2008年03月29日(土)
エスクァイア日本版「LAST(vol.11)」5月号臨時増刊(男の靴雑誌) [LAST掲載記事]
シネマに学ぶ、紳士の装い
参考書のようなドレスマニュアルを参照しても、実は装いが巧くなるわけではない。
服に付帯する「生活」や「習慣」を知ってこそ、服は自分のものになる。
その範を映画に求めるべく、3人の達人たちに集まっていただいた。
[Yukio Akamine]
東京・目黒生まれ。1974年に(株)トラッド(WAY-OUT)設立に参画。'82年には(株)グレンオーヴァー設立に参画。'90年に(株)インコントロ設立。自身のブランド「Akamine Royal Line」の他、大手アパレルブランドのコンセプトや海外服地の企画を手がけ、クラシックスタイル構築一筋に活動。
[Yuhei Yamamoto]
東京・渋谷のテーラーケイド主宰。アメリカンスタイルを核として、オーセンティックなメンズウェアを追及している。そのスタイルは新宿伊勢丹「ザ・スタイルゲイト」でも展開している。映画、ジャズに精通し、関連資料のアーカイヴも充実。また近年はロードバイク(自転車)に情熱を注いでいる。
[Akira Sorimachi]
1966年東京生まれ。'90年代よりイラストレーターとして活動。現在は雑誌や広告のイラストの他、インスタレーション等幅広く活躍している。昔日のアメリカやヨーロッパの雑誌が載せていたような雰囲気の絵で知られるが、ご本人もまた、クラシックスタイルを愛するウェルドレッサーである。
山本祐平 僕らの世代は、若いころから早く成熟して、いいリアルクロージングを着たいと思っていました。若づくりなんて必要ない、早く大人の男になりたいと。街で遊ぶときも飲みに行くときも、僕らは背広を着ました、オーダーの服で。そういうのが高いからいいだろうではなくて、ヒップに着たかったわけです。その靴がお洒落だねではなくて、コートの衿の立て方とかがわかってるな、やるね、ヒップじゃないかとか、そういうこと。
赤峰幸生 それは日本人である我々が、外国人、その国の文化の中で生まれ育った人たちの日常の立ち居振る舞いを興味深く見ていたということでしょう。我々は箸文化で、箸を使うことが日常なんだけど、彼らはナイフとフォーク。ナイフとフォークさばき、それが結婚式のときに初めて持つんじゃなくて、日常で使っているから上手い。それと同じように服を“さばいて”着ていると。そのさばき感が、今風な言葉で言うとリアルなんだと。さらに反復の中でそれが歳と共に自分の身に付く。タバコの吸い方、酒の飲み方、食べ方、脚の組み方、歩き方・・・・・すべての動作や目線が自分の中で板に付いてくる。最初はぎこちないんだけど、ぎこちないなりに繰り返していくうちに、次第に高い服やブランドの服を着ていなくても、なんとなく味があるよねという感じになる。ある程度のクオリティであれば、フルオーダーの服だからいいとか、既製服だから悪いとか、そんな論理はないのです。なんの変哲もないけれどいい、というのはその人のさばき方がうまいということなんですね。
−−−−そうした服さばきで感心した映画や俳優は?
赤峰 若いころはジョージ・ペパードやケイリー・グラントが好きで好きでしょうがなかった。それからヨーロッパの俳優に移行していって、19歳、20歳くらいに一番はまってたのはマルチェロ・マストロヤンニ。自分でもナンパ師風の、白の綿ギャバのスーツをつくった。
山本 僕はロマンティストなんです。男のロマンっていうものをソリマチ君は絵で表現するわけだけど、僕はテーラーという天職を見つけた。そこでシーンをつくるわけです、お客様の。その人が仕事をしているシーンや旅に出ているシーン、それに合わせて僕は服をオーガナイズしていきたい。そして、そこには映画の残像がやはり残っていて、それをお客様と共有するのがすごく好き。たかが服、されど服。着るものは単なるお洒落とかじゃなくて、映画が教えてくれたのはロマンティックな部分だとね。例えば女性がドレスアップしたときは、ダークスーツでケイリー・グラントみたいに、フッと後ろに立って椅子を引いてあげるとか。そういう常識だったりマナーだったり、ナルシスティックかもしれないけど、そうしたことが大事。
赤峰 マナーを学ぶのに、映画は素晴らしい教本。例えば向こうの連中は、脚を組んで食事している奴ってまずいない。または綺麗なナプキンの使い方、パスタを食べるときにナプキンをピッとはねながら、こう・・・・・自分のリズムなんだよね。そういうのがかっこいい。
山本 英国人はトラウザーズのポケットに手を突っ込まない。でもアメリカ映画ではコートを持つときにタバコを吸いながらポケットに手を突っ込んで、ティファニーに入っていく。そういうものは映画を無意識に真似している。タバコの吸い方一つにしても、コートの着方、ジャケットの着方でも・・・・・僕が言いたいのはコスプレとか猿真似じゃなくて、所作というものが実は映画の中にたくさんあって、皆影響を受けているということ。僕らはそういうものを見るプロだから、それを言い切らなきゃいけないと思う。コートの衿を何げに立てるとか、ボタンの締め方にしても。
−−−−特定のシーンでこれは真似しようと思われたものは?
