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メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2007年11月06日(火)

MEN'S EX 12月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.19 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
ツイードジャケットの着こなし方

カシミアと並ぶ秋冬のジャケットの定番素材といえば、ツイードをおいてほかにありません。実際、お2人ともツイードは昔から思い入れがたっぷりおありのようで、いつになくディープかつ、とってもためになる話を聞かせてくださいました。

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■(写真右)菊池武夫氏
・ボルサリーノの帽子
・フェイヴァーブルックのドクロ柄プリントのシルクストール
・40カラッツ&525の今シーズンの新作シャツ
・8年前のタケオ キクチ コレクションのツイード製ノーフォークジャケット
・ハーレーダヴィッドソンのショートレザーパンツ
・アディダスの「スーパースター」

■(写真左)赤峰幸生氏
・アカミネロイヤルラインのシャツ
・ダブリュビルのタータンチェックのウールタイ
・シャルベのシルクプリントチーフ
・ロバートソンのカシミアニット
・アカミネロイヤルラインのウォッシュをかけたライトウエイト ツイードジャケット
・アカミネロイヤルラインのサキソーニフラノ製ウールパンツ
・エドワード グリーンの「ドーヴァー」

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「'20年代〜'30年代のヨーロッパの少年を手本に、今風にアレンジしました」と菊池さん。一方の赤峰さんは、「クラシックとしての赤の差し色にこだわってみました」とのこと。この日はお2人とも非常にハイブローな着こなしを披露してくださいました。

■活用度の高いツイードJKは冬における男の基本アイテム
M.E.  撮影前、タケ先生はショートパンツを合わせたのがポイントで、赤峰さんは英国紳士をイメージしたっておっしゃっていましたが、それぞれツイードに対して明確なイメージがおありなのでしょうか?
菊池  ええ、あります。ツイードって聞くとやっぱり英国のほうに向いてしまいますよね。さらに言うと、今回は1920年代から'30年代くらいの少年たちの格好を今っぽくアレンジして再現してみたいなって思いまして。本当はツイードのショーツを合わせたかったんですけど、なかったので今日はレザーのショーツを合わせてみました。
赤峰  10代のときに銀座の矢島というテーラーで、ハイランドツイードの、今でいうハリスツイードのことなんですけど、茶のヘリンボーンのジャケットを1着作ったのを、今でもはっきりと覚えています。ツイードは男の服っていうイメージがありますよね。
菊池  僕も10代の後半で初めてオーダーしたのが、ツイードのジャケットでした。
赤峰  そういう意味ではツイードって入門編というか、男の基本アイテムみたいなところがありますよね。最近ではイタリアで織られたホカッとしたツイードも人気が高いですけど、ツイードってスコットランド、いわゆるハイランドの地域のものがベースにあって、自分的にはハイランドのツイードは毎シーズン着ていますし、毎シーズン作っています。冬が来ればハリスツイード、といった感じで、自分の中のマストアイテムになっているんです。
菊池  ビギを立ち上げたばかりのときにスコットランドをテーマにして、ツイードばかりを使ったんです。ただ、出来立てのツイードはあまりにもバリバリなので、しょうがないからすべてのツイードを水通ししてクタクタににたのを覚えています。当時、そんなことをする人は誰もいなかったから、僕が最初だったかもしれません。ツイードって時間の経過とともにアジが出るものですからね。今のハリスツイードは、だいぶライトになって着やすくなりましたよね。
赤峰  もともと3つくらいのウエイトがあるんですけど、今はほとんどがフェザーウエイトという一番軽いものになっています。軽いものだと400gくらいで、重いものだと600g、800gのハリスもあります。800gのハリスのコートを持っていますけど、(注1)オーソン・ウェルズが「第三の男」で着ていたような、体がないと生地に完全に負けてしまうみたいなね、でもこれがリアルなものなのかなってね(笑)。
菊池  よくわかります。
赤峰  シェットランド島、ハリス島は憧れましたね。あとは、アイルランド。ホームスパンにカラーネップがかかっているご存知のドネガルツイードですよね。シェットランドとハリスとドネガルの3つがツイードの御三家だと僕は思っています。本当、憧れました。
菊池  あっちのほうではツイードって正装にも用いられますよね。スコットランドで(注2)キルト巻いているのなんて、まさに正装ですものね。
赤峰  もともとハリスとかスコットランドあたりだとタータンが基本じゃないですか。菊池さんのおっしゃるとおり、スコットランド行くとキルトを巻いてアーガイルジャケット着てバグパイプ持って、ベレーみたいな帽子をかぶって、っていうのが本当のオーソドックスな正装ですよね。
菊池  そういった意味では、ツイードの活用範囲は広いと思います。
赤峰  ハンティングやゴルフなど、クラススポーツにツイードは欠かせない存在で、今日の先生のスタイルはそれをアレンジしたものですよね。
菊池  ノーフォークジャケット着て、切りっぱなしのニッカポッカにバルキーなホーズを合わせて木のクラブを持っていたのが、もともとのゴルフスタイルですから。

■10年、15年着られる服がクローゼットにあってもいい
M.E.  いきなりですが、ツイードジャケットをカッコよく着るにはどうしたらいいのでしょうか?
赤峰  菊池さんがおっしゃるように3年から5年着るとアジが出てくるんですよね。だから先生が水洗いしてしまうっていうのも本当によくわかります。くたつかせないと雰囲気がでてこないですからね。
菊池  あとは柄を今風に置き換えてもいいし、色を今っぽくしてみてもいい。ライトウエイトのツイードだったら、そういう選択をしてもカッコいい思います。
赤峰  アングロサクソンの骨太な身体にはオリジナルのハリスツイードが似合いますけど、日本人の骨格にはカシミアを入れたりして風合いの柔らかなツイードも似合うと思います。逆に、ツイードの真っ黒とかも面白い。あるいは、よく見ると明るい糸が入っているんだけどパッと見はダークネイビーっていうのも、なかなかデリケートで新鮮だと思います。
菊池  いいですよね。
M.E.  ツイードと相性のいいパンツはあるんですか?
赤峰  ミディアムグレイでクォーターミルドくらいのサキソニーだとか、キャバルリーツイルの細番手のものだったりね。個人的にはそのへんのパンツがオススメです。フランネルになってくると、クリースがきれいに入らないし、膝が抜けやすくなってきてしまいますから。
M.E.  なるほど。ツイードと聞いてイメージする人物っていますか?
赤峰  (注3)レックス・ハリスンとか、デヴィッド・ニーヴンあたりですかね。現代風だと、いかにもイギリス風のツイードの着こなしをしているなって思うのは、ダサいけど面白い(注4)ミスター・ビーンです。愚直な応用の利かない真面目なイギリス人で、あれはもうブリティッシュユーモアの典型ですよね。明けても暮れてもヘリンボーンのジャケットしか着ていないっていう(笑)。
菊池  イタリアとは全然違った意味での粋があっていいですよね。あの人は粋です。
赤峰  あと、映画「アンタッチャブル」の中でジョルジオ・アルマーニが衣装を担当していてショーン・コネリーがよれたツイードのジャケットを着ていましたけど、これまたとっても似合っていました。イギリス人だからこそでしょうね。
菊池  前にピカデリーのコーディングスに行ったんですけど、やっぱりイギリス人は今でもツイードジャケットを買っていますからね。お店がちょうど街との境目にあるんですけど、面白いことに街の中に住んでいる人はライトウエイトの生地を買っていって、田舎に住んでいる人はヘビーウエイトのを買っていくんですよね。文化に根差しているんです。
赤峰  なるほどね。やっぱり新しいものばかりを追いかけるのではなくて、10年、15年着られるものがクローゼットの中に2着、3着あってもいいんじゃないかなって思うんです。
菊池  確かに。いいものを作っておいて、自分に似合ったら一生涯着るような服があってもいいですよね。
赤峰  日本でも着物には、おばあちゃんが着ていたものを受け継ぐ文化とかあるんですけど、洋服になるとそれがまるっきりないんです。洋服もそうなってほしいですよね。ハリスツイードっていうのは、耐久性がありますから。
菊池  そこに英国とイタリアの差があるんじゃないですか。テレビや映画の衣装をやっている英国のアンティーク屋さんに行ったことがあって、'30年代、'40年代とか年代別に服が分けられてズラッと並んでいるんですけど、そこに濃紺のツイードジャケットがあって、あれは雰囲気がよかったなぁ。
赤峰  長年置いておくと脂が抜けてきてカサッとするんですよね。そのカサつき感が人工的なものではなくて、本当にいい雰囲気なんです。脂が抜けてくる頃合いがいいアジしているよねってよくいいますけれど、それは生地も人間も同じようなところがあるのかなって思いますね。
 
