AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2009年01月24日(土)

OCEANS 3月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛・・・・・・などなど。30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆様の“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に! 教えてっ、マエストロ!


今月のテーマ
“格好いい男”

[今月の質問]
いつも「オトナ相談室」を楽しませてもらっています。赤峰さんは私の心の師であり、そのお考えに心が大きく揺れ動かされること決して少なくありません。そこで、私がお聞きしてみたいのは赤峰さんがお考えになる“格好いい男”とはいったいどういう男なのか、ということです。雑誌に掲載されているようなお洒落ができるようになること、それはもちろんそのひとつだと思います。しかし、“生き様”とでも言いましょうか、もっと根本的なところでお伺いします。見せかけのそれとは違う、男の本当の“格好よさ”を教えてください。(37歳・東京都在住・商社勤務・T.T.さん)

Q.いやぁ、熱い熱いっ!この方の熱意は半端ないですね。しかしマエストロの布教活動もようやく実を結びつつありますね。では、早速。マエストロがオトコマエな理由を教えてっ!
 てめぇはこのお調子者が!オトコマエだと?確かにそれは誤りではないがお前はいつだって的を外しているようなもの言いだな。せっかく投稿してくださったこの方に失礼だろうが!お前のような輩には、この投稿者の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいよ、まったく。耳の穴をかっぽじって聞きやがれ、この痴れ者が!
「格好いい男とは何か」。この質問は、私自身も30代のころ大いに悩んだ。20代は周りが見えず、ただ自分が正しいと思う道をがむしゃらに突っ走った。今にして思えば、それは強烈なエネルギーだった。今のようにインターネットはなかったから、旺盛な好奇心を満たすために、自分の目で見て、自分の耳で聞き、自分の足でどこへでも出向いた。今の若者は机の上で何でもわかったように勘違いをしていやがる。インターネットで知り得たことは、結局、架空の知識、経験にしかならない。パソコンは便利な道具ではあるが、便利であるがゆえに喪失していることも多い。本来、道具にすぎないパソコンが人に支配されているかの如し。そして、そのことに気がつかないことが非常に問題だ。何事も自分の目で見て、耳で聞いて、頭で考えてこそ、初めて己の血肉となる。自らが主体的に行動できること、こんなことはもはや語るべくもないだろう。人は人との出会いによって磨かれてゆくものだ。そういう意味では、憧れを抱くような男性が周囲にいるだろうか?かつての私にはそんな大人の男が身の周りにたくさんいた。無論、彼らは必ずしも有名人ではなく、八百屋の店主であったり、近所のオヤジであったりとさまざまだった。そうした大人の格好よさにしびれ、そこに早く近づきたいと願った。30代になってから、その思いはいっそう強くなった。今の若者はいつまでも若いままでいたい、年をとりたくないと言う。私に言わせれば、信じられない思いだ。かつての私は、一刻も早く大人になりたかった。大人とは自分の“生き様”を身につけた者のことだ。私はこの“生き様”こそが「格好いい」の源泉となると信じている。30代はそれまでの己と真っ正面に向き合う年代だ。そして、次第にそこに磨きをかけ成熟させていく時期とでも言えようか。投稿者の方はそれに気付いている。皆さんも、見せかけの格好よさから“生き様”を見出すことなど永劫かなわぬと心得てほしい。

Q.なるほど!さすが男の中の男。その言葉が既に格好いいっ!ビリビリしびれちゃいます。でも、まだよくわかりません。もう、早くヒントくださいよ〜っ!
 ・・・・。て、てめぇっ!この大うつけものが!お前の軽薄な言葉は、聞いているだけで虫唾が走る。いったい、どういうつもりでオレの話を聞いてやがる!まったく馬の耳に念仏とはこのことだ。私もお前のくだらない言葉には乗らず、ただ受け流すことにしよう。まぁ、とはいえお前にも私の言葉が響いていることだけは確かなようだ。あなたの「格好よさ」を生み出す源は、あなたの“生き様”にある。しかし、、理想の“生き様”を教えてくれるマニュアルなんて、あるはずもない。それこそ、十人十色だ。憧れを抱く大人が少ないと誰もが感じるこの時代で、お手本とすべき人を探し出すのも至難の業であろう。成熟したいと願う男にとっては、理想なき不遇の時代なのだ。だからこそ、あえて私なりの“生き様”を表現するなら、そこには2つの信条があると言える。それが、「挑戦」と「継承」。己の生き様において、この2つを主とすることだ。そうすることで私は常に己を高め、男の「格好よさ」を追及しているつもりだ。
 

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(→)年が開け、ご自宅の近くの等々力不動尊にて初詣するマエストロ。スーツ同様に着物をこよなく愛するマエストロは、その着こなしも見事。スーツ姿のときと同じく、得も言われぬ貫禄を放っておりました。大不況の中で迎えた2009年、マエストロはいったいどんな祈りをささげたのだろうか。