赤峰 いまだにやっちゃってるのが僕のカードのサイン。これは「太陽がいっぱい」で、アラン・ドロンがタバコをくわえながら何度もフィリップのサインを練習する、あのサインが僕のサインのスタイルになっています。あとは「鬼火」で、モーリス・ロネがベッドの上にネクタイを並べて、指で弾くようにして選ぶんだけど、あれはいまだに自分がネクタイを選ぶときにやりますね。
山本 「太陽がいっぱい」は、色とりどりの素材なんだよね。リネンやコットン、シルクとかプリントが出てきたり、スクールジャケットも、白のモカシンの靴も、コットンパンツも、シャンブレーのシャツも、素材のオンパレードなんだ。そしてリゾート地の、太陽の光と服の色とのコントラスト、そういうものは後の僕らが服を作るときに、何度も見直すことになる。
赤峰 確かに。その場所・土地という要素はすごく大きい。
山本 英国も含めてヨーロッパ的なスタイルには、石畳の街という要素がある。例えば「ナポリ湾」の、クラーク・ゲーブルがナポリに到着したシーン。その洗練された感じで、ナポリの弁護士役のヴィットリオ・デ・シーカが泥臭く見えちゃう。どっちがエレガントかは差がつけにくいんだけど、田舎の顔役とニューヨークから来た弁護士、それがあの場面でわかるわけ。デ・シーカの服を見ると、すごいソフトな手で縫ったようなふくらみが付いた丸っこい服。着こなしも白の手袋をしたりとか、ホンブルグハットをかぶったり、英国的なものが影響したナポリのクラシコイタリアスタイルです。かたやゲーブルはTVフォールドでハンカチを入れて、ボタンダウンのシャツを着ていたりと最先端のアイビー。そのうえ水道の水が飲めなくてウィスキーで歯を磨くとか、都会人の奇妙な部分、そういうことも含めて文化の違いがある。どっちがいいとか悪いとかではなくてね。だいたい、あのゲーブルだとパリの街も似合わないだろうし。
映画は街を、装いを描いて、人生を伝える。
−−−−フランス映画で、気になった装いはどんなものですか。
山本 僕はフレンチ・フィルム・ノワールだね。モノクロームの世界のダークスーツとトレンチコート、バルマカーンコート。ジャン・ギャバン、リノ・ヴァンチュラ。でも映画的に一番チャーミングなのは「男と女」かな。ジャン=ルイ・トランティニャンのカジュアルが大好き。トランティニャンのなんてことのないフランネルのパンツとチャッカブーツにカシミアのセーターとか、そういうのがいい。アヌーク・エーメもいいね。ランチコートの着方なんかは男のスティーヴ・マックイーンより、アヌーク・エーメを見て影響を受けた。
−−−−赤峰さんは、フランス映画だと印象的な作品はありますか。
赤峰 「華氏451」、オスカー・ウェルナーの、フランス的ニットの着方とはこうなんだみたいなところ。ジャンヌ・モローとのシーンで、ドロッとリブのあまい、あの感じは忘れられない。
山本 ニットと言えばウディ・アレンとかの、コーデュロイの膝の抜けたパンツにネルのシャツ着て、シェットランドのセーターにツイードのジャケットという合わせもある。
赤峰 ナチュラルショルダーの、ポール・スチュアートやサウスウィックあたりのジャケット。夏でもツイードっぽいジャケット着て、デロッとした感じで、という。あの時代のウディ・アレンと自分の中でダブるのはアンディ・ウォーホルだね。ウォーホルとウディ・アレンって全く違う世界のふたりなんだけど、マンハッタンっていう街が産み落とした一連の人物という。マンハッタンなくしてあの人たちはあり得ないと感じるね。
山本さんも僕も若いときに感動したものというのは理屈じゃないから、いくつになっても匂いを記憶しているのと同じように覚えていて。現在でも何かに相対したときにそれが蘇る。若いときの感動を嗅覚のそれのように記憶装置の中に入れておくことは大事だと思うね。
山本 映画の中の台詞だとか、映画の中の父親像・男性像というのが、(自分にとっては)黙示録。例えば「ゴッドファーザー」に出てくる台詞から、男ってこうやって生きなきゃダメだなといったことを知る。そういうことって親や上司からより、映画の中の男のイメージから色々と教わることがあるんじゃないかな。例えば男と女の揉め事には口を出すな、なんて言葉とか。服ももちろん、生き様とか人生観に至るまでね。
「ナポリ湾」
クラーク・ゲーブル、ソフィア・ローレン主演の、ナポリを舞台にしたラブコメディ。死んだ兄の財産整理にナポリを訪れたニューヨークの弁護士が、兄の子を養育する地元の女性を見初める。(パラマウント・ジャパン)
「ティファニーで朝食を」
トルーマン・カポーティの小説をベースとした作品。主演はもちろんオードリー・ヘップバーン。コールガールと作家の恋を「上品に」演じた。ヘンリー・マンシーニの音楽も美しい。(パラマウント・ジャパン)
「アニー・ホール」
ウディ・アレンとダイアン・キートンによる、'77年公開の恋愛映画。コミカルで切ない都会の男女の関係が描かれる。作品賞ほかアカデミー各賞を受賞。(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)
「男と女」
クロード・ルルーシュ監督、アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン主演。フランシス・レイによる主題歌はあまりにも有名。冒頭からスタイリッシュな映像美が際立つ。(ワーナー・ホーム・ビデオ)
「太陽がいっぱい」
ルネ・クレマン監督、アラン・ドロン主演の青春映画。地中海沿岸の美しい風景のもと、人間の本性とそれゆえの愚かさが描かれる。ニーノ・ロータの音楽が映像美に華を添える。(ジェネオン・エンタテイメント)
「甘い生活」
フェデリコ・フェリーニ監督の代表作のひとつ。マルチェロ・マストロヤンニ演じるローマのゴシップ記者の、華やかで退廃的な日常を描いている。そのラストシーンはいまなお謎めいている。(アイ・ヴィ・シー)
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2008年03月24日(月)
OCEANS 5月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]
マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、
少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さんの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で、迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!
今月のお悩みキーワード
“上司の大義”
[今月のお悩み]
入社10年目を迎え、同期の中で一番早く課長職に就きました。管理される側から管理する側に回ることになり、上司として、よきリーダーになろうと決意しています。そこで人生経験が豊富で、会社の代表取締役社長でもあるマエストロにアドバイスをいただきたいのです。「デキる上司」の条件とは何でしょうか?部下から認められる上司となり、これからも出世街道を歩みたいと思っています。(33歳・東京都在住・証券会社勤務H・Tさん)
Q.今月、お悩みを寄せてくれた方は出世意欲が強いようです。やっぱり、男は出世してナンボ!リーダーってモテますしねっ!
てめぇ、このやろう!何を勘違いしてやがる。出世が男の本懐であるとでも言いてぇのか。ふざけるな!何のための出世だ。課長になったから偉いのか。部長はもっと偉くて、社長になるのが目的か。それともやっぱり金なのか?リーダーになりたい動機が自己顕示欲と収入を上げることならば、そんなリーダーはクソくらえだ。こんな輩が上司である部下が不憫でならない。リーダーを目指すのであれば、まずは大義を持つべきだ。そして、自分がその大義を成すためにリーダーとなる必要性があるのであれば、大いに出世を目指せばよろしい。
Q.なるほど、リーダーになる目的は不純なものではいけないのですね。でも、そんな人っているんでしょうか?