 

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(注1) 「オーソン・ウェルズ」
1915年ウィスコンシン州生まれ。俳優、脚本家、監督。代表作は、「市民ケーン」('41年)、「第三の男」('49年)、「黒い罠」('58年)、「審判」('63年)など。'85年没。

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(注2) 「キルト巻いて」
スコットランドの伝統的な、腰に巻いて身につけるスカート状の礼装。柄はタータンが一般的。プリーツ状にして作るので、通常8m以上の布地が必要とされています。

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(注3) 「レックス・ハリスン」
1908年、英ランカシャー生まれの俳優。映画「マイ・フェア・レディ」('64年)でアカデミー主演男優賞受賞。「クレオパトラ」('63年)ほか、多数の映画に出演。'90年没。

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(注4) 「ミスター・ビーン」
ローワン・アトキンソン(1952年、イギリス・ダーラム生まれ)演じるコメディドラマ。ツイードジャケットを着た彼のスタイルは、今やすっかりお馴染みです。

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菊池さん的ツイードJKの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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モダンな表現によるツイードスタイル

まんまクラシックを表現するのではなく、クラシックなスタイルを菊池さんなりにモダンに昇華。スカーフの上から、あえてTSのシルバーネックレスを見せています。

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ピンタック入りのシャツをラフに!

中に合わせているのは、ピンタックが入った40カラッツ&525のドットプリントシャツ。フォーマル感のあるアイテムを、裾を出してあえてラフな雰囲気で着こなしています。

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ショーツを合わせるのが気分

次の春夏でスーツの短パンを作ったそうですが、菊池さん曰く「ツイードのパンツで短パンであればパーフェクト」とのこと。この日はレザーのショーツを合わせていました。

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赤峰さん的ツイードJKの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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ハリスツイード&千鳥格子が気分

千鳥格子は、赤峰さんの今年の気分だそう。とはいえ大きい柄のものは気分ではないとのこと。同時にハリスツイードもまた今年の気分だそうです。

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赤の差し色は赤峰さんの定番

赤峰さんが差し色でよく使うのが赤。今回のニットのほか、グレイスーツ&白シャツに赤のタイをすることもしばしば。曰く、「モダンではなくクラシックとしての表現です。」

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タイとチーフでも赤を使っています

色はなるべく使わない赤峰さんですが、タイのタータンチェックに用いられている赤を拾って、シャルベの赤のチーフを差し色にしています。非常に洒落た雰囲気です。

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2007年10月06日(土)

MEN'S EX 11月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.18 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
コートで築くダンディズム

スーツ以上に男のダンディズムを表現できるアイテムといえば、コートに限ります。今回は御歳70歳、信濃屋の白井俊夫さんにゲストとしてご登場いただき、その着こなしを披露していただきました。
 

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■(写真右)赤峰幸生氏
アクアスキュータムの1941年製のトレンチコートに、ドーメルのヴィンテージのスポーテックスを使って仕立てたリヴェラーノ&リヴェラーノのスーツ、シャルベでオーダーしたシャツ、それにドミニクフランスのタイ。足元はジョン ロブの「ダービー」。
■(写真中央)白井俊夫氏
チェスターバリーの25年ほど前のアルパカコートに、フランコ バッシのシルクストール、8年前くらい前に仕立てたA.カラチェニのスーツ、それに47年前に購入したサクソンのスエードシューズでご登場。ペッカリーグローブはエルメス、帽子はボルサリーノ。
■(写真左)菊池武夫氏
カシミア70%、ミンク30%のルカ ヴェンチュリーニのコートに、ダンヒルのマフラー、約20年前に購入したエルメスのニット、ベルヴェストのスーツ下のパンツ、デュカルのスエードシューズ、クールのホンブルグ帽と、デンツのペッカリーグローブという合わせ。

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ファッション界のビッグ3といっても決して過言ではない顔ぶれ。コートを脱いだ姿も実に決まってらっしゃいます。長年の経験から導き出したそれぞれのファッションスタイルは、何よりも説得力があり、昔話にも花を咲かせていました。

■最近は軽いコートのほうに惹かれてしまう(菊池、白井)
M.E.  偶然ながら、今日着てらっしゃるコートは皆さんベージュ系です。
白井  冬だから暖色系を選ぶことは多くなりますよね。これは、イギリスから昔の資料を取り寄せて、それをもとにして25年くらい前にチェスター・バリーに作ってもらったアルパカのコートです。キャメルでも作ったんですけど、どちらもすぐに完売しましたね。
M.E.  白井さんの中で、コートスタイルのルールってあるんですか?
白井  コートの5点セットというのがあって、コートのときは、帽子、ステッキ、グローブ、マフラーは僕の中では欠かせません。でも正直、最近は今日着ているようなヘビーウエイトのコートは、ほとんど着なくなりました。
菊池  わかります。コートは結構好きなんですけど、私も最近なんとなくはまっているのは、ヘラヘラの一重仕立てのタイプなんです。
赤峰  今日着てらっしゃるコートは、ラグジュアリーな雰囲気ですね。
菊池  ありがとうございます。ルカ ヴェンチュリーニというブランドのコートで、今年の秋冬に40カラッツ&525で展開するものなんですけど、ミンクとカシミアが入っていて軽くていいんです。今日もそうなんですけど、最近は下にジャケットを着ないで直接着ることが多いですね。さっぱりしているほうがいいかなと思っていて、それでシンプルにタートルネックニットを選んだんですけど、コートだと首元が大事ですしね。マフラーをしましたけど、着こなしとしてはこれもなくていいのかなとも思います。
M.E.  赤峰さんはいかがですか?
赤峰  コートは男の特権ってわけじゃないですけど、最も分量が多いわけですから自分を表現しやすいんです。クルト・ユルンゲンスとか、イヴ・モンタンとか、アラン・ドロンとか、フレンチギャングじゃないけど硬派な雰囲気で、シリアスにビシッとタイドアップして決めたい気分だったので、アクアス(アクアスキュータムの略)の、ウエストのベルト位置の高い'40年代のトレンチコートを選びました。正確には'41年製で、自分がまだ生まれていない頃のものなんです。'50年代の気分になれるっていうか、映画を見てなんとなく想像していたものを、着用すると俳優が着ていたシーンと重ね合わせられるというか。
M.E.  赤峰さんは、トレンチコートには一家言ありそうですよね。例えば、その着こなし方とか。
赤峰  後ろで結ぶのは勘弁してくれっていうか。女の子じゃあるましし、やめてくれって感じですね。ベルトはギュッと結んで垂らすのが流儀だと思うんです。後ろで結んで垂らすんだったら、トレンチとか着てほしくないよね。
白井  ああ、あれ最高にイヤだね。イヤなこったね。
菊池  僕はポケットに突っ込みます。
白井  それはいいですよね。
赤峰  トレンチを着ていても片方のベルトが抜けてズルズル引きずって歩いている奴とかいるからね。
白井  そういう奴は、踏んづけてやればいいんだよ(笑)

