用意することをしない。文字だって十人十色で、形や筆圧に書いた人の心が現れる。それはメールではとうてい伝えきれないものだ。大正、明治の人には皆、自分の字がある。特段にうまく書こうなどと思う必要はなく、自己流で大いに構わないのだ。そういえば、私は父に届いていた年賀状の文字をよく思い出す。それらの字は実に書き手の心が現れていた。書き手の人柄が、手に取るように伝わってくるのだ。自分らしい字を書けるか、またそいう字に「情緒」を見出せるかが大切なのである。私は誰に習ったわけでもないが、うまい文字を見て、それを手本としている。(注1)富岡鉄斎の文字を見てみよ。字が上手だとか下手とか、そういった判断はできないが、実に趣があるではないか。さらに、私は日本人の心を表すために、外国の友人宛には(注2)スマイソンの紙に筆で文字を書くことがある。そこには日本人ならではの、私ならではの心を宿しているつもりだ。文字に限ったことではない。言葉遣いも然りだ。例えば手紙を書く際、あなたはその冒頭に何と書く?ありきたりの季語を引用してはいないか?それが常識だとでも思っているならば、「品格」を身に付けるにはまだまだだと思われたい。日本語にある季語という美しい言葉を、その意味を考えずただ引用する。そこには、「情緒」のかけらもない。そうではなく、あなたが手紙を書くその日、その季節に対して、感じたことを、そのまま言葉にすればよいのだ。そうして初めて、手紙に書き手の心が宿る。「品格」を持ちたいと願うのであれば、手紙を書いてみよ。面倒に思えることが、無駄に思える時間が、心に余裕をもたらし、殺伐とした毎日のよき句読点となるのである。
Q.なるほど、つまり「ゆとり」ですね。それでは具体的に、普段マエストロが実践していることはありますか?
私は東京生まれの東京育ちだ。そのせいか、ことのほか自然に触れたいと思っている。森に行けば、木に触れる。木に頬擦りをして、匂いをかぐ。子供と一緒に川縁を散歩もする。そして、木の名前、花の名前、鳥の名前、昆虫の名前を教えるのだ。そうやって自然の中で過ごすことにより、日本という国ならではの四季を肌で感じるのだ。
四季は食べ物でも感じる。イタリア料理もフランス料理もいいが、日本料理のよさは四季が色濃く反映されていることだ。食に関する日本人のデリケートさは世界一である。手触り、歯触り、舌触りが鋭い。「品格」を持とうとするならば、食を通じて四季を感じる敏感な感性を養うことだ。そして、それを子供とともに実践してほしい。
Q.はいはい!仕上げは服装ですね?流行りのアメトラでビシッとキメて、おお、これが「品格」ですかぁ!
このうすらトンカチがっ!いい加減にしやがれ!服装で大切なのは、流行なんかよりも同じ空間にいる人に不快な思いをさせないことだ。T.P.O.の真意は、そのとき、その場に適した服装をすることで他者への配慮が行き届いていることにある。手本とするなら英国紳士だ。イタリア人は素晴らしい服装を評して「ケ モルト イングレーゼ(何と英国的なのだ!)」と言う。それは控えめで、周りにいる人を引き立てる「品格」のある服装だ。そしてそれは、実はデリケートな日本人の美学にとても通じることなのだ。
また、日本人ならばやはり着物を着ていただきたい。何より着物を着ることで日本人であることを実感できるからだ。袂を気にしたり、あぐらをかいたり、その所作に日本人らしさが現れる。「日本人に還る」。その手段のひとつとして、着物は実に有効だ。
失われた「品格」。それは、つかの間の快楽に身を委ねているからではないのか。四季の移り変わりを自覚しているか?そこに「情緒」を見出せているか?見落とすどころか、何も感じていないのではないか。生き急いでいるならば、そろそろ立ち止まるべきだ。耳を傾けるべきだ。そうすれば、心は澄んでくる。見えないものが見えてくる。今まで感じなかったことを感じるようになる。本来あるべき日本人に還ることができる。そう、その姿こそが、ほかでもない日本人としての「品格」と言えるのだ。
(注1) 「富岡鉄斎」
明治、大正期の文人画家、儒学者。日本最後の文人と謳われる。京都生まれ。
(注2) 「スマイソン」
1887年に創業、ロンドンのニューボンドストリートに店舗を構える英国王室御用達の文房具店。特に1892年に開発された薄い青色の「フェザーウェイトペーパー」と呼ばれる紙は、スマイソンの代名詞。
−近ごろのマエストロ−
「5月は植木の季節である。私は季節を感じることができる実がなる木を好み、イチジクやグミを植えている。先日、サクランボの木を新たに植えた。生きるものを育て、愛情を注ぐことで人の心は安らぎを得られる。ゴールデンウィーク前には休暇をとり、沖縄で過ごした。感激した訪問地は「ネオパークオキナワ」。熱帯地方の動植物が自然のまま飼育され、子供と一緒に、生き物と垣根なしに触れ合えた。都会で暮らす私にとっては、実に貴重にして、大切な機会であった」
