2014年08月23日(土)
朝日新聞土曜版be 赤峰幸生の男の流儀 『豊かさ問い続ける』 2014年8月23日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
綿や麻といった、人間の生活とは切っても切れない自然素材への再評価が続いています。
綿には人類が誕生して以来、5千年の歴史があり、人間はリサイクルを重ねて身に着けてきました。江戸時代でさえ、はぎや継ぎといった手法で、長く愛用してきたのです。そのつつましい生活は、生きることの奥深さを教えています。
戦後に広がった大量消費のアンチテーゼとして、「もう一度、古き良き時代に帰ろう」という心情が、皆さんの心の中に芽生えているのではないかと思います。原子力発電や地球温暖化など時代の困難に対し、処方となる生き方が、昔の私たちの生活にはあるのです。
最近のファッションの世界では、「モテるかどうか」といった物差しで、「新しい」とうたう商品の提案が続いてきました。しかし、6カ月後には古びてしまい、恥ずかしくて着られないような服は、本来は必要ありません。現在のモードは、高額消耗品に堕していないかと疑問に思っています。
ここには、米国でMBA(経営学修士)を取得した経営者が、服という文化を金融と同じような感覚で扱っていることの問題があります。いつまで経っても味が出てこないピカピカのバッグを次々に所有させ、階級や資産で人を測る世界にげんなりとします。そこには貧しくとも豊かな生き方を模索する、「武士は食わねど高楊枝(たか・よう・じ)」という考え方は存在しないのです。
欲望がどんどん肥大化して、だれもが満たされないまま、突き進んでいく世の中でいいのでしょうか。いえ、既に多くの人が答えに気づいていると、私は思っています。服を供給する側こそが、変化への対応を迫られているのです。消費者は厳しい目で見ています。
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Posted by インコントロ STAFF at 09時00分 コメント ( 0 )