■往年の俳優や紳士のコートの着方は大いに参考になる
赤峰  コートのボリュームは男らしさを強調しやすいですよね。どのコートのカッティングも前がラウンドではなくて縦にスコーンと落ちる、そこがコートの気分のよさだと思うんです。白井さんの場合、イギリス的な着方というよりはイタリアの(注1)ヴィットリオ・デ・シーカのように、なんとなくガウンっぽく軽く巻きつけたりっていうような、丸み感のあるスタイルというか、そういう感じですよね。白井さんが好きだった映画俳優っているんですか?
白井  映画俳優で好きだったのは、(注2)ゲーリー・クーパーかな。(注3)ルチアーノ・バルベラなんかは、クーパーを完全に意識しているよね。ストライプのスーツの下にニットのベストを合わせて、全く同じ着こなしをしているのを見たことがあるから。
菊池  クーパーでもの凄く印象的だったのは、「モロッコ」でしたっけ。あのときは確かトレンチみたいなのを着ていたと思ったんですけど、あれはカッコよかったなぁ。あと、アラン・ドロンのシリーズがありましたよね。「サムライ」とか今見ても面白いし、カッコいいと思います。あの辺の映画には影響を受けました。ただ、時代の中でコートも少しずつ変化している部分があって、最近は軽さの方に惹かれてしまうんです。軽いということはキチッとした形を保てないわけですから、ダラッとした中にコートの魅力を感じるっていうのかな。ただ、今でも惹かれるのは'30年代、'40年代のなで肩で少し大きくてウエストがグッと絞られていて、裾のところがボリュームがあるコートですね。あれはカッコいいと思います。
白井  ああ、いいですね。ここ一番のときは紺のカシミアのチェスターコートとか着ますけど、僕も最近は軽さを重視してしまいます。
赤峰  クルマが発達して、オフィスも暖房が利いて、温暖化も手伝ってコートがだんだんと必要とされなくなってきて、結果としてコートを作るメーカーも少なくなってきたじゃないですか。かつてはこういうコート屋があったよねっていう話が最近多くなってきましたよね。ちょっとした雨くらいなら傘を差さずにトレンチコートの前を締めてキチッと着る、みたいなヨーロッパの紳士のスタイルは個人的には好きなんですけど。
菊池  前にも言ったと思うんですけど、僕もコートのフロントを完全に締めて襟を立てて着るのは好きでしたね。
M.E.  ジェントルマンの着こなしという感じでカッコいいですよね。
赤峰  19歳のときに日本橋の丸善でバーバリーのトレンチコートを買ってきて、箱から開けてフロ桶の水にそのままつけたらオフクロにひどく怒られたのを覚えていますね。その当時で確か8万円くらいしたと思います。襟にパッカリングが出ないと気分が悪くてね。やっぱり映画の影響なんですけど、クルト・ユルンゲスとかストラップをギュッと締めて真っ黒いティアドロップをしているのに憧れていまして。1週間くらい陰干ししてから着たのを覚えています。
M.E.  恐るべき19歳ですね。
白井  当時洋服を好きだった人は若い頃からみんなそうでしたよね。僕もみんな洗ってしまいますよ。
菊池  僕もすぐ洗ってしまうんです。でも、いいですよね、そのほうが。

■自分の体温でコートを慣らしていくのがいい(赤峰)
M.E.  ところで、赤峰さんの場合、白井さんや菊池さんと違って軽いコートがいいとかそういうのはないですよね。
白井  若いもんね、まだね。
赤峰  この中では一番若いですけどね(笑)。ヨーロッパの公園のベンチに座っている爺さんを見ていると、カッコいい人がたくさんいるんですよね。もう適わないなと。こういう爺さんには足元にも及ばないなって思いますよ。
白井  昔は日本にもたくさんいたんですけどね。話はずれてしまいますけど、昔、本当にお洒落なお客さんが信濃屋にもいまして、「麻のスーツは仮に3年着るとしたら、2年は無駄に着ないとダメなんだよ。少しホケホケしたところで、あと1年で着るのが麻のスーツなんだよ」っていうのを教えてくれましたね。それはコートも然りで、アジが出てくるまでにはそれなりの年月を必要としたものです。
赤峰  そうですね。高い安いは別にして、使い込んでくるとアジが出てくるじゃないですか。そこを大事にしてほしいっていうのはあります。できたてのものは、36.5度というか、自分の体温でクセ取りしていくっていうか慣らすんだという、そういう気分です。
菊池  結局、軽いコートがいいというのは、軽さだけじゃなくて、ちょっと着ただけでも演出的にいうと、着込んでいる感じが出るっていうのもあるからなのかもしれません。ただ、これからはどうなるかわからないですよね。またガッチリっていう時代が来るかもしれないですし。

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(注1) 「ヴィットリオ・デ・シーカ」
1901年イタリア生まれ。映画俳優から映画監督に進出したイタリア映画界の巨匠。監督代表作に「自転車泥棒」、「ミラノの奇蹟」、「ボッカチオ'70」、など。'74年没。

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(注2) 「ゲーリー・クーパー」
1901年、アメリカ・モンタナ州生まれ。映画「モロッコ」('30年)で一躍スターに。「ヨーク軍曹」('41年)、「真昼の決闘」('52年)でアカデミー主演男優賞。'61年没。

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(注3) 「ルチアーノ・バルベラ」
伊ファッション界を代表する洒落者。自身のブランド「ルチアーノ バルベラ」ほか、高級生地メーカー「カルロ バルベラ」の2代目オーナー。

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白井俊夫 Toshio Shirai [MEN'S EX 掲載記事]

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1937年神奈川県生まれ。横浜の老舗洋品店、信濃屋の顧問。本牧を闊歩するアメリカ兵に憧れて育った幼少時代。白井さんのファッションの原点はアメリカにあります。クラシコイタリアを日本に最初に紹介した人物としても有名。

白井さんの着こなしテク

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ストールはあくまで無造作に巻きます

「小細工をするのは男らしくありません」と白井さん。ストールはあくまで無造作にするのが白井さん流。クルッと適当に巻いてVゾーンを隠すだけ。

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47年前に購入した英国靴です

なんと、この日の靴は47年前に購入したもの。イギリスの「サクソン」のスエードシューズです。これをカラチェニのスーツに合わせるとは、参りました。

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菊池さんの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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コートの下にはシンプルにタートル

シャツ&タイを合わせるのではなく、あえてシンプルなタートルネックニットを選んだのが、この日の着こなしのポイント。ネックレスはお気に入りのTX。

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起毛感のある服に合わせてスエード靴

パンツにベルヴェストのスーツの組下を合わせるあたりは、さすが菊池さん。起毛感のある洋服に合わせて、足元にはデュカルのスエードシューズを選択。

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赤峰さんの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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ジャケットの柄を拾ってVゾーン構築

ジャケットのガンクラブチェックの色を拾ってVゾーンをコーディネイトしています。赤峰さんのVゾーンにおける色使いには、必ず一貫性があります。

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パリを感じさせる着こなしです

靴は、名作中の名作、ジョン ロブの「ダービー」。シャルベのシャツといい、ドミニクフランスのタイといい、パリを感じさせる洒落た着こなしです。

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別冊付録「MEN'S EX Eyewear」記事 [MEN'S EX 掲載記事]

いい大人にこそ似合いますクラシックメガネ、俺ならこう掛ける
技術の進歩で先進的なデザインのメガネが現在の市場を占拠しています。しかし、いい大人にはやはりクラシックなメガネが似合うのでは?原点回帰の4タイプを、着こなし達人に“掛けこなして”もらいました。