お前の目には、不純なことしか見えてねぇのか!まったく、夢も希望もないやつだ。私はかつて、模範となる上司がいた。彼は部下に対して、自己啓発できる人であった。これはリーダーに必要な条件とも言える。そんな彼と、昔こんなことがあった。
ある日、上司に「POP」の意味を問われたとき、私は即座には答えられなかった。そうしたら上司は辞書で調べろと言う。そして、辞書を持つ私にこう言った。「それは中学程度の英語と書いていないかい?君は中学を出ているんだよね?」と。私は猛烈に悔しかった。しかし、その言葉に嫌味などは微塵も感じなかった。むしろ、勉強が足りないとの叱咤が激励に聞こえた。また、あるときは朝日新聞の「天声人語」を毎日読むことを義務付けられ、新聞には大見出し、中見出し、小見出しがあり、それから本文があることを教わった。そして、私が上司に意見するとよくこう言われたものだ。「君の話は何を言いたいのかまったくわからない。私に何か話すときには“大見出し”から話しなさい」とね。その言葉から、相手に何かを伝えるときは、話の内容を最も簡潔にまとめている“大見出し”的な役割の内容を、まず一番に話すことが必要であることを教わった。そして、私はそれ以降、今でも「天声人語」を読み続けている。これらは、例にすぎないが、私はそのときの上司から教わったことを今でも思い出し、反芻することがしばしばあり、実践できるように努めている。
(→)服飾界のドンとして知られるマエストロ、実は大の“カラオケ好き”。この夜、数ある十八番の中からマエストロが、選んだ第一曲は「酒と泪(なみだ)と男と女」。プライベートなカラオケであっても、その鋭い眼光は健在でした。歌って踊った2時間半・・・・・。さすがのマエストロも、この日ばかりはお酒に飲まれてしまったのかもしれません。
Q.リーダーは部下を自己啓発させる。それ以外に、部下と接するうえで大切なことは何でしょうか?
何だと?てめぇ、いいこと聞くじゃねぇか。リーダーになりたい目的は何だろうか。それを考えれば、自ずと答えは見えてくる。極論すれば、リーダーの目的とは会社の理念であり、もっと言えば会社が市場に存在する理由だ。そもそも、会社の使命とは顧客を満足させることにある。リーダーはそのうえで、部下が何を担うのかをしっかり説明する必要がある。つまり部下ひとりひとりの会社での仕事が、世の中にどのような影響を与えているのか。世の中にどのように役立っているのか。それを、伝えることが重要なのだ。また、その言葉にあなたのありったけの情熱や意欲を乗せて伝えることもリーダーとしての大義なのだ。そうすれば、部下の理解度も格段に違うはず。本来の仕事の意味を理解させることなくして、部下に成長はなく、会社に未来はない。仕事をしていくうえで、会社に「マニュアル」というものが存在するのならば、大切なのはその「マニュアル」遵守よりも、むしろそれがどうして存在しているのかを部下に説明できることなのだ。リーダーには、それを説明する力がなくてはならない。上司の出世のため、金もうけのために働くやつなどいないだろう。そんな上司と部下しかしない会社はろくでもない。そうは思わないか?
Q.実際にご自身の会社と、この業界で人の上に立つマエストロが肌で感じたリーダーの資質を教えてっ!
お前が今回の話を本当に理解しているのか、私は不安で仕方がない。会社を設立して代表取締役をしてはいるが、私は人の上に立ちたいから、リーダーをしているわけではない。理由はたったひとつ。それは、己の大義を具現化していくための手段でしかないのだ。リーダーとして、仕事をするうえで、これまで積み重ねたさまざまな体験は大いに役立っている。
私が独立したのは28歳のときだ。そうしてからボールペン1本でも、紙1枚でも経費がかかっていることを骨身に感じ、無駄にはできないと肌身で知った。そして、営業から経理から企画から、会社でいうとありとあらゆる部署が担う仕事を自分の責任で行った。しかし、自分の目的がしっかりあったからこそ、何でも主体的にできた。だから、その当時自分がしている仕事が何のためのものであるかも当然わかり、結果よりよい仕事をすることができたものだ。自分の経験からものを言うとき、ある部署の仕事しか経験していないと、非常に偏った視野になる。最近では、終身雇用という意識は薄れ、転職を繰り返し、独立をする者も増えている。それがだめだとは思わない。しかし、とりあえず大学を出て、会社に入り、そして転職し、最後に独立する。そんな“とりあえず”な輩が多いのではないか。あなたは自分の目的、つまり大義を成すための職人になるべきだ。料理人に例えるなら「自信」「意欲」「能力」という名の包丁を持たねばならない。でなければ、何でもとりあえずの“渡り職人”になってしまう。そんな輩がリーダーでは、部下は困るだけ。会社の規模は関係ない。必要なのは、そこに強いリーダーの意志が存在するかどうかなのだ。
Q.では、簡単によいリーダーになるためにマエストロ流の秘訣を教えてくださいっ!