■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことを何でも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合はハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス G「オトナ相談室」への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。
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2008年05月13日(火)
Akamine Royal Line 08SS SAMPLE SALE [サンプルセール]
日頃よりアカミネブログをご高覧いただき誠に有難うございます。
来る5月22日(木)、23日(金)、24日(土)の3日間、
白金台のオフィス兼ショールームにて
『08SS Akamine Royal Line SAMPLE SALE』を行います。
詳しくは、下記及び以下DMご案内掲載内容をご確認ください。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。
(株)インコントロ スタッフ一同
■出品アイテム
ジャケット(一部44、46、50サイズ有り)、スーツ、トラウザーズ、
バミューダ、シャツ、ネクタイ(伊企画)
■開催時間 10:00〜19:00
※24日(土)は17:00までとさせていただきます。
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【印刷用地図】 【Yahoo!Maps】
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2008年04月24日(木)
OCEANS 6月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]
マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、
少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に
救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!
今月のお悩みキーワード
“父と子”
[今月のお悩み]
毎号「大人相談室」を拝読しております。ところで赤峰氏にお子さんはいらっしゃるのでしょうか?結婚して2年目に授かった我が子は、この春、小学校に入学します。そこで子育てについて、マエストロの意見をお聞きしたいのです。私の父は厳格な人でした。しかし、私は子供を叱ることが上手くできません。甘やかしてばかりです。父と子の理想の関係について教えてください。(36歳・神奈川県在住・医療関係会社勤務T・Sさん)
Q.今や父親の、かつての威厳は失われました。時代は男性に、家事のできる心優しい主夫としての素質を求めているのですっ!
てめぇ、このへっぽこやろう!何でも時代のせいにするな!お前のような輩ばかりだから、日本がどんどんだめになっていくのだ。私が子供だった自分と今では時代背景がずいぶんと変わった。女が家にいて、男は外で働くという形態ではなくなった。女性の社会的地位が向上したという意味では素晴らしいことだが、だからといって男が家庭のことだけを任されていくことはいかがなものか。それは仕事をバリバリやって亭主関白になれ、ということではない。私も子供を持つ父親であり、掃除もするし洗濯もする。しかし、女化しているわけではない。父はあくまでも男であり、昔も今も父と子の関係に違いなどないのである。
現代の親は子供に過剰にかまいすぎだ。まるで、腫れものにでも触るような扱いだ。子育てにさえも“事なかれ主義”がまかり通っている。子供の機嫌をとることが、いい父親だと勘違いしていないだろうか。子供を叱れない心優しい父親だと?それで子供が立派に育つわけがないだろう。子供をしつけるのは誰の役目だ。彼らのためになることは何なのか。そんなことは改めて言うまでもない。
(→)とある休日の昼下がり。なんとこの日は、自宅からほど近い多摩川で「ザリガニ獲り」に興じるマエストロを発見!自称ザリガニ獲り名人と語るマエストロは、まるで洋服の生地を見るかのような鋭い眼光でザリガニを探索。その腕前は確かなもので、シーズン前にもかかわらず見事に捕獲に成功!この日出会った、小さな命は「オーシャン君」と名付けられ、今日も元気に編集部で育てられています。
Q.なるほど。おっしゃるとおりですね。では、マエストロが実際にお父さまにどのように育てられたのか教えてください!