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(↑)赤峰幸生さんが選んだのはこちら
【ウェリントン】 最厚部分はなんと8ミリ chorus
かなり太めのセルフレームによるブラックモデル。掛けるだけで意志の強さを感じさせます。まさに骨太。
2万3100円(エフェクター/オプティカルカラー クレイドル青山店)

 

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力強くシャープな雰囲気がイイのです
 スーツのトレンドであるグレイストーンの着こなしで現れた赤峰さん。選んだクラシックメガネはウェリントンタイプ。
「僕の中でウェリントンはドレスアップのイメージ。スーツを颯爽と着こなしている感じなんです。ちょうどイギリスの俳優、ピーター・セラーズみたいな雰囲気を思い浮かべます。だからスーツも英国調の張りがあるトニック。メガネのシャープな印象を生かして、ネクタイも緩みなくキリッと結ぶ感じがマッチすると思うんです」 なかでもウェリントンを選ばれたのは何故でしょう?
「今の時代はなんでも薄く軽くなっているでしょう。ウェリントンのメガネは骨太な男らしさと独特のキレがあるように思います。なかでも今回選んだ1本は、当時('50〜'60年代)流行った骨太な時代の雰囲気が再現されています。そんな力強さに惹かれたのかもしれません」
 ウェルドレッサーである赤峰さんは、メガネを着こなしの一部と考えているとのこと。
「ネクタイに合わせて赤いメガネとか、ジャケットに合わせて茶のメガネとか、いろいろ掛けて楽しんでいます」

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2007年09月06日(木)

MEN'S EX 10月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.17 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
自分のスーツスタイルの見つけ方

男だったら、いつかは自分のスーツスタイルを築きたいと憧れるものです。が、当然ながら、それは一朝一夕で身につけられるものではありません。お2人は、自分のスーツスタイルをどのように築いていったのでしょう?自らの経験を語っていただきました。近道はあるのでしょうか?

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■(写真右)赤峰幸生氏
・アカミネ ロイヤルラインの白のポプリンシャツ
・タックスの'60年代製ジャカードタイ
・アイリッシュリネン カンパニーのチーフ
・リヴェラーノ&リヴェラーノのグレイフランネルスーツ
・ジョン ロブのシューズ

■(写真左)菊池武夫氏
・五大陸ボウタイ
・ダンヒル シャツバーのシャツ
・アンティークのシルクストールをチーフ使い
・ロロ・ピアーナのスーパー120'sを使用した40カラッツ&525のオリジナルスーツ
・デュカルのシューズ



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ビシッと着たスーツスタイルは実に自然体でもの凄い貫禄があります。
まさしく男惚れするカッコよさ!
スーツに対する自論を展開してくださり、大いに勉強になりました。

■それぞれ自分を象徴するスーツの素材・色柄がある
菊池  随分前からスーツを着ることってほとんどなかったんですけど、ここ最近なんとなくスーツを着たいなと思っているんです。僕はストレートな着こなしができないので、ついついひねってしまうんですけど、そのぶんベースとなるスーツはオーソドックスなほうがいいですね。僕なりのコーディネイションで、らしさを出せればいいなと思っています。
赤峰  らしさといえば、今日はボウタイが見事に決まってらっしゃいますね。
菊池  ボウタイは前からしたいなと思っていて、僕よりも振れ幅があって面白く着ている人たち、チェックのジャケットにボウタイみたいな感じの捉え方で、着こなしてみたいなと思っていたんです。最近は海外に買い付けに行っていても、大きな流れではファッションがあまり変わっていないですから。どうにかして違う方向にもっていこうとしたときに、一番面白いのはスーツかもしれないって思ったんです。でもまだ僕自身の中で掴まえきれていないので、しばらくスーツを着てみようと思っています。
赤峰  読者の中心層のビジネスマンは何着もスーツを持っているわけですけど、彼らの中でスーツを着ることとか買うことの意識が変わってきているんじゃないかと思うんです。今までは極端な話、3つボタンのサイドベンツだったらまず無難、みたいなのがありましたよね。ただ、そういうのも一巡してしまって、(注1)クラシコイタリアも終わってしまって、消費者は今、上質感のある日常のものをベーシックに回帰して着ることを求めているんだと思うんです。ベーシックな日常に自分なりの変化をどうやってつけるのかということに、消費者の意識が傾いているのかなと。今までは生地メーカーやブランド名が上質の代名詞でしたけど、もっと全体で判断する時代になってきましたよね。
M.E.  なるほど。
赤峰  今日着ているグレイもそうですけど、(注2)より上質性の高いグレイとか上質性の高いネイビーとかね。ごくごくフツウの色にしか見えなくても、その中でも微妙な差があって、いろいろな質があるんです。
菊池  今日着ていらっしゃるずっしりしたグレイフランネルは、凄く赤峰さんっぽい感じがします。赤峰さんと聞いてイメージする素材として成立していますよね。
赤峰  ありがとうございます。ミディアムグレイのフラノは最も好きな素材のひとつなんです。菊池さんもいつもおっしゃられていますけど、スーツって、新しく作ったふうに見られるのが一番恥ずかしいんですよね。
菊池  そうなんです。私の場合、今着たばかりっていう感覚を自分で意識しだしたら、どうにも落ち着かなくなってしまいます。たとえ新調したものであったとしても、あたかもずっと着ているように見せたいっていうのがあります。だから、極端な話、スーツを洗濯機で洗ってしまうことだってあるんです。
赤峰  タケ先生はストライプっていうイメージがありますけど。
菊池  ストライプは大好きで、今日着ているような紺のストライプはとにかく多いですね。あとは、グレイ系、それにサキソニーかフラノが多いです。今日もグレイを着るかこれを着るか迷っていたんです。結局のところ、昔から同じようなものばかりを選んでしまっている。黒はほとんど着なくて、ダークスーツだったら、自分の場合はほとんどが紺。
M.E.  自分なりの色というか、イメージを作ることが大切なんでしょうね。
赤峰  そうなんです。ひと口にグレイといっても、質とか厚み色とか、もの凄く奥が深くて、それを自分の中で極めていくのが面白いんです。例えばフラノって毛羽があるじゃないですか。僕の大好きな打ち込みのしっかりしたミディアムグレイのフラノの中でも、着込んで毛羽が取れてきたフラノのほうが、自分にフィットしているっていうか、いいアジが出ていてもっと好きなんです。
菊池  10年くらい着込んでいくとそうなりますよね。
赤峰  そうなんです。そのくらい着込んでいくと、本当にいい感じになってきます。ただ、映画の中とかで、着ているのは新調したスーツなんだけれど、長年着込んでいるかのような雰囲気を出している俳優さんいるじゃないですか。ヴィンテージだろうが新調したものだろうが、見た人からはわからないっていうのが、僕の中での理想なんです。いかにもヴィンテージを着ているよ、新調したものを着ているよっていうのはちょっと嫌ですね。