このやろう!秘訣だと?しかも簡単にだと?そんなものがあったら、ぜひ私も教えてもらいたいものだね!リーダーの条件は一日にして満たされず、だ。だが、私なりに思うことは教えよう。まず、己の尊敬するリーダーを見つけよ。私は今までの経験を生かしてきた。リーダーは仕事上だけの話ではない。わたしにとって(注1)ロベルト・ロッセリーニや(注2)フェデリコ・フェリーニらイタリア映画の名監督もリーダーである。若いころには映画から多大な影響を受け、本からも多くのことを学んだ。リー・アイコーカやヒュー・ヘフナーらのことが書かれている「(注3)5人の猛烈なアメリカ人もそのひとつだ。そして日本の偉大なリーダーである松下幸之助の著書は今の若者にぜひとも読んでいただきたい。「(注4)人生心得帖」にはまさに人生の航海術が書かれている。また、「(注5)大切なこと」にはこんなくだりがある。「なすべきことをなすという勇気と、人の声に私心はなく、耳を傾けるという謙虚さがあったならば、知恵はこんこんとわき出てくるのである」。この言葉の意味を考えてほしい。私の人生の指針をのひとつである。リーダーとは異なる仕事上の上司だけに留まらない。素晴らしい生き方をしている人生の先達すべてがリーダーだ。己をよき方向に導いてくれる者がリーダーなのだ。
しかしながら、人間は年をとると、昔とった杵柄で話をしたがるものである。経験を語ることはいいが、昔の事例を話すにもかかわらず、今の問題が解決されないのであれば何の意味もない。また、人間は肩書きがつくと偉ぶるものである。人の上に立つというが、上も下もない!上司はまとめ役であり指導的立場ということだ。部下から学ぶこともたくさんあるはずだ。人間、謙虚さを失ってはいけない。世の中には、このような傲慢で偏屈な上司が多いのではないだろうか。
また、己の大義を推し進めるためには体力、健康に留意せねばならない。ここ一番に、ここ一番な自分になれない人間は、リーダー失格なのである。
また、引用になるが、松下幸之助が「大切なこと」で書き示した次のことを今一度肝に銘じたい。「道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる」。そうすれば、自ずと道は開けるだろう。
(注1) 「ロベルト・ロッセリーニ」
イタリア・ローマ生まれの映画監督。代表作は「無防備都市」など。
(注2) 「フェデリコ・フェリーニ」
イタリア・リミニ生まれの映画監督、脚本家。色の魔術師と謳われた。代表作は「甘い生活」など。
(注3) 「5人の猛烈なアメリカ人」
竹村健一著、講談社。猛烈に働くアメリカ人の仕事ぶりを紹介し、日本に“モーレツ”ブームを巻き起こした。
(注4) 「人生心得帖」
松下幸之助著、PHP研究所。心得帖シリーズとして発行され、ほかに「商売心得帖」、「経営心得帖」などがある。
(注5) 「大切なこと」
松下幸之助著、PHP研究所。ベストセラー「道をひらく」の中から若い人向けに書かれた、生きていくうえで大切なことを抜粋した43編からなるメッセージブック。
−近ごろのマエストロ−
「恒例だがミラノで開催される生地展に訪れた。私の服はあくまで“生地ありき”である。2008年秋冬のアカミネロイヤルラインのテーマは“ベター ザン ブリティッシュ”。1920〜1940年代のヴィンテージ生地を日本の機屋で復刻して、英国よりも英国的な服を提案する。ミラノの次に向かったのはロンドン。とあるヴィンテージショップに立ち寄ったら、ポール・スミスとトム・ブラウンを見かけた。彼らにとっても過去の素晴らしい服は、よきお手本となるのであろう」
■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことをなんでも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合は官製ハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B年齢 C職業 D電話番号 Eメールアドレス F「オトナ相談室」への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。
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2008年03月06日(木)
MEN'S EX 4月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.22 [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。
「今月のテーマ」
旅
タケ先生がヨーロッパ各国&NYの出張から帰ってきたかと思ったら、今度は赤峰さんが今年2回目の海外出張でミラノ&ロンドンに。そんなこんなでスケジュールの調整がどうしてもつかず、今回はそれぞれを単独取材。理由が理由なので、テーマを“旅”にしました。海外を忙しく飛び回るお二人ですが、その旅に欠かせないものとは?
■(写真右)菊池武夫氏
恐るべし、タケ先生。ヨーロッパへの2〜3週間の出張でも、こんな小さなカバンで出掛けます。この日は、ニューヨークハットの帽子、40カラッツ&525のカシミア混ジャケット、クラブキングのTシャツ、Gスターのジーンズ、ダグ マークソンのシューズ、アンティークのスカーフ、クリケットのチーフ、ノッシュのウエストポーチという合わせ。機内に乗るときもこのまんまです。
■(写真左)赤峰幸生氏
機内に乗るときの格好を再現していただきました。シャツはジュンヤ ワタナベ マンとセントジェームスのダブルネーム、それにリーバイスのコーデュロイパンツ、コンバースのオールスターというコーディネイト。セントジェームスのシャツといい、オールスターの紐の通し方といい、ちょっとしたところでヒネリを演出するのが赤峰さん流です。カバンはリモワ。
■歳を重ねるごとに荷物が小さくなりました
菊池 2〜3週間の海外出張が多いんですけど、最近は驚くほど荷物が少ないんです。
M.E. タケ先生、これ小さすぎです。国内の2〜3泊用ですよね(笑)。
菊池 何が少ないって、洋服が少ないからでしょうね。「えっ、これだけで来たんですか?」ってよく驚かれます。洋服は基本的にカジュアルパンツ1本と、靴は履いている1足だけ。パーティとかがない限りはほとんどこんな感じです。ただ、下着だけは2週間あったら10日ぶんくらいはもっていくかな。僕は昔から自分で洗濯するんです。
M.E. 旅の必需品を教えてください。
菊池 バリカン、室内履き、霧吹きです。2〜3日ごとに頭を刈っているのでバリカンは必需品ですし、室内履きもホテルによってはないので必ず持っていきます。昔はアイロンを持っていってたんですけど、今は着る服もカジュアルになったし、大変なので、1日着たら、霧吹きをしてひと晩置いておくんです。すると、大抵はもとどおりになっていますね。この3つがない旅は考えられません。>
M.E. 今日してらっしゃるウエストポーチも、海外でいつもしてらっしゃるような気がするのですが・・・・・。
菊池 よく気がつきましたね(笑)。実は海外で財布をすられたことが3回もあって、それもあって、海外ではウエストポーチをするようにしたんです。必ず真ん前にしてね。これだったらさすがに盗られないでしょう(笑)。
M.E. 確かに。もうひとつ気になったのは、今日の小物はどれも形がかわいいということ。
菊池 必要なものでも形がかわいくないと、買う気がしなくてね。この霧吹きひとつにしても、フォルムがすごく美しいですよね。
M.E. カバンの中身を拝見しているだけでも楽しいです。
(→)必要最低限のものしか入れません
45歳くらいまでは大きなトランクを3つくらい持っていっていたそうですが、歳を重ねるごとに荷物は小さくなっていきました。今では2週間の出張でも、国内の2〜3泊用のカバンで間に合わせてしまいます。下着以外の服は、必要最低限。
・(上左)エールフランスのアメニティケースをオードトワレ入れとして使用
・(下左)大のお気に入りのプラダのデニム製ポーチ
プラダのデニム製ポーチは、グルーミングバッグとして活躍。「ポケットが多数ついていて非常に使い勝手がよかったので、同じデザインのでこれが2つめになります」とタケ先生。
・(上真中)小物はデザインにこだわっています
何気なくカバンに詰め込まれている小物の数々は、どれもタケ先生のお眼鏡に適ったもの。ホチキス、鉛筆削り、ボウタイ2本、メガネケース。「必要なものがあってもデザインがいまいちだったら買いません」という徹底ぶりです。
■旅行や出張も“生活の移動”、服を選べる余裕がほしい
M.E. 先生は旅の荷物が多いので有名です。
赤峰 海外出張はだいたいいつも10日〜2週間なんですけど、今日持ってきているリモワと、サブのリモワ、それとビジネスバッグを持っていきます。1月のピッティに行ったときは、行きの時点で40kgでした。
M.E. 大半はワードローブですか?
