2007年03月24日(土)
OCEANS 5月号 連載#14 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
白シャツの“粋”
白のシャツが粋に映えるのはグレースーツとのハーモニー
何気ないが何気なくない、そんな目標となる白シャツのこなし方。シャツは本文中にもあるように、パリのヴァンドーム広場にあるダンヒルのシャツバーにて購入。ヘビーウェイトのボブリンで、ドレッシーすぎないテイストを醸し出す。ダブルブレストのグレースーツは、マエストロ赤峰氏自身のブランド、アカミネ ロイヤルラインのもの。英国を代表する生地メーカー、ドーメルのハウンドトゥースを使用している。無彩色でのエレガントな着こなしだ。
無造作に見えることが、白シャツをこなす、見よがし方
タイを外し、ダブルカフスを開けて、袖をまくり上げてこなす。こんなラフな雰囲気も白シャツのエレガンスが際立つ。上質な生地であるがゆえ、シワ感が美しい。ポイントになっているスクエアのカフスリンクはオニキス。フランス製で、ブランド名は不明。
シャツ一枚だけを選ぶのならば、それは白に限るだろう。日本では白無地のシャツはビジネス用と狭義で捉えられがちだ。そして、平凡でツマラナイというようなネガティブなイメージを持つ人も多いのではないか。しかし、実は白シャツをエレガントにこなすことこそ、お洒落の究極だと思うのである。それは(注1)ケーリー・グラントしかり、(注2)ハンフリー・ボガートしかり。彼らの過去の着こなしは、白シャツの魅力を今に伝えてくれるよきお手本だ。白のシャツは過度に主張することなく、着ている本人を引き立てる。だから彼らが格好よく映えるのだ。
では、どのような白のシャツを選べばよいのか?日本人の傾向としては、ブランドネームに踊らされるキライがある。しかし、ブランドは選択の“道標”にはなるが、本質的なタグネームに捉われず、モノとしての良し悪しを見極める目を養いたい。白のシャツはその題材としては、もっともハードルが高いアイテムだろう。私の場合の条件は、素材が(注3)ヘビーウェイトの上質なコットンであることだ。それは長く着られ、(注4)着れば着るほどに生地が体になじみ、より魅力的な風合いへと変化していくからである。ハンドの袖付けがどうだのといった、ウンチクのためのディテールには惑わされないことだ。グレーのダブルブレストスーツの中に着ているのは、パリのヴァンドーム広場にある(注5)ダンヒルのショップで6年ほど前に買い求めたシャツであるが、生地はコットンのヘビーウェイトな(注6)ポプリン。何気ないが、実はカラーが切り替えてあるダブルカフスということで、実は何気なくないというのがミソ。質のいい生地はシワ感さえもエレガントに映える。この先、クタクタになって擦り切れても、それがよい味になる。スーツに合わせる白のシャツ。ということだけでなく、これからの季節には当然、シャツ一枚だけで出歩く“シャツが主役”のシーンも増える。そうしたときに、白のシャツ一枚でサマになる着こなしこそ、究極だ。
最後に、コットンのシャツは洗いざらしもいいのだが、私はアイロンをかけることが多い。それはホテルのシーツのようにパリッとした肌触りが心地よいからだ。そして着たシワ感が、ナチュラルで粋に見える。
(注1) 「ケーリー・グラント」
1904年イギリス生まれのアメリカ人俳優。代表作は「北北西に進路を取れ」。スクリーンにおける洒脱な着こなしは、赤峰氏のイメージソースになっている。
(注2) 「ハンフリー・ボガート」
1899年生まれ、ニューヨーク出身の俳優。愛称はボギー。ヘビースモーカーとして知られ、ハットを被り、トレンチコートの襟を立て、タバコをくゆらせる姿が代名詞的。赤峰氏も認める、ハードボイルドな男の格好よさを体現している。
(注3) 「ヘビーウェイト」
糸の打ち込み本数が多く、地厚な生地。そうした目がしっかりと詰まっている生地を赤峰氏は好む。
(注4) 「着れば着るほど」
赤峰氏のモノ選びの基本は、長く愛用できること。着続けることで魅力を増すことに重きが置かれる。
(注5) 「ダンヒル」
“ブランド名に左右されない”というのが赤峰氏の信条。しかし、“背景に由来があるブランドには、必然的によいモノが多い”とも語る。英国を代表するブランドであるダンヒルはそのひとつといえる。
(注6) 「ポプリン」
1685年に登場し、18世紀初頭から一般化した織り方のひとつ。横の方向に畝を作った織物のことで、生地には独特のコシや張りが出る。
1_ 「Bogie」より。
ハンフリー・ボガードの無造作な雰囲気が粋な白のシャツのこなし。
2_ 「CARY GRANT A CELEBRATION OF STYLE」より。
白のシャツ一枚で、かようにも格好よく着こなすことができるという最高の手本。
3_ 「Sinatora」より。
胸元を開けて、袖をまくっている姿が、シンプルでありながらも、実にナチュラルで粋。小物使いもさすが。
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 0 )