かつて自分の受けたしつけは、その良し悪しは別として、我が子へのしつけのベースになる。私の父は旧農林省に勤務し、地理の研究者だった。酒豪で無口。日曜日になると剣道の稽古で、ずいぶんと鍛えられた。作法にも厳しく、食事中に足を崩したり肘をついたりすると、容赦なく叩かれたものだ。ある日、遊び疲れた私が食事中に居眠りをしてしまった際などは、家から放り出され、泣けどもわめけど許してもらえなかったものだ。その夜、犬小屋で飼い犬を抱いて寝たことを今でも覚えている。正月のおせちは父が箸をつけるまでは誰も食べない、そんなことがごくごく当たり前の時代だった。何しろ、私は父のことを「お父さま」と呼んでいたくらいであるから。ともかく、父にはそれくらい威厳があった。無論、それはそういう時代であったからで、それがそのまま現代に通じるとは毛頭思っていない。しかし、私の今の生活態度はすべて父から学んだ。無口ではあったが、父の背中は実に多くのことを雄弁に語っていた。今思えば、どの家の父親よりも、そうやって無言の会話を交わしていたのだと思う。
教育方針は子供の得意なことを伸ばすものだった、と思う。私は絵を描くことが好きで、小学校に上がると絵画教室に通わせてもらった。やらされたのではなく、やらせてもらったのだ。今の親が自分たちの都合で、子供と接する時間をできるだけ少なくするための、時間稼ぎ的な習い事とはわけが違う。絵画を幼少の頃に学んだことは、その後の人生に色濃い影響を及ぼした。19歳のときには(注1)ピエール・カルダンにデッサンが認められ、パリのアトリエで修業を積むために渡仏する運びとなった。しかし、その直前に父が他界。経済的な理由もあり、渡仏を断念する運びとなった。それでも服飾の仕事に携わるうえで、どれほど絵を学んだことが役に立っているか。休日に時間さえあれば、今でも絵を描くことがある。海外に行ってもスケッチをする。そのときどきに、私は父から受けた恩恵を改めて思い知らされる。
今はいい学校に親が入れたいために、進学塾に通わせる。子供の教育を他人任せにアウトソーシングしているのだ。とりあえず、有名な大学に行かせたい。だがそれは所詮、まやかしにすぎない。とりあえず大学を出て、それがいったい何になるのだ。それよりも何よりも、我が子が何をやりたいか、どんなことに興味を持っているかを、一番近くにいる親が知らねばならない。
Q.では、マエストロはお子さんにどのような「服育」をされてますか?もちろん“お洒落さん”なんですよね?
馬鹿やろう!相変わらず、お前の質問はなんて稚拙なのだ。私は子供をお洒落に着飾ろうなどと、微塵にも思わない。最近では子供服の高級化が進んでいるようだ。雑誌でもよく目にするようになった。しかし、チャラチャラと親の身勝手で子供を着飾るのは、まるで子供をペットと勘違いしているかのようだ。子供を見せびらかしのための道具にすることだけは避けたい。私は子供に必要以上の贅沢をさせない。着させる服はなるべくベーシックを心掛ける。普通でちゃんとしている、それが子供らしい服と言えるのだ。高価な服でなくとも、「服育」はできる。どういうことか。平たく言えば、日常のT.P.Oを肌で覚えさせるのだ。どこかに出かけるときには、その場所と時間に合った服装がいかに自分だけでなく周りの人を心地よい気持ちにさせるかを子供のときから肌身で知ってほしいからである。私の幼少時代、正月になるとまっさらな白の下着が用意されていた。新年の始まりを身ぎれいに迎えるためだ。これは、日本らしい風習のひとつであろう。日本には洋服の文化がない。などという私の言葉と矛盾するが、これはT.P.Oに合った装いを考えるうえで、とても重要な意味を持つ。私自身、今でもそのことをきちんと憶えている。そして、私も子供に同じことを実践している。お洒落がどうこうではない。もっと根本的な服のあり方を教え、そこから生活態度のあるべき姿を理解させる。それが、しつけというものであろう。
Q.では、失われた威厳を取り戻すための、マエストロならではのとっておきの「子育てのコツ」を教えてください!