赤峰 そうですね。スーツ3着、ジャケット、スラックス、ジーンズ、シャツと下着を日数分、タイ20〜25本、チーフ10枚、靴3〜4足とジョギングシューズ。あと、パジャマも2枚持っていきます。
M.E. さ、さすが。随分と多いですね。
赤峰 出張や旅行も僕にとっては“生活の移動”なんです。使わないかもしれないけれど、朝起きて、その日の気分で服を選ぶ余裕は常に持っていたい。ホテルも値段の高い安いではなくて、クローゼットの大きさが重要なんです。クローゼットの小さなホテルには泊まりません。
M.E. 絶対に欠かせないものって何ですか?
赤峰 イタリア出張が多いので、イタリア仕様のアイロンはいつも持っていきます。シャツはもちろん、チーフやパンツに至るまで自分でアイロンをかけるんです。あと、毎回必ず持っていくのは画材。絵の具と筆をもって1リットルのペットボトルに水を入れて、オフの時間に水彩画を描くんです。あとはお気に入りのCDとCDプレイヤー。中島みゆきも聴けば、美空ひばりだって聴きます。
M.E. イタリアで美空ひばり、素敵ですね。
赤峰 あと欠かせないのがスエードのブルゾン。機内でもカーディガン代わりに着っぱなしです。それと夏場はモヘアのスーツ。クリースが取れにくくて、出張には絶対に欠かせない存在です。一日着ても、風呂場にひと晩つるしておけばもとに戻りますから
(→)行きの時点で40kgを超えることも!
赤峰さんのお荷物で特筆すべきは持っていくワードローブの多さです。少しでも減らしたい荷物ですが、赤峰さんはそんなこと気にしません。行きの時点で40kgを超えることもしばしばというから驚きです。
・(上)タイは基本的に20〜25本。茶とネイビーが基本
・(下左)靴は最低3足。黒と茶のドレスシューズ、スエードのカジュアル靴が基本
・(下右)スーツは基本3着。半分に折って、肩には下着などを入れて型崩れを防ぎます
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菊池さんの三種の神器 [MEN'S EX 掲載記事]
モダンなデザインの霧吹きです
アイロン代わりのアイテムとして、出張時に欠かせないのが、こちらの霧吹きだそう。それにしても、タケ先生らしいセレクトの、とっても素敵なデザインです。
絶対に欠かせない16年愛用のバリカン
右は、2〜3日に1回頭を刈るタケ先生にとって欠かせない、お気に入りのバリカン。左は、ハサミやピンセットなどのケア用道具が入った革ケース。入れ物にもこだわります。
20年愛用のルームシューズ
今から20年以上前に購入したというトリッカーズのルームシューズ。以来、海外に行くときには、いつも持参している愛着たっぷりのアイテムです。いい感じに味が出ています。
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赤峰さんの三種の神器 [MEN'S EX 掲載記事]
イタリア用のアイロンは毎回持参
イタリアで購入したアイロンは、イタリアへ行く際、必ず持参。赤峰さんがホテルに着いて最初にチェックするのは、クローゼットの大きさと電源の位置だそうです。
CD&CDプレイヤーは欠かせません。
ホテルの部屋では、耳馴れた曲を聴きながらレポートを書いたりすることもしばしば。ヴィヴァルディ、アンドレア ボチェッリ、ジプシーキングス、バロックなどがお気に入り。
これまでに海外で50枚以上描きました
絵の具と筆、スケッチブックは毎回持参。ペットボトルに水を入れて街を歩き、お気に入りのの場所で絵を描きます。今年1月、伊のトリエステに寄って、湾を描いたもの。
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2008年02月24日(日)
OCEANS 4月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]
マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!
今月のお悩みキーワード
“今どきアメリカン”
[今月のお悩み]
クラシックな着こなしが好きですが、ほどよく流行も取り入れたいと思っています。ファッション誌に目を通すと、今シーズンはトレンドとして「アメリカ」というキーワードがよく挙げられています。しかし、アメリカ的な着こなしとはどのようなものなのかイマイチわかりません。そこで、マエストロに教えてほしいのです。アメリカ的、とはどのような着こなしなのでしょうか? (36歳・大阪府北区在住・コンサルティング会社勤務Y・Kさん)
Q.今年はとにかく「アメリカ」が大ブーム!これって、アメリカ大統領選の影響もあるのでしょうか?
馬鹿やろう!いつも思うがおまえはなんて安直なのだ。アメリカ大統領選とアメリカ的着こなしが注目されていることに因果関係などない! ファッションにはサイクルがある。端的に言えば、ここ数年イタリアがもてはやされてきた反動として、今アメリカに目が向いているということだ。ラルフ・ローレン以降、ようやく(注1)トム・ブラウンというアメリカンファッションのアイコンとなる人物が現れ、アメリカ随一の老舗ブルックス ブラザーズとのコラボレーションが功を奏していることも大きな要因に挙げられる。しかし、流行なんてものは錯覚のようなもので、アメリカ的なるものが新しいということもまやかしにすぎない。とはいえ、そういったある種のイメージに影響を受けることがファッションの魅力でもあり本質でもあることもまた事実である。これまでに幾度と語っているように流行に惑わされて自分を失うことは愚かしいが、自分なりに流行を消化して適度に取り入れるならば、それはファッションに対して積極的にアプローチしていることになる。だから、クラシック志向だからといっても、それは決して流行の移り変わりと無縁であっていいという意味ではない。ちなみに大統領候補であるオバマの着こなしはアメリカントラッドそのものだ。ジョン・F・ケネディを彷彿とさせ、誰しもが好感を得る。清潔感に溢れた、限りなくクリーンなイメージ。そこに「アメリカ」的着こなしの神髄がある。そして、その着こなしとわが国の関係は、驚くほど昔から始まっているのだ。もっと言えば、それは我々にとってとてもなじみのある存在であったと言っても過言ではない。
Q.なるほど。では「アメリカ」的な着こなしは、僕らととっても関わりが深いんですね。でも、それはいったいどういう意味でしょう?
