2012年11月17日(土)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘Vゾーンの色は足さずに拾う’』2012年11月17日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
前回に続いて「Vゾーン」について考えます。今回はスーツ、シャツ、ネクタイの色をどう組み合わせていくと格好良くまとまるのか、お伝えしましょう。
テレビによく出てきますが、政治家のネクタイ選びを参考にしてはいけません。赤や黄色、オレンジなど「勝負タイ」と称して目立とうとし、ネクタイだけが浮いたように見える。スーツやシャツの色との組み合わせで楽しむ発想が見えません。また、「これはエルメスだから」とブランドもので安心してしまうような選び方も感心しません。
Vゾーンを考える時にも思い出したいのが、「男の三原色」です。白からグレーの無彩色と青、茶の3色を組み合わせるのが基本になります。そのほかの色はアクセントとして分量を控えめにするのが原則です。
例えばネイビーのスーツを着た時に、ライトブルーのシャツ、青系のネクタイで色を統一し、濃淡でまとめれば間違いなく決まる。青と茶も非常に相性がいいので、茶系のタイもいいでしょう。この時、スーツやシャツの色を拾って、ネクタイにブルーのストライプが入っていると、違和感なくまとまります。
つまり、Vゾーンの組み合わせは、色を足すのではなく、「拾う」のが基本。青に白のラインが入ったスーツに白のシャツ、青地に白のレジメンタルタイといった組み合わせは互いに色を拾うので、抜群になじむのです。
無彩色を除いて、色は2色までに絞るのが、スーツスタイルの基本です。ネクタイは迷うほど色々な柄がありますが、いったん「ソリッド」と呼ばれる無地のタイに立ち返るのもいい。原則が感じられるVゾーンが粋ですね!
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*朝日新聞社に無断で転載することを禁止します。
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2012年11月03日(土)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「魔のVゾーン」はまずバランス’』2012年11月3日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
上着とシャツ、ネクタイで作る「Vゾーン」。スーツを着こなす上でパッと人目につくキモの部分であり、頭を悩ませる人は少なくないと思います。私もひそかに「魔のVゾーン」と呼ぶほどで、ゆるがせにはできません。
アイテムの組み合わせの前にまず考えたいのは、Vゾーンの面積やバランスです。肩幅や顔の大きさは人それぞれ異なり、またスーツのデザインによってVゾーンの開きや深さもまちまちです。狭すぎても広すぎても格好が良くない。深さはみぞおちが基本で、5a下までが許容範囲でしょうか。とにかく試着を繰り返し、何度も鏡で見て、しっくりくるバランスのスーツを選んでください。
胸の前にあるスーツの折り返しをラペル(下襟)と言います。このラペルはスーツの表情を形作る部分で、標準の幅は7.5センチから8センチ程度。これより細いものはモダンでスマートな印象に、太いものは押し出しの強い印象になります。太めが流行ですが、自分の好みを大切にすればいいでしょう。
少しマニアックな話になりますが、ラペルには上襟と下襟をつなぐ「ゴージライン」という線があります。近年のトレンドとして、この線が非常に高い位置に置かれ、姿勢が反り返ったような印象さえ与えたものですが、これも少しずつ従来の位置に戻ってきたようです。
この秋もイタリアに足を運びましたが、英国を源流とするクラシックなデザインを見つめ直そうという機運を一層強く感じました。流行をむやみに追うことなく、長く着られるデザインを選ぶことが大切です。
次回は、スーツとシャツ、ネクタイの色合わせについてお伝えしていきます。
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2012年10月20日(土)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘お薦めの生地選び’』2012年10月20日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
これまで2回に渡って「クラシック」への回帰についてお伝えしてきました。正統的でエレガンスを感じさせるスタイルにぜひともトライしたいという方に意識して頂きたいのが、スーツの生地の選び方です。
大量生産時代の生地は、「紙」のような質感で、ペタッとしていて立体感がありません。軽く、薄く、柔らかいのでヒラヒラした印象です。
それに対して丁寧に時間をかけて作られた布には「膨らみ感」があります。生地自体に重みがあって沈むので、「落ち感」もあって美しく見え、パンツのクリース(折り目)もピシッと決まってひざが出ない。こうした服を着込んで生まれる味わいには代え難いものがあります。