■歳とともに削ぎ落としていけばいいだけのこと
菊池  自分の好きなスタイル、生地、色が1つ見つかれば、そこからスーツスタイルの奥行きが増していくと思うんです。自分が着ていた服はほとんど捨てていないので、さすがに20代の頃に着ていた服は着られないですけど、20年前、30年前の服だったら今でも着られます。好きなスタイルが変わっていないっていうのもあるかもしれません。その代わり春夏だろうが秋冬だろうが、傾向が似てしまうんです。
赤峰  私も同じです(笑)。今日着ているストライプも、夏用もあれば3シーズン着られるのもあるし、本当同じような柄が自然と揃っているんです。
菊池  ちょっと話は脱線してしまいますけど、服を着るときって、ほとんど上体や胸や肩のあたりで決まってしまうと思うんですよね。それをちゃんとするには肉体的な問題を気にしなければいけないと思うんです。自分たちが若い頃に一番気になったのは、素のカラダつきなんですよね。今の若い人たちって上手く服を着ていると思うんですけど、あまりそういうのを気にしていないと思うんです。どんな体型をしていてもいいと思うんですけど、洋服に着られるのではなく、着るほうにならなければいけないわけですから。そういう意識は、特にスーツの場合、強くもっていたほうがいいと思います。
赤峰  あと、スーツは肩が命っていうじゃないですか。上手に着る人は上着をしっかり肩に乗せているというか、安定感があるんですよね。下はヘラヘラしていてもいいんだけど、肩がしっかり収まっていることが大切なんです。
菊池  ショルダーラインっていう言葉があるくらいですからね。
赤峰  スーツを上手に着ている人ほど肩のラインがきれいに出ていますよね。上下同じでありさえすればスーツだと思って着ている人との差は、歴然としています。
菊池  それはいえるかもしれません。
赤峰  今まで着てきた20年前、30年前のスーツを、ふと思い出すことがあるんです。その中にはもちろん買って失敗したものもありましたけど、失敗の繰り返しの数ほど、そこから学んで上手く着こなしがでいるようになるものだと思うんです。安全や無難ばかりを求めてしまうと、着こなすっていう感覚が薄れてしまいますよね。
菊池  自分のスタイルを築きたいんだったら、やっぱり繰り返し着るしかないんじゃないでしょうか。自分の分身となるような洋服と、ずっと付き合っていくことが大切だと思います。
赤峰  80歳とか90歳で(注3)タイを凄くきれいに結んで、仕立てたスーツやジャケットを着ているお爺さんとかいるじゃないですか。もう「ごめんなさい」、「お見事」って感じですよね。
菊池  敵わないですよね。今になって、若い頃はなんでこんな格好をしていたんだろうって思うことがあるんですけど、とはいえそこから学ぶことも多々あったように思います。今の人たちは、世間的なことをあまりにも先に計算しすぎてしまっているんです。それだと、あまり面白くない。
赤峰  僕も今のスタイルに行き着いたのは50歳を過ぎてからですから。今思えば、50歳までは学習期でした。歳とともに削ぎ落としていけばいいわけですから。若い頃は突っ張っていろいろ着てみるのもいいのでは?




(注1) 「クラシコイタリアも終わってしまって」
クラシコイタリアがブームのときは、クラシコイタリアのみが正義みたいな風潮がありました。が、市場が成熟した現在は、もっと広い意味でクラシックなスーツが国に関係なく受け入れられるようになりました。スーツは次のステージへと突入したのです。

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(注2) 「より上質性の高いグレイとか上質性の高いネイビーとか」
左は1月号でご登場いただいたときの写真。赤峰さんはグレイのフランネル、タケ先生はネイビーのフランネルのスーツを着ています。ベーシックなものこそ、そこに求めるべきものはまず上質であるというのは、お二人の意見の一致するところです。

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(注3) 「タイを凄くきれいに結んで、仕立てたスーツやジャケットを着ているお爺さん」
タイドアップ姿がお洒落なお爺さんといえば、左の写真に写っているA.カラチェニのマリオ・カラチェニさんや、チェサレ・アットリーニさんが最初に思い浮かびます。お二人には、お洒落を超越した何かを感じずにはいられません。

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赤峰さん的スーツの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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柄のピッチを合わせています

柄ものを合わせるときは、スーツのストライプ幅とタイの柄の幅を基本的に揃えているという赤峰さん。例えば、小紋タイの小紋の間隔は、スーツのストライプの幅に合わせます。

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ミディアムグレイの英国製フランネル

秋冬の赤峰さんといえば、ウエイトのある英国製グレイフランネルが大定番。中も写真のようなミディアムグレイにに白のチョークストライプが入ったタイプは大のお気に入り。

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ロングノーズの靴は合わせません

靴はクラシックタイプを好み、ロングノーズは好みません。パンツの丈、裾幅、折り返し幅も、すべて決めています。ちなみにスリッポンはジョン ロブの日本未展開モデル。

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菊池さん的スーツの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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スーツにボウタイという洒落っ気

スーツにボウタイを合わせるあたりは、タケ先生ならではのこなしです。何を着ても、必ずどこかにヒネリが利いていて、毎回それがちゃんとタケ先生節になっているんです。

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スーツの縞色をさりげなく拾います

スーツのストライプに合わせて、シャツもうっすらパープルがかったものを合わせています。ラグジュアリーな生地のシャツは、パリで購入したダンヒルシャツバーのもの。

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コンビシューズが今の気分です

チャーチの白と黒のコンビ靴を合わせたかったそうですが、「見つからなくて」。というわけで、デュカルの靴を選択。靴のパンチングレザーにソックスの質感を合わせています。

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2007年08月06日(月)

MEN'S EX 9月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.16 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
羽織りものを素敵に着こなす方法

時が経つのは早いもので、まだまだ暑い日が続くなぁなんて思っていると、いつの間にやら涼しさを感じる季節になっています。そんな季節にあると便利なのが、羽織りもの。ただ、実際にカッコよく着ようとすると、どう合わせていいのか、案外難しかったりもします。今回は、羽織りものの素敵な着こなし方を、たっぷりとお話しいただきました。

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■(写真右)赤峰幸生氏
・'50年代のシェットランドウールのジップアップカーディガン
・ラコステのクラブラインの長袖ポロ
・ブルーシステムの5ポケットパンツ
・リヴェラーノ&リヴェラーノのUチップシューズ
■(写真左)菊池武夫氏
・ボルサリーノのキャスケット
・ヴィンテージのシルクスカーフ
・メンズメルローズのジップアップカーディガン
・ベルヴェストのパンツ(3ピーススーツのパンツ)
・アディダスの「スーパースター」リザード型押し



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今回の対談の舞台となったのは、六本木ヒルズにあるイタリアンレストラン「イル・ムリーノ ニューヨーク」。広々としたラウンジで繰り広げられたおふたりの話は、服の話から人生論まで実に多彩。大いに盛り上がりました。