お前、だんだんスムーズな司会進行が板に付いてきたな。日本がファッションに関して、初めてアメリカと接したのは、終戦後にダグラス・マッカサーの姿を見た瞬間からであろう。軍服から白いTシャツを覗かせ、レイバンのサングラスを掛けている様は日本のファッション文化に大きな衝撃を与えた。その後、アメリカ統治下の日本において、ヘインズのTシャツであったり、バスのローファーなど、ヤミ市のアメ横などで流通したアメリカが持ち込んだものは、豊かさの象徴となり、憧れそのものになった。そして当時、テレビから流れるハリウッド映画が多大な影響を与えた。昭和の日本の洋装とはすなわち、アメリカのファッションのことを指し、その影響にどっぷりと浸かったわけだ。そのうちに日本ではアメリカのスクールスタイルを模した(注2)VANが生まれ、読者の皆さんもご存知であろうアイビーブームが巻き起こった。豊かさの象徴であったアメリカ文化を、日本人は何の抵抗もなく受け取ったのだ。確かに今日まで続く、豊かな生活はアメリカの恩恵によるところが少なくない。だが、それらのすべてが評価できるものではないことを知っておかねばならない。アメリカがもたらした簡単で便利=コンビニエントなものは、日本の生活をスピーディなものに変えた。しかしながらそれは、一切の無駄を省く代わりにかつてそこにあった生活の「ゆとり」をも奪っていったのだ。洋服のことについても同じことが言える。アメリカの「カジュアル」という言葉は、ルールのない自由な着こなしという愚かな解釈をもたらし、T.P.O.という概念などそっちのけにして、日本人は手軽で便利なものだけを生活に取り入れていった。しかし、アメリカ的な着こなしの本質はそんなところにはないのだ。その美しさは、先ほども言ったように、清潔感溢れるイメージにあり、「着やすさ」という名の便利さを追求したようなものなどにはない。現在もアメリカ的な着こなしが注目されているが、その実態はアイビーだの、プレッピーだの、’70年代のブームの表層を焼き直そうとしているだけ。つまり、誤訳されたままのアメリカなのだ。これはアメリカが日本同様に服飾文化の歴史が非常に浅いということ、もっと言えばその中でのアメリカの立ち位置をしっかりと知らねばならないことを意味している。つまり服飾の基礎はすべて英国にあるが、アメリカは歴史ある英国には到底、敵わないと承知している。そうした中で、独自のスタイルを確立していったのだ。スーツではナチュラルショルダーやボックスシルエットなどで、心地よい着心地を求めた。アメリカには着こなしに関するハウトゥー本が数多いが、それは歴史を持たないがゆえ。英国にはそんなものはない。王室こそがファッションリーダーであり、また人々の着こなしは父から子へと代々継承されているからである。
(→)こちらはマエストロが、お忍びで訪れるというジャズ喫茶の「映画館」(TEL.03-3811-8932 東京都文京区白山5-33-19)。懐かしのジャズを聴きながらお酒やお茶を楽しめることで、ツウなジャズファンに人気のスポット。仕事の疲れを癒しながら、ビルエバンスの名曲を聴くマエストロ。
Q.そうですか。やっぱりマエストロは「アメリカ」のこと嫌いなんですね。僕も何だか嫌いになってきました!
てめぇ、ふざけるな!オレの話を聞いてやがらなかったのか!この馬鹿やろうが!私が言いたいのは、アメリカのよきところと悪しきところを理解しろということだ。何でもかんでも影響されやすい、日本人特有の、その愚かな体質を改善しろということだ。とはいえ、私もハリウッド映画や連続ドラマから素晴らしい影響を受けた。ケーリー・グラントやハンフリー・ボガードなど、彼らの着こなしは私のよき手本である。かつて(注3)ノーマン・ロックウェルが描いたニューイングランドスタイルにはアメリカの豊かなライフスタイルが現れ、その清々しい着こなしは今の時代においてもよき手本となろう。しかし、その一方で、何でもカジュアル化してしまうアメリカとは一線を画すべきだ。合理性や効率化を求めて、開発した化学繊維を衣服に応用し、例えばシワにならない平面的な服などに価値は見いだせない。スポーツウェアやワークウェアはそれで構わないが、クラシックウェアではそうはいかないだろう。トレンドとして、アメリカが注目されている今、我々が取り入れるべきは、英国流儀をアメリカ的に解釈した折り目正しい着こなし方なのだ。
Q.なるほど!では、今シーズンは全身、アメリカブランドで揃えれば万事解決するということですね!