てめぇ、コツを教えてくれだと?ふざけるのもこれを最後にしやがれ。子育てにコツなどあるものか。それに子育てとは千差万別。親になって初めてわかる、正解はひとつではない。だが、あえて私なりにアドバイスを送るとすればこうだ。「自分もかつては子供だった」ということをいま一度考えろ。子供の身長が80cmであれば、その高さの目線になれるかどうかですべてが決まる。森でも川原でも公園でも家の中でも、どこであれ、子供の目線になれば目の前の世界が変わり、そこで初めて見えるものがあるのだ。子供に対して、過剰なかまい方をするあなたは、「自分の高さ」からだけで子供と対話していないだろうか。教え導くことにのみ過剰な責任を感じていないだろうか。だとしたら、一歩引いて考えてほしい。親は子供から多くのことを学ぶ。教えているつもりが、実は自分が教えられている。子育てとはそういうものだ。子供の五感は鋭く、感じたことをストレートに話す。おいしいものには素直においしいと言い、おいしくなければ、素直にそう言う。面白いことには自然と目を輝かせる。そこには何の損得勘定もない。大人が忘れてしまっていることを子供が教えてくれる。子供から親がしつけられることは、ことのほか多いのである。子供の教育に迷ったら自分が子供だったことを省みることだ。そして、必ず「子供の高さ」で対話すること。子供のころに観た、映画「(注2)ベルリン・天使の詩」や「(注3)赤い風船」は、大人になって改めて観ると、また違った見え方をするものだ。幼少時代の気持ちを思い返せば、自ずと子供との接し方も変わるはずである。
だが一方では自分が子供にとって、お手本とならねばならない。食べ方や話し方、そして生き様すべてが、である。子供は親を見て育つ。私が父親から厳しく育てられたように、自分の子供を育てることはない。しかし、私は子供に自分の生き様をありのままに見せる。重要なのは、そこで自分が筋の通った生き方をしているかだ。その生き様に芯があるか、である。父親が自分の人生を誇れるなら、それは子供へと自然に伝わるはずなのだ。女は子供を産み、本能的に女から母親になる。しかし、男は違う。子供を授かったとはいえ、それだけでは父親にはなれない。子供と暮らしていく中で、次第に父親として成長していく。最も大切なのは「子供の目線で子供から学ぶ姿勢」だ。コツではなく、それは心がけ。たったそれだけで、目の前の世界は変わり、子育ても変わる。そうすれば、父親の威厳を取り戻すなど造作もない。
(注1) 「ピエール・カルダン」
フランスのファッションデザイナー。前衛的なスタイルでオートクチュールブランドを立ち上げ、1970年代に一世を風靡した。
(注2) 「ベルリン・天使の詩」
ヴィム・ベンダース監督による、1987年公開のフランスと西ドイツの合作。ペーター・ハントケ原詞の「わらべうた」が冒頭に流れる。
(注3) 「赤い風船<」
アルベール・ラモリスの脚本、監督作品。1956年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した、同脚本、監督による「白い馬」と併せて、今年の7月にシネスイッチ銀座にてリバイバル公開される。
−近ごろのマエストロ−
「世の中、リスクのたらい回しが日常的だ。イージス艦、暫定税率問題に関しても然り。責任の所在が明確ではなく、なんでも曖昧にする。俺がやらなくて誰がやる、という骨のある政治家がいない。筋が通っていないのだ。私は自分が作る服には責任を持つ。自分の生き様をかけた、芯のある服を作る。奇抜なことは一切しない。普通に見えて、ただの普通ではない。そんな服だ。近ごろの世相を感じるにつれ、筋の通った生き様の男が少なくなっているのではないかと不安に思っている」
■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことをなんでも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合は官製ハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス G「オトナ相談室」への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。
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2008年04月09日(水)
繊研新聞掲載「10年着られる大人服」 [繊研新聞掲載記事]
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2008年04月05日(土)
MEN'S EX 5月号 菊池武夫と赤峰幸生が選んだ 古今東西お洒落な男 BEST5 [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
本誌の連載ページ「Be Buffalo Forever!」のお2人に、歴史上のお洒落な人物をそれぞれ5人づつあげていただき、それぞれの5人について、たっぷり語っていただきました。
■(写真右)菊池武夫氏
・ボルサリーノの帽子
・アメリカンアパレルのジャージ素材ストール
・ヘルムート ラングのミリタリージャケット
・デンツのペッカリーグローブ
・聖林公司のカーゴパンツ
・オールデンのコードバンタンカーブーツ
■(写真左)赤峰幸生氏
・トゥータルの’50年代製アスコットタイ
・Y.アカミネのフレスコ織りシャツ
・アカミネロイヤルラインのシアサッカーパンツ
・デッドストックのフランス製ホーズ
・ニュー&リングウッドのスリッポン
MEN'S EX大賞 【第1位】
菊池さんが選んだ古今東西お洒落な男第1位は・・・
アーネスト・ヘミングウェイ
ライフスタイルを反映したスタイルに定評あり
1899年、米イリノイ州生まれ。小説家。代表作は「武器よさらば」、「老人と海」など。’54年、ノーベル文学賞受賞。私生活では、趣味のアウトドアやハンティングなどのライフスタイルを反映した、アバークロンビー&フィッチのサファリジャケットなどを愛用していました。’61年、銃で自殺。
赤峰さんが選んだ古今東西お洒落な男第1位は・・・
ウィンザー公
当時の常識を覆した稀代のウェルドレッサー
1894年〜1972年。’36年、英国王室の王位を継承し、エドワード8世となるも、女性との恋を優先して1年経たずに退位を決意。ウィンザー公となります。稀代の洒落者として知られ、今では当たり前の、グレナカートチェックスーツにスエードのブローグシューズを合わせたのも、彼が最初です。
■お2人が心底お洒落だと思った歴史上の5人の人物とは?