■ビシッとクリースの入ったパンツは合わせたくない
M.E.  秋口に向けて、ちょっとした羽織りものがあると便利だと思うのですが、単にニットやカーディガンを羽織るだけでは着こなしがシンプルになりすぎてしまってカッコよく見えない、という読者からの悩みの声も聞きます。そこで今回お2人には、どうしたら羽織りものをカッコよく着られるのか、といったテーマを中心にお話しいただければと思います。
赤峰  羽織りものというテーマで、菊池先生も僕もジップアップニットをチョイスしたわけですが、このジップアップニットというのは非常に使い勝手のいいアイテムなんです。いわゆるシーズンアイテムじゃないから、寒いと思えば軽く羽織ればいいし、暑いと思えば脱げばいい。これからの季節にはとても重宝しますね。しかもボタンではなく、ジップアップというのもポイント。イージーに着られるので、現代のようにコンビニエントな着方が重要視される時代にピッタリです。
菊池  襟がついているのもいいんですよね。例えばトレンチコートなんかはしっかりと襟を立たせて着たりしますが、男性の心理として首のところが守られていると安心感がある。何よりエレガントに見えますし。
赤峰  わかります。首を無防備にさらしていると、どことなく落ち着かない感覚ってありますよね。
M.E.  実際、お2人の着こなしを拝見しても、襟がしっかりと立てられていて、特にタケ先生は上までビシッと閉めています。
菊池  僕の場合、タイトに着る習慣があるので、上のほうまでキチンと留めたい。でも、全部ちゃんと留めるのはイヤなんです。どこかで崩れていないと。だから今回もダブルジップのものを選んで下を開けています。こうしないと落ち着かない(笑)。
赤峰  今は、鎌が高くてフィット感があり、それによって上の分量と下の分量との差をハッキリ出す着こなしが気分ですしね。僕は今日たまたまボリューム感のあるものを着ていますが、これはヴィンテージなので、どうしてもこういうシルエットになってしまう。それこそ'50年前の(注1)シェットランドで編まれたものですから。もちろんこれはこれで味わいがあるのですが、仮に現代的に作り直してみても面白いと思うんですよね。
菊池  あぁ、いいですね。着丈を短くして、ややタイトに仕上げてね。
赤峰  そうです。簡単にいうと、ベルスタッフのブルゾンみたいなシルエットでしょうか。袖はちょっと前振りで長めの丈にして、襟はグッと立たせる。腰周りも絞ってスリムにしたらカッコいいと思います。
M.E.  それから、おふたりともカジュアルなパンツを合わせているのが面白いと思いました。
菊池  僕のは、以前「(注2)マフィアの着こなし」(2007年2月号)をやったときに着ていたスリーピースのパンツ。わざとクリースを消してちょっとカジュアルにしています。そもそも僕は根が結構マジメでして、どこかキチンとしだすと全部しないといけないと思ってしまうんです。そうなりたくないからどうしても崩したくなっちゃう。
赤峰  確かにバランスを考えるとそうですよね。僕もジップアップニットに関しては、ビシッとクリースの入ったパンツで穿きたいとは思わない。ジップアップニット自体、お洒落なアイテムになりがちなので、ヘンに小洒落て見えてしまうのがイヤ。もっとラフにしたいですよね。だからイタリアでよく見るんですが、クリースの入ったパンツにカシミアのジップアップニットというスタイルは、クラシックではあるけど、妙にお行儀がよすぎて僕はあまり好きじゃないですね。
菊池  じゃあ、その格好にタイドアップなんてしたら許せないんじゃないですか?
赤峰  あぁ、それは一番嫌いです。タイドアップしてジップアップニットを羽織って、その上にジャケットを着るスタイル。これもイタリアに行くとよく見るんですけど、もうノーサンキューです(笑)

■その国の文化や街の匂いといったものに興味がある
菊池  僕は上まで留めているけど、やはり羽織りものである以上、サラッと開けて着るのもいいと思います。ただ、それにはある程度首が太くないとサマにならないような気がします。でないと、ちょっと印象が弱々しくなっちゃうと思うんです。
赤峰  先生は首周りに対する意識が高いですよね。誤解を怖れずいうなら、そこさえ決まってしまえば、あとはもうなんとかなるぞっていうノリが先生にはあるような気がします。そしてそれこそが菊池武夫的着こなしのキモだと僕は見ています。違っていたらごめんなさい(笑)。
菊池  いえいえ、図星ですよ、本当に。逆に赤峰さんの場合、どちらにも対応できる感じがありますよね。そのときの気分でいろいろとできちゃう感じが。
赤峰  そうですね。イギリスに行けばイギリスっぽい気分で着るし、イタリアへ行けばイタリアっぽく着る。その時どきに応じて切り替えていく、そんな感じはあります。だから読者の人たちには、きれいめに着ようとするときに、クリースの入ったパンツを持ってくればいいという発想ではなく、そこからもう一歩、今までとは違う意識で着てみてはいかがでしょうか、といいたいですね。
菊池  うん。クリースが入っていると、パッと見洒落てるんだけど、当たり前すぎるというか、なんだかあまり深みがない。つまらないですよね。
M.E.  また、羽織りものには、ジップアップニット以外にカーディガンもありますけど、カーディガンを上手に着るのは意外に難しいのではないかなと思うのですが。
赤峰  そうかもしれませんね。カーディガンというと、ウーステッドの梳毛のものが一般化していますけど、ローゲージのカーディガンもありますし、ボタンにしたってローボタンもあればハイボタンもある。たくさんのバリエーションが用意されていますからね。ただ、若い人たちの中には、カーディガンをジジくさい、という人もいる。そのジジくささが逆にカッコいいんだけどなぁ。
菊池  そうですよ。今の時代はそういう発想だと思います。僕自身、基本とか、無難とか、そういったものから極力ハズれるようにやってきましたから。もちろん、この場合はこう着る、という基本があるのは頭ではよくわかっているんですよ。でも、それをそのまま鵜呑みにするんじゃなくて、必ず自分なりのスタイルを作り上げたいと思うんですよね。
赤峰  いやぁ、よくわかります。若い時分から(注3)英国的伝統をキチンと見て、それから(注4)フレンチのとっぽさを見て、(注5)アメリカのイージーさも見て。そうした蓄積を通して、現在の先生のスタイルというのは出来上がってきているわけですよ。だから若い人にいいたいのは、単に見かけを真似するのではなく、自分なりの歩みで自分なりのスタイルを見つけてほしいってこと。
菊池  うん。少なくともそういった意識はもっていてほしいですね。
赤峰  となると、大事なのは内面の充実でしょうか。外見をどんなに飾っても、やはり内面が磨かれていないとそれなりにしか見えてこない。ある意味で洋服以上に気を使わないといけない部分だと思うんです。
菊池  そう思います。よくいわれていることだけど、それは真実ですよ。服だけじゃなくて、アートとか音楽とか料理とか、いろいろなものに対して幅広く興味をもつことで、服の着こなしも間違いなく変わってくる。佇まいに滲み出てくるんです。
赤峰  服はやはり文化のひとつですからね。先生も僕も、その国の文化に興味があるわけですよ。もちろんどんな着こなしが流行っているかということもチェックしますけど、それ以上にその国の文化や街の匂いといったものに興味があるんです。




(注1) 「シェットランド」
スコットランドの北にあるシェットランド諸島が原産地のウール。シェットランドシープのウールは軽くて柔らかく、1頭でさらに何色もの色をもっているのが特徴。その原毛を紡いで島内で編んだものがシェットランドニットです。

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(注2) 「マフィアの着こなし」
2007年2月号の連載のテーマは「マフィアの着こなし」。このとき菊池さんは、ヴェルベストの3ピーススーツを着てご登場。スーツのときはビシッとクリースが入っていたものの、今回は同じパンツでクリースをとってご登場。
(MEN'S EX 2007年2月号記事→)

(注3) 「英国的伝統」
英国は流儀の国で、服を着ること、紅茶を飲むという行為一つにも、そこには流儀があります。この流儀こそが、英国の伝統と格式を守ってきたという意味。


(注4) 「フレンチのとっぽさ」
パリでのナンパや話の場はカフェにあり、カフェには男と女がツッパってカッコよく見せようとする文化、自分を主張するためのパフォーマンスがあるという意味。


(注5) 「アメリカのイージーさ」
スラングで簡略化した言葉がいい例ですが、アメリカはなんでも簡略化してしまう文化があります。英国とは反対の、崩した、イージーな空気が根底に流れているという意味。

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赤峰さん的ジップニットの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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さりげなく色を合わせています

襟に入った黒のラインとインナーに着た黒のポロ。さりげなく色を合わせるとは、さすが赤峰さん、ニクイです。また、襟は無造作に立たせると、カッコよく決まるそうです。

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黒とエクリュでまとめました

2色以上は原則使わないのが赤峰流。今回もエクリュと黒で上品にまとめています。ちなみにこのカーディガン、50年前のシェットランドで編まれたものだそうです。

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5ポケットでもドレスシューズを

カジュアルなイメージのある5ポケットパンツですが、足元にあえてドレスシューズを合わせています。大人のエレガンスをキチッとキープしているあたりは、見習いたいところ。