日本では新しい服を身につければ、おしゃれだという誤解が根強いように思います。その結果、次々と新しいものを買い、古くなったものを捨てるという「消費」の考え方が支配的になってしまいました。でもそれは「着せ替え人形のシャレ感」ではないでしょうか。
私は家具や食器のように、使い込んでこそ味が出るものこそを「いい服」と呼びたい。スーツなら3年は当然、できれば10年着るという文化を育てていきたいという思いで仕事をしています。
ずっと着ている間に自分の「皮膚の一部」として、宝のように思える服がいい。ですからスーツを選ぶ時も、お薦めするのは、繊維が細く柔らかい素材ではなくて、「バリッ」とした印象のしっかりした素材です。「これを体温でなじませながら、自分のものにしていきましょう」とアドバイスしています。
クラシックを意識するなら、重みのある素材を選ぶのが粋です。
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2012年10月06日(土)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘クラシックを意識するなら’』2012年10月6日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
前回はカジュアル化が進んだファッションの世界に芽生えた「クラシック回帰」という動きについてお伝えしました。特に意識されるのは、紳士の楷書体とも言うべき基本が確立された1920年代から30年代ですが、かの時代にはピカソ、チャップリン、ダリ、ゲーリー・クーパー、フレッド・アステア、ウィンストン・チャーチルと、各界にダンディズムを体現する男たちがいました。ジャン・コクトーらがパリのカフェで文化を熱く語り合った時代です。
近年、ジャケットとスラックスを組み合わせて楽しむ「ジャケパンスタイル」が広まりましたが、ジェントルマンの基本はやはりスーツ。シングルでもいいしダブルブレストのスーツもいい。上衣は全体にフィットし、スラックスはゆったりしたバランスが目立ちます。
シングルのスーツでも上着のボタンは三つよりは二つ、上着の背に入る切れ込みはサイドベンツよりはセンターベントにクラシカルな雰囲気があります。ラペル(下襟)の幅も9〜10センチとやや広めで、服の存在感が強調されています。先端が上向きにとがっている「ピークドラペル」もクラシックな装いを感じさせるディティールだと言えます。
中に着るシャツの襟は近年、襟先がやや広めのワイドスプレッドが一般的ですが、クラシックを指向するなら襟先が長いナロー(狭い)カラーがいい。
こうした「楷書体」とも言える基本的な服は、流行に左右されないロングライフデザインです。カジュアルで軽い装いが増えた中で、パリッと決めるのが粋。次回は着こんでいくほどに味わいが増していく「価値ある生地」についてお伝えしましょう。
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2012年09月22日(土)
朝日新聞be on Saturday『赤峰幸生の男の流儀‘「クラシック回帰」という潮流’』2012年9月22日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
秋冬の装いへと関心が移る中、私が注目しているのは「クラシック」へと回帰する時代の潮流です。
このところファッションはどんどんカジュアルになっていました。ジーンズの大流行があり、洗いざらしたように見える加工やダメージ加工が施されたものがもてはやされました。着古したように見せる「ビンテージタッチ」はここ数年、本来はドレスアイテムであるジャケットやシャツにも及んでいたのです。
私には、即席で「こなれ感」を求める、まやかしのようにしか思えませんでした。電子レンジや携帯電話と同じ“押すだけ”の「コンビニカジュアル」です。
ただ、6月にイタリアのフローレンスで開かれた2013年春夏服の国際見本市「ピッティ・ウオモ」では、余計な加工を施さないシンプルな「原点服」に注目が集まりました。ツイードのような重厚な素材と、例えば上襟がとがったピークドラペルのようなデザインに「クラシック」への回帰が見えました。紳士服の基礎が出来上がった1920年代や30年代のスタイルにもう一度戻ってみようというのです。
この原点回帰とも言うべき流れは、映画の世界にも見て取れます。アカデミー賞を昨年受賞した「ザ・アーティスト」は1920年代の米国が舞台。今春に公開されたウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」も同年代にタイムスリップする話です。
日本では今、直し屋さんが大繁盛。おじいちゃんの服といった、真にビンテージな服が人気です。2着でいくらのスーツも結構ですが、この秋は息子や孫にも譲れるクラシックな服を探すのが「粋」ですね。
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