M.E. 今回のテーマは、「お2人が選んだ古今東西お洒落な男BEST5」です。事前にアンケートを記入していただいたわけですが、それによると、タケ先生の1位はヘミングウェイです。
菊池 ヘミングウェイの作品は子供のときから読んでいて、長編はもちろんそうなんですけど、短編も素晴らしくて、凄く共感できるんです。彼の作家として生きてきた証が、彼の風貌、服の着こなしに強く表れているんですよね。海外の戦場に出掛けたり、ハンティングや釣りを趣味にしていたりと、何かとアクティブなイメージがあります。実際、彼のファッションとしてパッと思い浮かぶのはサファリの姿です。
赤峰 今日の着こなしはまんまヘミングウェイといった感じですね(笑)。
菊池 かなりアレンジはしていますけど、彼をテーマに今っぽく着るんだったらこんな感じかなと。
赤峰 確かにヘミングウェイといったら、今日のタケ先生の格好みたいなサファリのイメージがありますよね。
菊池 そうですね。サファリの格好をイメージしながら、軍服でアレンジしてみました。アフリカの砂漠の砂嵐を防ぐ意味を込めて、いつものルイ・ヴィトンのスカーフを中に巻いて、その上にスカーフを中に巻いて、その上にスカーフを二重に巻いているのがポイントです。
M.E. 赤峰さんの1位はウィンザー公です。
赤峰 ウィンザー公っていうとスーツスタイルばかりがクローズアップされていますけど、僕の中ではひょうきんな人だったんだなというイメージがありまして。普通の人はやらないような合わせをするんですよね。(持参した写真の切り抜きを見せて)モノクロなのでわからないですけど、色のトーンを合わせながらパターン・オン・パターンとかにしていると思うんです。国を代表してのオフィシャルな場と普段着とでは、だいぶ差があったんだろうなって。堅い中にもおふざけがあるところが結構好きですね。
菊池 これはウィンザー公がやっているから成立しているっていうのもあるし、英国っていうよりアメリカに移ったあとの着こなしかなって感じですよね。それにしても、ギンガムチェックを選ぶあたりはサスガですね。
赤峰 “すべての道はロンドンに通じる”じゃないですけど、アメリカ的な表現やイタリア的な表現もあるけれども、もともとは英国だしロンドンだし、いってみればバッキンガム宮殿だし、ウィンザー公のスタイルに行き着くんですよね。
菊池 今流行しているアメリカンスタイルだって、もとをたどればほとんど英国のものですからね。
MEN'S EX大賞 第2位
ジョン・F・ケネディ
品のよいスーツスタイルが好感度大
1961年、43歳の若さでアメリカ大統領に就任。ハーバード大学出身ながら、彼が好んで着用したボタンダウンシャツを、東部のエリート色が強いという理由で、公の場では着用しなかったという逸話も。2つボタンのブリティッシュスタイルのスーツを好んで着用していました。'63年、ダラスにて暗殺。
MEN'S EX大賞 第3位
白洲次郎
サヴィル・ロウのスーツを凛と着こなした日本人
1902〜'85年。英ケンブリッジ大学留学中からブガッティやベントレーを乗り回し、戦後GHQ支配下の日本で吉田茂首相の側近として活躍。185cmの長身がサヴィルロウのヘンリー・プールで仕立てたスーツを着こなしたその姿はあまりにエレガントです。
MEN'S EX大賞 第4位
ジャン・コクトー
パリの老舗メゾンの服を愛した芸術家
1889年パリ生まれ。画家、詩人、作家、劇作家、映画監督など、さまざまな顔をもつ前衛芸術家。アルニスやランバンの服を好み、ベルルッティのビスポークシューズなどを愛用していたことでも知られています。全身を白の細身の服でまとめた写真のスタイルもまた、彼の内面が滲み出ています。1963年没。
MEN'S EX大賞 第5位
ジャン・リュック・ゴダール
フレンチテイストのジャケットをニヒルに着こなすのが彼のスタイル
1930年パリ生まれ。ヌーヴェルヴァーグの旗手であり、世界でも最も有名なフランスの映画監督。代表作は「勝手にしやがれ」、「気狂いピエロ」ほか多数。お2人の対談内に出てきたように、まさに写真のようなジャケットファッションが彼のスタイルです。
M.E. なるほど。タケ先生の2位はケネディ。