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菊池さん的ジップニットの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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首周りが実にオシャレです

タケ先生のトレードマークといえばスカーフ。今回は'60年代のアンティークを合わせてみたとのこと。また、首から掛けた2本のメガネも実に洒落たアクセントになっています

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ダブルジップで表情をつけます

どこか遊び心のある着こなしがタケ先生のスタイルです。カーディガンもダブルジップをチョイスし、下を開けて着こなしに動きを出しています。中に合わせたTシャツがチラリ。

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クリースを消したスーツのパンツ

第9回「マフィア」の回で、タケ先生が着用していたベルヴェストのサキソニーフラノの3ピーススーツ。このパンツ、実はそれ。今回はクリースを消してラフに穿いています

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2007年07月06日(金)

MEN'S EX 8月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.15 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてお互いのファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
サマージャケットを涼しく着る方法

暑いからといって、ついついラクな格好をしがちな夏のファッション。
が、果たしてそれで本当にいいのか?
そんなワケで今回は、お2人にサマージャケットを着る意義と、それを涼しく着る方法を伝授していただきました。

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■(写真右)菊池武夫氏
・アンティークの帽子
・フェイヴァーブルックのドクロ柄のスカーフ
・40カラッツ&525のコットンリネンシャツ
・40カラッツ&525のシルクリネンウールのジャケット
・レデストのホワイトジーンズ
・レ ユッカスのスエードシューズ




■(写真左)赤峰幸生氏
・リヴェラーノ&リヴェラーノでス・ミズーラしたリネンシャツ
・ドリアーニのフレスコタイ
・アカミネ ロイヤルラインのシアサッカージャケット
・リヴェラーノ&リヴェラーノのコットンツイルのパンツ
・エルメスのエスパドリーユ



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それにしても、絵になるお2人です。対談にも出てきた畝のあるジャケットの素材が、お2人の着こなしをとっても涼しそうに見せています。

■ヨーロッパではサマージャケットは必須アイテム
菊池  サマージャケットって、カタチよりも、まず素材が一番大切ですよね。
赤峰  そうですね。サマージャケットといえば、やっぱり綿、麻、綿麻素材に限ります。なかでも(注1)シアサッカーとかコードレーンっていうのは、必要不可欠な素材ですよね。イタリア的には“CON GIACCA”というか、ジャケットは羽織るのがスタイルの基本みたいなところがあって、シャツ1枚でもシャツなりのよさがありますけど、人前に出るとなると、季節は関係なくジャケットを羽織って初めてスタイルが完成するというのがありますよね。そういった意味で、サマージャケットは必要不可欠なアイテムなんです。
菊池  英国でアフタヌーンティーを楽しもうと思っていいホテルに入ろうとしても、ジャケットを着てないと絶対入れてくれないじゃないですか。昔はたぶん、帝国ホテルとかでもそういう決まりがあったんでしょうけど、最近はそういうのもなくなってしまいましたよね。ジャケットを着るというのは、自分を正すという意味もある程度はあるので、着る着ないは別として、いつでも持っているっていうのが必要だと思います。
赤峰  そうですね。それはシャツジャケット的な気軽に羽織れるものでもいいし、もちろん、きちんとしたテーラードでもいいし、要はジャケットという1つの羽織れるアイテムを持っていることが重要なんです。これは英国に限ったことではなくて、イタリアでもカメリエーレがタキシードを着ているようなリストランテでは「ジャケットお持ちですか?」って必ず言われますから。
菊池  確かに。あとイギリスの場合、ジャケットがない人には、貸しジャケットがありますよね。それも凄くダブダブのやつ。あれ、わざとダブダブなのを用意しているんです。
赤峰  そうそう。
菊池  もの凄い派手なブルーのやつだったりね。こいつはジャケットを持たずに来たんだぞっていう見せしめみたいなものですよね。ほかの国だと、そういうのはあまりないですけど。
赤峰  どこに出るのでもジャケットを着ていれば、恥ずかしい思いをすることはないですよね。
M.E.  確かにジャケットを着ているときっちり見えるんでしょうけど、日本の気候を考えると、少なくとも物理的にはどうしても暑くなってしまいます。涼しそうに見せるにはどうすればよいのでしょうか?
菊池  やっぱり素材の雰囲気で涼しく見せるということでしょうか。最初に赤峰さんが言った、綿、麻、綿麻。綿はコードレーンだったり、シアサッカーだったり。
赤峰  縦縞っていうのもキーワードになります。サッカーの縞だったり、コードレーンの縞だったり。浴衣もそうですけど、縞ものの柄っていうのは夏場に最適なんです。
菊池  ブルーの色も清涼感を演出してくれますよね。薄い茶色とかエンジとかもありますけど、やっぱり夏はブルーかなと。
赤峰  素材でもより詳しくいうと、クリスプといって、いわゆる強撚でシャリ感が出るヤツがいいですよね。小千谷縮とか越後上布とか浴衣の柄もまるっきり同じで、素材に畝があると生地が肌に全部ひっつかないですから、その分清涼感が保てるんです。素肌に対する密着度が違うんですよね。空気が入るスペースが素材の中にあることが大切なんです。
M.E.  より涼しく見せられるストライプ柄ってあるのでしょうか?
赤峰  ストライプの柄に関しては、あまり関係ないと思います。ただ、カラダが大きめの人はストライプのピッチが広くてもバランスが保てるでしょうし、細い人がピッチの広いものを着たらストライプが勝ちすぎちゃってジャケットに負けてしまうっていうのはありますよね。
M.E.  中に合わせるアイテムも重要ですよね。
菊池  シャツでいうと、(注2)ローン、ボイル、リネンのシャツなんかが夏の定番素材です。このへんの素材って、夏に着るには本当にいいですよね。ただ、クオリティの高いものを選ばないと意味がないですけど。
赤峰  コットンのオックスフォードとかだと、ちょっとぽってりしちゃって、夏場のジャケットには合いにくいかなっていう気はします。
M.E.  涼しい格好をしたいときってラフなほう、ラフなほうへと行きがちですけど、菊池さんはいつも必ずスカーフを巻かれていますし、赤峰さんもタイドアップしています。物理的には暑くなりますけど、お2人ともむしろ涼しげな感じが漂っていますよね。
菊池  完全にダラーンとしちゃうと自分も気分的に暑いし、相手から見ても暑くなってしまいますからね。
赤峰  最高なのは「ベニスに死す」の(注3)ダーク・ボガードじゃないけど麻のスーツをビシッと着てタイドアップしたスタイルか、アメリカ的にいうと「卒業」のときの(注4)ダスティン・ホフマンのサッカーのジャケットにニットタイをするみたいに、締まっているほうがカッコいいですよね。1ついえるのは、色が白い分だけ先生はスカーフで、僕はタイでという風に、やや濃いめのものでアクセントをつけないと、ボケボケになってしまうんですよね。メガネでもなんでもいいんですけど、締めるものを入れないと、顔のボケ感が出てしまうんです。
菊池  首の周りに巻くと当然体温が上がりますから暑くなりますけど、お洒落のためには我慢しちゃうんですよね。ジャケットを着るってことも結局は同じです。その辺は一線を画して、ビシッとしていたほうがいいかなって思いまして。実際、着ている本人は思ったよりも暑さを感じないですし、相手にも暑さを感じさせないと思うんです。
赤峰  我々日本人って「暑いですね、寒いですね」と、お互いに季節を語り合うことで挨拶するっていうのが日常じゃないですか。着ていても常に気持ちは涼しげでいるっていうのが大切だと思うんです。「暑いよなぁ」って自分で思っていると、どんなにカッコよく決めていても周囲からはカッコよく見えないんですよね。気の持ちようっていう言葉がありますけど、自分の立ち姿として、それって凄く大事なことだと思うんです。
菊池  役者で本番が始まると汗がピタッと引っ込む人っていますよね。それと同じで、意外と精神的な部分に左右されるところって確かに大きいですよ。
赤峰  暑いからといってシャツ1枚、Tシャツ1枚でいても、結局のところ出るところを憚るじゃないですか。
菊池  自分の問題よりも、全体の中での調和が大切なんですよね。
赤峰  昔的にいうと、失礼があってはいけない、人前に出るっていうのはそういうことなんですよね。「夏は氷屋、冬は炭屋」といって、冬は炭屋をやっている店が夏は氷屋になるという言葉がありますけど、それにたとえて、僕の中では「夏はシアサッカー、冬はハリスツイード」みたいなところがあるんです。サマージャケットは必須のアイテムじゃないかなと思います。最初の1着は紺ブレを持っている人が多いと思うんですけど、2着目のアイテムとして、シアサッカーかコードレーンのジャケットは持っていてほしいですよね。コードレーンやシアサッカーって、日焼けした肌との相性が凄くよくて、皮膚の色とのコントラストにより効果が出ますから。
菊池  あとはリネンですね。僕は麻が大好きなんですけど、今着ているような感じで、柄などで視覚的に涼しさを感じさせるっていうのも大事かなって思います。夏にあえて黒いものを着るのもカッコいいですけど、やっぱり暑いですから。ヨーロッパだと、圧倒的に麻、サッカーが多いですからね。麻の色はやっぱり生成りの無地のものが一番です。
赤峰  コードレーンはその次くらいですかね。コードレーンを好むのってアメリカ人が多いんです。
菊池  まさにそのとおり!
 