馬鹿に付ける薬はないものか。この安直やろうが!そんなことまで説明しなければ、理解できないのか! ワードローブを総取っ替えして、全身をアメリカブランドにするなど愚の骨頂だ。あくまで、英国流儀をベースとしながら着やすくしたアメリカ、ドレスダウンしながらも品のよさを失わない服をキチンと着こなすアメリカ、それを自分なりに取り入ればいい。つまり、そんなアメリカの服飾文化を、だ。ボタンダウンシャツやレジメンタルのタイを身に着けたからといって、それでアメリカだ、それが今季のトレンドだ、などと思い込んでいるなら、今すぐ顔を洗って出直してこい。まさに流行に踊らされる。アメリカブランドが悪いわけではもちろんない。しかし、重要なのはブランドなどではない。
Q.ようやくわかりました! 我々に必要なのはアメリカ的な着こなしを自分なりに咀嚼することですね。
そのとおりだこのやろう!アメリカの服飾文化は我々日本人になじみがあり、服に関して歴史が浅いことでも共通点がある。他国で育まれた文化をどのようにレシーブするかが肝要だ。私は「和魂洋装」という言葉で、それを捉える。つまり、「和の魂」で「洋を装う」のである。アメリカの真似をしたって何になろう。日本人の独自の着こなしを求めねば。流行だからといって、アメリカ的になりすぎるのもよくない。アメリカ的なビタミン、イギリス的なビタミン、イタリア的なビタミン、さまざまな国の服に通じるカルチャービタミンをバランスよく摂ることが大事だ。その上で日本化する。私が日本人としてスーツを作っているのも、まさしくそれがコンセプト。リアル・ジャパニーズ・スタンダードを模索しているのである。アメリカンスタイルの日本製のスーツに、イタリア製のボタンダウンシャツを合わせたっていい。アメリカの流儀を自分流に捉え直すことを怠ってはならない。
(注1) 「トム・ブラウン」
1965年生まれ。2001年に自身の名を冠したブランドをスタート。2004年秋冬のニューヨークコレクションに参加。2006年にはCFDAメンズ・デザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞。2007年秋冬にブルックス ブラザーズとのコラボレーション、ブラック フリースを発表。2008年2月から梅田阪急百貨店メンズ館にて初ショップを展開中。
(注2) 「VAN」
石津謙介氏が1951年にスタートしたブランド。1960年代にアイビールックとして一世を風靡。
(注3) 「ノーマン・ロックウェル」
1894年、ニューヨーク生まれ。アメリカの市民生活を描き、最もアメリカ的な画家と言われる。
−近ごろのマエストロ−
大阪の阪急百貨店メンズ館を訪れたマエストロは、コム デ ギャルソン ジュンヤ ワタナベ マンがセントジェームスとコラボレートしているシャツジャケットを購入。「クラシックが根底にあり、クリエイティブの意図に共鳴できるブランドだ。それをモードと捉えるかどうかは、購入した人次第であろう。阪急百貨店メンズ館はモノと器は立派に揃った。課題は販売員の接客力だ。百貨店であっても、あくまで個人商店。それを忘れけなければ、おのずと結果はついてくるだろう」。
■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことをなんでも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスの上、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合はハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス G「オトナ相談室」への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。質問が採用された方の中から、抽選で毎月1名様にマエストロ直筆の“ありがた語録(「和魂洋装」)”色紙をプレゼント!
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2008年02月06日(水)
MEN'S EX 3月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.21 [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。
「今月のテーマ」
巻き物講座
この連載で、毎回巻き物をしてご登場くださっている、巻き物大好きな菊池さん。一方の赤峰さんも、巻き物をするときは見せ方にかなりのこだわりがおありのようでして。だったらそれを披露してもらいましょうということで、今回は、巻き物講座。
■(写真右)菊池武夫氏
・ウェグナーのフェルトハット
・アン・クラインのシルクスカーフ
・40カラッツ&525のヘリンボーン一枚仕立てのウールカシミアジャケット
・40カラッツ&525のシャツ
・Gスターのジーンズ
・MBTのシューズ
■(写真左)赤峰幸生氏
・アカミネロイヤルラインのプロトタイプのアスコットタイ
・アカミネロイヤルラインのシャツ
・ヴィンテージのシルクのブラックチーフ
・リヴェラーノ&リヴェラーノのドーメルのトニック生地製ス・ミズーラスーツ
・ジョン ロブのシューズ
■イタリアやイギリスではなく巻き物といえばフランス
赤峰 巻き物といえば、菊池先生ですよね。
菊池 巻き物って洋服と合わせるのが前提ですから、それなりのバリエーションが必要だと思うんです。でも、僕の場合、ルイ・ヴィトンは別として、どこのブランドのものかわからないようなものもたくさんあります。マーケットで数百円とかで手に入れたものもありますし、値段にはあまりこだわらずに色や柄で気に入ったものがあるとその場ですぐに買っています。だからそのぶん数は結構持っています。
赤峰 その中で今の気分に合っているものを選んで、使っているんですね。
菊池 ええ。この間まではストール風のものを巻いていることが多かったんですけど、ここ最近は大判のハンカチタイプを小さく畳んで巻くスタイルが好きですね。春だとそういうほうが合っているのかなと思います。あと、もうひとつ、ルールとか特に考えずに自分の好きなように巻いています。自分流の巻き方を身につけるには、やっぱりフランス人の巻き方が参考になります。映画「ペペ・ル・モコ(望郷)」とか、崩し具合っていうのかな、なんかこう絶妙にカッコよかったのを覚えています。
赤峰 巻き物っていうと、イタリアとかイギリスじゃなくてフランスなんですよね。文化の中に巻き物が根差しているとでもいうのかな。フランス人って、より自由自在に自分のイメージで巻くみたいなイメージがありますよね。
■往年の映画俳優の巻き方は大いに参考になった
M.E. 赤峰さんはあまり巻き物をされているイメージがないですよね。
赤峰 最近はあまり巻かなくなりましたけど、昔はよくやっていましたよ。一番憧れたのは、ケーリー・グラントの映画の中で出てくる巻き方で、グルグルに巻かれたストールがタートルの下からチラリと覗いているんです。巻いてからタートルネックニットを着るなんて技があるんだって思いましたね。もうひとつは映画「ジャッカルの日」で襟腰の高いシャツにかなりグルグルにアスコットを巻いているシーンがあるんですけど、それもまた凄く印象に残っています。