菊池 僕はケネディのスーツの着こなしが好きなんです。襟幅とかシェイプの仕方とかがアメリカっぽくないし、かといってヨーロッパかというと・・・・・・。僕にはキルトの上に着ているジャケットのような、スーツの着こなしに映るんです。彼の場合、アメリカそのまんまじゃないんですよね。当時は3つボタンが全盛だったんだと思うんですけど、彼は2つボタンのスーツを着ていた印象が強いですし。
赤峰 そうですね。ケネディは僕も好きで、イギリスのモデルの誇張感をなくしてレギュラーな感じにしたスーツを着ている感じですよね。アメリカのナチュラルショルダーとかナンバーTモデルのボックス型というよりは、適度にウエストがシェイプされたブリティッシュレギュラーモデルみたいなね、そういう感じがするんです。ロバート・ケネディもみんな同じような感じでしたよね。
菊池 ええ、ケネディって、アイッリッシュ系の大統領じゃないですか。アイリッシュなイメージはありますよね。
M.E. では次、赤峰さんの2位、コクトーです。
赤峰 ブリティッシュとかフレンチとかそういう括りではなくて、アーティストとして極めたひとつのスタイルみたいなものがありますよね。上襟が大きいバルカラーのジャケットみたいなのを、白シャツに常にブラックタイで合わせるという独自のスタイルがある。パンツが凄く細くて、それにイギリスのだと思うんですけど丈が短めのブーツをビシッと合わせているのが彼のスタイルです。
菊池 彼は顔が細いし、洋服のシェイプの仕方とか見ていると、ちょっと女性的な感覚もあるんですけど、カフスの出し方とかもう絶妙ですよ。
赤峰 あれはもう絶妙です。アーティストな着こなしのクラシックとでもいうのかな。
菊池 昔だからセオリーはあったんでしょうけど、アーティストとしてそれを崩そう、崩そうとしているのが、彼の着こなしに表れているんです。最初コクトーのところにネイビーブレザーの姿が印象的なアンディ・ウォーホルを入れようとしたんですけど、やっぱり好きなのはコクトーなんですよね。コクトーはエレガントですから。ウォーホルの着こなしはアーティストらしくはあっても、エレガントではないんですよね。
M.E. 次は第3位の白洲次郎さんです。
菊池 お会いしたことはないのでわからないのですが、町田の武相荘に行ったときにいろいろ洋服を見せてもらって、彼がサヴィル・ロウのヘンリー・プールで仕立てたスーツを着させてもらったことがあるんです。それが体にピタッと合ったのが印象的でした。それと彼は性格が変わっていますよね。反骨精神が旺盛だし頑固だし。そういうのにも惹かれますし、それと顔が美しい。日本のウォーレン・ビューティみたいなね。Tシャツ姿で写っている有名な写真があるでしょう。彼の生き方とかが滲み出ていて、カッコいいなって思います。Tシャツ1枚でもサマになるんです。
赤峰 この人は1本筋が通ったものをもっていますよね。夏目漱石とか吉田茂とか白洲次郎とか、イギリスの流儀を学んで日本人のプライドで生き抜いた人っていうのかな。ひとことでいうと毅然としていますよね。あらゆるシーンに対して毅然とした態度で臨むから、あるときは喧嘩っ早いだろうし、男気にあふれているだろうし、でもジェントルマンだっていう。
M.E. よくわかります。次、赤峰さんの3位、ジャンニ・アニエッリです。
赤峰 アニエッリね。これはなんていうか、ひと言でいうと伊達っていう。伊達を極めたイタリア人なんですよね。今でいうクラシコイタリアとかいうのではなく、英国のひとつのスタイルをイタリア人として伊達に着るっていうのはこういうことなんだというのが感じられます。シャツのカフスの上から腕時計をしたり、タイを上着の外に出したり、自分の伊達を極めた人という意味ですごい人だなっていうのがありますよね。
菊池 確かにジャンニ・アニエッリは数々のオリジナルの着こなしのスタイルをもっていましたよね。ジャン・コクトーみたいなアーティストとは違うんだけど、並では嫌だっていうのがあって、オリジナルのスタイルを築いていましたよね。
赤峰 でもそれが何故できるかっていうと、基本ができているからなんです。基本ができているから崩せるっていう。
MEN'S EX大賞 第2位
ジャン・コクトー
これぞ、コクトーのスタイル!