Q.出ましたキーワードッ!ずばり、「挑戦」と「継承」。これがマエストロの考える理想の“生き様”に、欠かせない信条なのですねっ!
 ・・・・・。お前のその軽いノリがどうも好きじゃないが、そのとおりだ!私なりに考える格好いい男の“生き様”は、「挑戦」と「継承」という2つの信条によるものだ。
 まずは「挑戦」。これは常に現状を否定し、ときには非難する意識と言ってもいい。常識や既成概念という名の前提を疑うことでもあろう。そして、「自分とは何者か」と常に問い続け、己を極めていくことに邁進していくのだ。好き嫌いもはっきりして大いに結構だ。しかしながら、現代の若者には“ことなかれ主義”が蔓延し、矢面に立たされることを嫌う。争いごとなどもってのほかだという意識が強い。なんとつまらない男だろうか。なんと味気ない“生き様”であろうか。私は世の中のことから身近なことまで、さまざまなことに腹を立てる。そして、腹を立てたらその気持ちを決して溜め込まない。表に出す。なぜなら、その苛立ちこそが、私の大儀であるからだ。大儀のためならケンカだって厭わない。そうやって、自分の正直な気持ちに対峙しながら、次の行動に移していく。ただ、おとなしいだけの、人当たりのいい男はツマラナイであろう。一度きりの人生だ。己が正しいと思えばそれを信じる。そうやって「挑戦」のために戦い、生きることが「格好よさ」に通じるのだ。私は服飾業界においても、そうやって戦い続ける。この戦いは私の大儀であり、世直しなのである。
 ふたつめは「継承」だ。「継続」と言い換えてもいいかもしれない。長く続いているもの、続けていることには、相応の魅力がある。例えば、老舗と呼ばれる店には風格がある。先達の作り上げたものを受け継ぎ、それをまた受け継いでいく。ヒットセラーではなく、ロングセラー。永々とした営みにこそ、本質とはそういう営みのなかに宿るものだ。少し前はベンチャーだのと言って、金儲けが目的の会社がメディアに多く取り上げられ、時代の寵児などと謳われていた。どうだ。不況を迎えたら、地に足がついていなかった会社はあっという間に吹き飛んでしまった。何でもかんでも老舗がいいというわけではないが、じっくりと深く地に根を張ったその“生き様”には「格好よさ」を見出すことができよう。人も同じである。蛇行することのない、芯の通った己を作っていくことが大切なのだ。仕事であっても、一貫した理念に基づくべきだ。職業や年齢などまったく関係はない。何のために働くのか。どうなりたいから働くのか。人の役に立つことの営みが仕事の本質だ。そういう仕事を継続して、どう自己実現するかが大切なのだ。「自分とは何者か」を問い続けることは、ここでもやはり欠かすことができない。

Q.これぞ「格好いい男」の“生き様”!・・・・とはいっても、見た目も大事!ということで最後に、そんな男にふさわしい装いをどどーんと教えてくださいな!
 ・・・・・。では、“ドン”とその哲学をお教えしよう。ひと言で言い尽くすなら、男の服は「変わらない」ということだ。どんな服を着ているかで、値踏みされることはある。しかし、高い服を着ればいいってものではない。装いとは教養でもある。きちんと服を着ることはマナーであり、紳士とは服装でマナー違反はしないものである。そして、紳士とは名刺などなくても、服装で一目置かれる存在である。服をとっかえひっかえするようでは道化師も同然。イタリアではそんな男を「パルティコラーレ(=少し風変わり)」と言う。まあ、でもそれは序の口だ。トレンドという商売に完全に乗せられてしまったチグハグな服を着ていたならば、「ストラーノ(=変わってる)」とか、もっとひどい呼ばれ方では、「ブルッタ(=醜い)」とさえ言われてしまう。流行に惑わされるのは、世の中から取り残されたくないという焦燥感に起因する。そして焦燥感の源はほかでもない、自分に自信がないからだ。流行と付き合うときは、「咀嚼」をしなさい。自分にふさわしい流行かどうかを取捨選択しなさい。そのためには、まず衝動買いはしない。どれくらい長く着られるか、経済性をふまえた買い物をすることだ。すぐに着なくなるものを購入することは、店にとって好都合な客。私に言わせれば、ただのばか野郎だ。
 紳士にとって、いつも同じような格好をしていると思われることは、望ましいことであり、賛辞を受けているに等しい。イタリアではそういう装いの男性を「ジェンテリッシモ」という。上品でありながらも骨太、しっかり自分のスタイルを持つ男性に送る賛辞だ。「格好いい」服装とは、そういう形容にふさわしい。先ほど言った「流行の咀嚼」。これは、自分の軸となるスタイルを持ったうえで、時代ともうまく折り合いをつけることだ。私はクラシックなアイテムが揃うワードローブの中であっても、今着るもの、今着ないものに分ける。クラシックなアイテムのなかにも「時代感」つまり「今っぽいかそうでないか」があるのだ。その年ごとにワードローブを一軍と二軍にわけ、時代とうまく折り合いをつけること。これは私の装い流儀でもある。
 刹那的に生きるのは20代。その歳頃であれば、流行に飛びついて、さまざまな服を経験することもいい糧となろう。しかし、30代になったら10年後を見据えた服選びをしなさい。男の“生き様”は服装にも如実に現れるものだ。まずは失敗を繰り返しながら30代で着こなしの基本となる楷書体を身に着け、40代で行書体という段階を経て己のスタイルを確立していく。そうやって、究極的には本当に自分らしい、草書体とでも言うべき装いにたどり着ければ、なんと素晴らしいことであろうか。
 
 

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−近ごろのマエストロ−
昨年、12月21日に横浜の信濃屋にてトークイベントを行った。信濃屋の創業は1866年。私も古くから通い続ける顧客のひとり。日本初のセレクトショップであり、日本の洋装の歴史は信濃屋の歴史に重なる。トークイベントの後には場を移してパーティが催されたが、訪れた方々の服装は、まさしく「ジェンテリッシモ」であった。信濃屋に敬意を払っていることの現われでもあり、ジェントルマンズクラブと評されるような集いとなった。クラシックという名の本質を継承してきた店の素晴らしさを実感した。これから装いの熟成度を上げていかんとするオーシャンズ読者には太鼓判の店であろう。

仕事から家庭、恋愛、そしてファッションetc.・・・・・・、日ごろ読者の皆さんが抱える悩み、疑問など、相談したいことを何でも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合はハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス Gオトナ相談室への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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