菊池 あの俳優はカッコよかったですね。映画として面白かったですしね。
赤峰 あとはパトリス・ルコント監督の「イヴォンヌの香り」。エルメスのだと思うんですけど、女性もののスカーフをオヤジが巻いたりしていてね。そういう文化がフランスにはあるんですよね。あと、イタリア人だとマストロヤンニ。
菊池 ああ、上手いですね。マストロヤンニはやっぱり格好いいですよね。
赤峰 映画「甘い生活」の中で、白のスーツに黒シャツを合わせて、黒のハンカチをピッと結んでいるシーンがあるんだけど、イタリア的には胸がはだけた感じをアピールして着るのが基本ですよね。やっぱりその辺に国民性が出てきます。
(→)タケ先生のここ最近のお気に入り私物
タケ先生私物。背もたれにかかっている左の3点は、70年代に流行ったレーヨンのストール。一番右のものは最近購入。座面にある右の4点がルイ・ヴィトン。座面の左は一番手前がアンナ・マトッツォ。ほかはアンティークショップや蚤の市などで購入したもの。
M.E. なるほど。ところで今日は、お二人にお気に入りの巻き物を持ってきていただいています。タケ先生、たっぷりありますね(笑)。面白いところだと、レーヨンのタイプ(↑写真・ソファの背もたれに掛かっている左の3点)があります。細くて最近はあまり見かけないタイプですね。
菊池 ’70年代にローリング・ストーンズとかがしていて、ミュージシャンの間で流行っていたやつです。
赤峰 タイ代わりにアクセントとして首に掛けていましたよね。こういうのって、シルクだといいんですけどふかつくんです。言ってみれば、落ち着きがない。その点、レーヨンだとドボッと重たい感じがして安定感が出るんですよね。だいぶ印象が違います。
菊池 僕もやっぱり垂らす用として使っています。
M.E. なるほど。次、タケ先生の大定番のルイ・ヴィトンのストールです。
菊池 これは本当に気に入っていて、かなり重宝しています。何がいいって裏と表で色が違うので、洋服に合わせるのに非常に便利でして。
赤峰 ほーう、表と裏で素材も違うんですね。羽二重とジョーゼットの組み合わせですかね。羽二重は光沢のプリントで、ジョーゼットは透かしのジャガードになっているのか。これはなかなかですね。非常に面白い。
菊池 ジョーゼットの面のほうが大抵色が濃くなっていて、重宝しています。とにかくこれは、色違いで5枚くらい持っていて、それほど気に入っているんです(笑)。
■ルールにとらわれるのでなく自分らしさを表現するのが大切
M.E. 赤峰さんはヴィンテージのお気に入りを絞り込んでご持参くださいました。
赤峰 今しているドットのやつは、アカミネロイヤルラインのサンプルで、持参した2枚はヴィンテージです。1つはシルク、1つはレーヨン。僕の場合、最近は巻き方も限られてきていますけど、いずれもあまり凝らずにシンプルに巻くのが好きですね。ただ、こだわっているのは、首の高い位置で巻くこと。必ず後ろからきっちり見えるように巻いています。その中で未だにやってしまうのは、普通にクルッと巻くだけの一番シンプルなスタイル。子供のときにスキーをしていたときの延長のスタイルを、ついつい反抗的にやっちゃうんですよね。これでいいじゃないかってね(笑)。もっと凄いバージョンのだと、イタリア人とかで肩に掛けているだけの人とかいますから。
菊池 ハッハッハッ(笑)。
赤峰 と言っても本当、老人の紳士ですけどね。で、風がピュッて吹くと「寒いね」とか言いながら、その大判のやつをグワッと巻いてね。それが凄く絵になるんですよね。
菊池 それは凄い。計算してやっているんでしょうね。ヨーロッパの人は年齢の高い人とかコートに手を通しませんものね。きっと彼らにしてみれば、ケープやマントを羽織る感覚なんでしょうね。
赤峰 あと、昔の西部劇のアラン・ラッドとかじゃないですけど、バンダナのデカいのをピッと巻いてね、あれもカッコいいですよね。日本でいうとほうきで掃くときに豆絞りをするのと同じ感覚です。
菊池 そういえば、中学生のとき、高下駄履いて手拭いを首に巻いてバンカラぶっていたことがありました。その頃から首に巻くのは好きだったのかもしれません。今でも手拭い屋で買った手拭いも愛用しています。結構お洒落でいい柄があるんですよね。
赤峰 必ずしも洋服屋に売っているものだけでなく、あまり制約を持たせずに色合わせだけ気をつけて、いろいろ試してみるといいと思います。
菊池 本当、そのとおりだと思います。
赤峰 最近、多摩川をジョギングしていて、無地のウエアにタオルを首に巻いて走ってるんですけど、タオルの色が気になって、なんでもいいよってワケにはいかないんですよね。気分によってはACミランのスポーツタオルがいいなっていう日もありますし、その感覚はストールやマフラーにもあてはまるわけです。本当、そんな感じでいいんです。
菊池 大切なのは、どういうルールがあるかではなく、どう今の自分を表現するか、そこにあると思います。
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菊池さんが好んでしている3つの巻き方 [MEN'S EX 掲載記事]
その1.正方形タイプの基本型
この日のタケ先生がしていた巻き方で、正方形の大判スカーフで使える技。1.半分に折って三角形にし、細長く畳みます。2.それを、後ろから首にグルリと巻きます。3.両端を1回結びます。4・5.それをもう1回結びます。6.完成!
その2.細長いタイプの基本型
長いストール系のもので使える技。1.長さはそのままに、幅を20pくらいに折ります。2・3、首に掛けて前で交差させます。4.交差させたほうの片側を整え、最初に折った幅にして前へ整えます。5.端をシャツの中に入れれば、はい完成!
その3.独自性のあるスタイル
非常にシンプルな巻き方で、正方形に近い形のスカーフで使える技です。1.最初に三角に折って、首の後ろから掛けます。2.それを前で一度結びます。3.それをもう1回結べば、パリっぽい、とってもエスプリの利いたスタイリングの完成!
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赤峰さんが好んでしている3つの巻き方 [MEN'S EX 掲載記事]
その1.基本は首の高い位置から
「横から見たときにストールがチラリと見えるようにします。今のシャツの台襟は高いので、首の高めの位置から巻くのがポイントです」と赤峰さん。1.首の後ろから掛けます。2.片側をグルリと1回巻きます。3.それをクロスさせます。4.完成。
その2.クルーネックからチラリ
「クルーネックのニットやカットソーからチラリと見える、上品な巻き方というか演出法です」と赤峰さん。1.ストールを二つ折りにして、後ろの高い位置から掛けます。2.交差したときにクロスさせます。3.前を整えます。4.中にしまって完成。
その3.超シンプルもあり!
「子供の頃にスキーをしていたときの巻き方ですけど、たまに反抗的にやりたくなってしまうんです」。と赤峰さん。超シンプルな巻き方です。1.これも首の高い位置から掛けます。2.交差させて一度結びます。3.ちょいと整えて、完成!
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