タケ先生の4位に対し、赤峰さんはコクトーを2位でセレクト。「フランス的粋の本質を学べた人。特にジャケットインしたニットの着こなしとブラックタイの合わせがカッコいい」と赤峰さん。写真も無造作に挿したチーフが、実にエレガントな雰囲気を醸し出しています。
MEN'S EX大賞 第3位
ジャンニ・アニエッリ
さまざまな自分流を生んだ男
1921年〜2003年。前フィアットグループ会長。サルトのスーツにブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツを、襟ボタンをわざと外して合わせたり、スーツにドライビングシューズを合わせたり、数々のオリジナルな着こなしを披露。今でも伊ではカリスマ的人気。
MEN'S EX大賞 第4位
ハンフリー・ボガート
トレンチコートの着こなしでは右に出る者なし
1988年〜1957年。映画俳優。代表作は「マルタの鷹」、「カサブランカ」など。トレンチコートの襟を立ててベルトを前でギュッと縛ったボギースタイルは、今もトレンチの着こなしのよき手本。赤峰さんも若かりし頃、その着こなしを随分と真似したそうです。
MEN'S EX大賞 第5位
清水幾太郎
赤峰さんに影響を与えた学者の叔父
1907年〜'88年。社会学者、評論家。スーツやネイビーのブレザーを日本橋の丸善で誂え、服も同店で買い求めていたそう。多数の著書も高い評価を得ています。赤峰さんの叔父にあたります。写真はローマで撮影したもの。
M.E. タケ先生の4位は先ほど出てきたコクトーなので、次は赤峰さんの4位、ボギーことハンフリー・ボガートです。
赤峰 ボギーはね、非常にヤクザなところがいい。特に「カサブランカ」は若い頃に観て、最後の「君の瞳に乾杯!」っていうセリフに最高にしびれましたね。
菊池 使いました?
赤峰 かなり使わせてもらいましたよ。使いすぎたかなっていう(笑)。でもね、男の中にあるヤクザ的要素と、そういうニヒルというかシリアスな部分をもちたい自分を、ボギーと重ね合わせてしまうっていうのはあります。
菊池 僕はね、ハンフリー・ボガートって大好きなんです。メンズビギの会社を立ち上げたとき、店にボガートの写真を絵のようにして飾っていたくらいですから。やっぱり男として憧れるものがあります。声も渋いし、仕草もカッコいい。
赤峰 日本でいうと高倉健みたいなイメージかな。
菊池 そうそう、だぶりますね。禁欲的っていうか、ストイックな感じですよね。
M.E. 着こなしでいうとトレンチですか?
赤峰 まぁトレンチでしょうね。あとは帽子の被り方ね、あれはボギーならではです。スーツスタイルはイメージとしてあまり出てこないですね。
菊池 「マルタの鷹」でしたっけ。モノクロだからわからないですけど、ダークスーツを着ていましたよね。
赤峰 たぶんブラックスーツですね。
M.E. では次、タケ先生の5位、ジャン・リュック・ゴダールです。
菊池 ゴダールね。ゴダールも不良っぽい。
赤峰 フランス映画の中で、従来の価値観を壊した人ですよね。
菊池 ほかにもたくさんいますけど、やっぱりゴダールなんです。世界的な価値観を変えましたよね。それと映像がもの凄く美しい。なんであの顔からあんな美しい映像を撮れるのか不思議でしょうがない。自分があまり細い顔をしていないんで、赤峰さんは細い顔をしているじゃないですか。細い顔の人ってなんか好きなんですよね。
赤峰 見えるような見えないような、あの透け具合が独特のサングラス。レイバンのようなサングラスじゃなくて。
菊池 セルのサングラスを掛けていますよね。ちょっと禿げ上がった額に黒メガネをかけて無造作にジャケットを着て立っているのを見たことがありますけど、やっぱり凄く雰囲気がありました。
赤峰 まさにフレンチな感じですよね。ラペルが細くて肩幅が広いジャケットを着ているイメージがありますけど、ゴダールって華奢だから襟が抜け気味で、ちょっと羽織っている感じがするんだけど、それが逆に決まるんですよね。
菊池 変な言い方をすると、貧相になるギリギリの格好なんですよね。それが逆にアーティストっぽいっていうか、カッコいいんです。
M.E. 赤峰さんの最後は清水幾太郎さん。
赤峰 僕の叔父の学者なんです。彼はネイビーのブレザーをよく丸善で仕立てていたんですけど、いつもタイをビシッと締めていて、どんなに暑くても絶対に上着を脱がずに凛としていたイメージがありまして。当時丸善で売っていたバーバリーのトレンチコートを譲ってもらったことがあって、それがこの世界に入るきっかけにもなったし、私事で申し訳ないんですけど、子供の頃から彼にはそういった意味で凄く影響を受けてきたので、入れさせてもらいました。
M.E. ありがとうございました!