 
(注1) 「シアサッカーとかコードレーン」
ともにサマージャケットの代名詞的服地。シアサッカーは縮れのある縞柄、コードレーンは細い畝のある織地の一種で、ともにコットン、ポリエステル混、レーヨン混などが一般的。また、色はどちらも白地にブルーが定番。


(注2) 「ローン、ボイル」
ともに夏のシャツ地を代表する生地。ローンはハンカチなどに使用される細番手の糸を粗めに織った平織りコットン地。ボイルは強撚の糸を綿密度を低くして織った、サラリとした肌触りが特徴の薄手の平織りコットン地。

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(注3) 「ダーク・ボガード」
1921年ロンドン生まれ。劇場の大道具係から俳優に転向した異色の経歴の持ち主。代表作に、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「地獄に落ちた勇者ども」('69年)、「ベニスに死す」('71年)などがあります。'99年死去。

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(注4) 「ダスティン・ホフマン」
1937年ロサンゼルス生まれ。舞台での活躍がマイク・ニコルズ監督に認められ、映画「卒業」('67年)で主役に抜擢。「クレイマー、クレイマー」('79年)、「レインマン」('88年)で、アカデミー主演男優賞を受賞した名俳優。

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菊池さん的ジャケットの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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スカーフは365日必須のアイテムです

真夏といえども、菊池さんはスカーフを欠かしません。「凛とした表情をしていれば、決して暑そうには見えないし、自分も不思議と暑さをあまり感じないんです」と菊池さん。

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シャツの裾は出して着るのが菊池さん流

引き締めるところは引き締めて、緩くいくところは緩くいくのが菊池さん流。「シャツは基本、いつも裾を出して着ているんです」。それでもエレガントなのは、サスガです。

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チェーンの先には懐中時計!

菊池さんの小物使いの上手さには、いつも学ぶことが多々あるのですが、ジャケットにつけたチェーンの先には懐中時計が。ちなみにブランドは、リージェント・ルイス。

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赤峰さん的ジャケットの着こなしテク [MEN'S EX 掲載記事]

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涼感ある素材同士を組み合わせています

ジャケットはシアサッカー、シャツはリネン、タイはフレスコ織りと、夏の代表素材を絶妙にミックスしています。タイの色でスタイリングの表情を引き締めているのがポイントです。

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カフの絶妙なロールは見習う価値アリ!

シャツのカフをさりげなくロールして、アンティークの腕時計をチラリと覗かせています。「アニエッリのようにカフの上から時計をするのは、みんなやっているから」と赤峰さん。

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エスパドリーユが非常にエレガント!

足首を紐で結ぶようになっていて、脚を組んだとき、かなりの注目を集めるエルメスのエスパドリーユは、パリで購入。素足で合わせて、とても涼しげかつエレガントな印象です。

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業界のお洒落番長が選んだ休日お洒落になれるアイテムはコレ! [MEN'S EX 掲載記事]

人気連載「Be Buffalo Forever!」の菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界のお洒落番長であるお2人が、最近購入したモノの中でのお気に入りアイテムとは?

 

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■菊池武夫さん
 
・買ったモノ 「40カラッツ&525のレザージャケット」
・購入動機 「16年の時を経て製品化されたお気に入りのデザインだったから」

'91年にタケオ キクチのショーで登場し、製品化されなかったデザインのレザージャケットを、40カラッツ&525で復刻。当時から気に入っていたデザインなので、もちろん購入。軽くてしなやかなシープスキンでコーディネートも万能ゆえ、ここのところ大活躍中です。

非常に満足しているので散財にならないんですけど、いいんですかね(笑)。であれば40カラッツ&525で今季出したレザーブルゾンをよく着ています。'91年に西麻布のアトリエでタケオ キクチのショーをやったときと同じデザインで、当時のパタンナーにデザイン画を見ながら思い出してもらって今回初めて製品化したんです。薄くて大変しなやかなところと、ライトグレイの色が気に入っています。あまりきれいに着るのは好きではないので、買ったあとにわざと洗濯機で洗ったんです。だいぶ雰囲気が変わったでしょう?

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菊池さんの今の気分であるライトグレイのシープスキンを使用したレザーJK。「襟のラインがきれいで、全部留めて着てもカッコいいし、使い勝手のよさも抜群なんです」と菊池さん。26万2500円(40カラッツ&525/40カラッツ&525青山店 TEL.03-3408-8562)
 
 
 
 
 
 

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■赤峰幸生さん

・買ったモノ 「エトロのポロシャツ」
・購入動機 「『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンをイメージさせる服だったから」

ひたすら映画からインスピレーションを受け続けてきた赤峰さんらしく、「映画『太陽がいっぱい』でアラン・ドロンが見せたスタイルは、私の夏の定番スタイルになっていますが、これはまさにそれを象徴するシャツだと感じてひと目惚れして購入しました」。


映画『太陽がいっぱい』でアラン・ドロンがプリントのシャツを着て出てくるシーンがあって、夏になって日焼けして浅黒くなったら、『太陽がいっぱい』風に着たいなという気分が、このエトロのプリントポロを買った理由です。今日はシアサッカーのパンツを合わせていますけど、バミューダショーツに素足でモカシンのスリッポンを履いてっていうのが、僕的な夏のリゾート地でのイメージなんです。もちろん、イタリアに出張で行って、土日にフラリと街を散歩するときなんかも、こういう格好で街を歩いています。

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「赤は赤でも濃いめの赤が、僕的に好きな色だったのと、自分の夏のテーマである『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンのイメージにぴったりだったから」と赤峰さん。ペイズリー柄をプリントしたコットンポロシャツ3万9900円(エトロ/三喜商事 tel.03-3238-1385)

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 Permalink  コメント ( 0 )

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赤峰 幸生 (あかみね ゆきお)

● イタリア語で「出会い」の意のインコントロは、大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年秋冬からは『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。平行して、(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界を舞台に活躍。 Men’s Ex、OCEANSに連載。MONOCLE(www.monocle.com)、MONSIEUR(www.monsieur.fr)へも一部掲載中。

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