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MEN'S EX5月号記事「俺の人生で得した買いモノBEST3」 [MEN'S EX 掲載記事]
MEN'S EX大賞 【第1位】
スマイソン ロンドンのレターセット
受賞理由 : かれこれ20年以上使い続けています
「私自身、万年筆で字を書くことが好きなので、大事な人へ手紙を送る際は、必ずこのレターセットを使っています。ボンドブルーの色合いも気に入っていますし、とにかく書きやすいのが魅力。PC時代の今だからこそ、直筆の手紙は相手にも誠意が伝わりますしね」
(→)自分だけの“モノ”が作れます。
好きな色を選んで、文字やロゴを入れるオーダーも可能。
http://www.smythson.com/
MEN'S EX大賞 第2位
ローデンクロスのニットジャケット
受賞理由 : カジュアルなのにエレガント
「7年ぐらい前に海外で購入したのですが、厚手でシワになりにくく、伸縮性もありながら非常に温かい。寒い時季は、毎日のように着ていますね。シャツの上にブレザー的な感覚で羽織ってもいいし、いろいろ使い回しの利く1着だと思います」
MEN'S EX大賞 第3位
ペルックスのオリジナル ブリーフケース
受賞理由 : 出張時には必ず持っていきます
「デザインに特徴がある訳ではないのですが、アコーディオンの仕切りで荷物も入れやすく、使い勝手は◎。10年ぐらい使っていますが、壊れたことがなく、無造作に下に置いても平気で、それが逆に格好よかったり。そんな頑丈な作りも気に入っています」
◆赤峰さんの“思い出遺産”
フローシャイムのインペリアルシューズ
30年経っても履き続けられます
「30年前に購入した靴ですが、ソールは2、3回替えた程度。それでいて、いまだに履き続けられるという、作りのよさは相当なもの。いかにもアメリカらしい存在感をもちつつ、シャープさも備えた、かけがえのない1足です」
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MEN'S EX5月号記事「イタリアを象徴する本格靴ブランド ストール・マンテラッシがみんなに愛される理由」 [MEN'S EX 掲載記事]
ファッション界の大御所もマンテラッシをご愛用!
日本のファッション界の大御所たちには、ストール・マンテラッシの愛用者がたくさんいらっしゃいます。というわけで、古くからマンテラッシの靴を履いており、マンテラッシには一家言ある大御所に、その魅力を語っていただきました。
「古きよきイタリアのカジュアルエレガンスの薫りがするんです」
日本でマンテラッシといえば、まずこのおかた、赤峰幸生さんです。
「出会ったのは20年くらい前かな。僕の中でマンテラッシはカジュアル靴のイメージがあって、特に好きなのは、カモッショと呼ばれるヌバックタイプのスリッポン。もうずっと上級なスニーカー感覚で愛用していて、何足も履きつぶしては、買い替えています。20代の頃に観た映画の中で50代とか60代のお洒落な人たちが履いていて、古くからイタリアの文化に根ざしてきた靴なんです。どこか英国的な要素がありながらも、ラテンの文化からしか生まれてこない軽さもいい。カジュアルでもドレスのマインドがあるし、5ポケットのパンツにも合う懐の深さがある。そして何よりも、古きよきイタリアのカジュアルエレガンスの薫りが残っているところが好きなんです」
革の編み紐がアクセントのグレイスエードのスリッポン
「今も昔も、マンテラッシといえば、夏に素足で履ける軽快な作りの靴が好き」と赤峰さん。サドルについた革の編み紐がアクセントになったスエードスリッポン。9万8700円
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