2006年10月06日(金)
MEN'S EX 11月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.6 [MEN'S EX 掲載記事]
菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマをひとつ決め、それに基づいてファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。
「今月のテーマ」
タイドアップのジャケットスタイル
今回のテーマはタイドアップしたエレガントなジャケットスタイル。今回は、いつにも増してエレガントな着こなしを披露してくれました。菊池さんがプロデュースするショップ、40カラッツ&525にて撮影。ひょんなことからお2人でタッグを組み、夢のコラボジャケットを作ることになりました。
■(写真右)菊池武夫氏
・ボサリーノのキャスケット
・ドルチェ&ガッバーナの白シャツ
・アルテアに別注した40カラッツ&525のタイ
・ルイ・ヴィトンのシルクシフォンストール
・スクーデリのヴェスト
・40カラッツ&525のカシミア製1枚仕立てジャケット
・プラダの7〜8年前のジョッパーズ
・カチンのハラコ風シューズ
■(写真左)赤峰幸生氏
・シャルベのロイヤルオックスフォードオーダーシャツ
・ニッキーのカシミアニットタイ
・Y.アカミネのラムズウールのジャケット
・イ プロンティの赤メガネ
・マビテックスのウールパンツ
・ジョージクレバリーのストレートチップ
連載ネームの「Be Buffalo Forever!」をブランド名にしたジャケットを作りませんか、というM.E.の提案に興味を示してくださったお2人。
お2人の力を結集して1着のジャケットを作ることに決定。いつの間にか連載の話しは終わり、そっちの話で盛り上がりっ放しに。
一週間後に再びミーティングの約束。春夏の商品化に向け始動です。
■ジャケパンはエレガントに着てこそカッコいい
M.E. 今回のテーマはジャケット&パンツです。ヨーロッパだとジャケット&パンツでビジネスに臨むのは以前から当たり前のことになっていますけど、日本ではジャケパンっていうと、カジュアルなイメージが先行しています。それを覆す提案をしたかったわけですが、お2人の今日のスタイルはいつになくドレッシーですね。
菊池 きちんとした格好をしたいっていうのがここ最近の気分なんです。そういうのが前提にあって、夏頃から細いパンツを穿きたくて、でもただ細いだけだと、ヒネリがなさすぎますよね。その点、(注1)ジョッパーズだと上が緩くなっていてシルエットに表情があるでしょう。そんなわけで、今日はジョッパーズを合わせてみたんです。あとはベストを着たくて仕方がなかったっていうのもあって、その2つで上手く自分らしさを表現してみました。
赤峰 今日のスタイリングは先生でないと着こなせないですよね。何げない感じですけど、難易度は凄く高い。'30年代のドレスアップしたリッチな紳士の雰囲気を見事に醸し出していますよね。レベル5って感じです(笑)。
菊池 震度5って感じですかね(笑)。
(撮影中に震度3の地震があったばかりだったので)
赤峰 ハッハッハッ(笑)。震度5ですね。で、そのカシミアのジャケットもいい味出していますよね。
菊池 最近は肩がキチッとしたタイプのジャケットが人気ですけど、私がそういうのを着ると、急に借り物の猫みたいになってしまうんです。今日着ているジャケットは去年40カラッツ&525で作ったもので、新品の感じがイヤだったので、洗濯機で洗ってしまったんです。着慣れた感じを出したかったんですよね。で、乾燥機に入れて全体的に縮めようと思ったら、丈しか縮まなくて失敗してしまったんです(笑)。とはいえ、前回着たのが新作で落ち着かなかったので、今日は着慣れているものを選びました。
赤峰 洋服を自分のイメージの顔つきにしたいっていう気持ちがあるんでしょうね。それ、よくわかります。そのときの菊池さんの顔ってもの凄く真剣なんでしょうね(笑)。
菊池 きっとそうだと思います(笑)。
赤峰 あと、今日の菊池さんのスタイリングを見て感じた点は、リアルなクラシックであるということ。近年いわれているイタリアのクラシックとは趣を全く異にする、クラシック違いなんですよね。往年のヨーロッパの紳士の本物のスタイルですよね。その中にフレンチっぽい着こなしを取り入れているあたりは菊池さんならではです。
菊池 そのとおり。イタリアでもないし、英国でもないんです。フランスなんですよね。英国は時として真面目すぎな感じがしますよね。
赤峰 確かに。本当、パリって感じなんです。昔のロンシャン競馬場とかで双眼鏡を持っている紳士って感じ(笑)。この上にカシミアのグレイのオーバーコートとか着たらカッコイイですよね。
菊池 ああ〜、いいですよね。確かにそういう気分です。ところで赤峰さんが着てらっしゃるジャケット、実は今日、僕もそれを着ようかなって思っていたんです。
M.E. 持っていらっしゃるんですか?
菊池 実は赤峰さんの展示会で見て気に入ってしまって、お店の商品としてジャケットを何種類か買い付けたんです。でも、赤峰さんが着てこられたので、諦めました(笑)。
赤峰 '60年代くらいのハリウッドの連中が着ていたような感じをイメージしたんです。今日着ているジャケットのイメージがあるのは、(注2)ジョージ・ハミルトンです。白黒の千鳥格子に白シャツって感じで。これは英国のアーカイブの生地を復刻して作ったものなんですけど、ピュア・ラムズウールを使っていて、風合いが凄くいいんです。
菊池 コシがあるけど、ソフトなんですよね。着込むほどに味わいも増していきそうですし。で、そのジャケットを凄くエレガントに着ていらっしゃる。'60年代風の着こなしというだけあって、ネクタイも細くて、パンツもダブルで太くあげていて、細かいところも抜かりないですよね。
赤峰 ちゃんとアメリカンポケットになっているんですけど、これはかれこれ17年くらい穿いているマビテックスのパンツです。フレンチ・アメリカンって感じですね。本当は昔のケーリー・グラントのやつみたいに、こういう格好にダボダボのシャツを、巻き込んで入れるようにして合わせるのがスタイルなんです。でも、まんま昔のままにしてもしょうがないので、そこまでは再現しませんでしたけど(笑)。近年出回っているノーパッドでアンコンタイプのとは方向性を全く異にするジャケットっていうのかな。ドレスのマインドがベースにあるんです。
■お2人ともフレンチの着こなしが最近の気分
菊池 ところで、赤峰さんがほかに気になっているジャケットってありますか?
赤峰 グレンチェックのジャケットは相当気になっています。千鳥格子かグレンチェックのジャケットのスタイルかな。あとは首が長めのフルタートルネックニットです。今日みたいなジャケットに、シェットランドのタートルの襟口が伸びてきてしまった感じのを合わせてもカッコいいと思うんです。若いときの(注3)クラーク・ゲーブルみたいなイメージです。フレンチでいうとジャン・ギャバンあたりかな。
菊池 そうですね、よくわかります。
赤峰 菊池さんが気になっているアイテムはなんですか?
菊池 第1回のブレザーのときに話しましたけど、ミディアムグレイよりちょっとライトなフランネルのダブルのジャケットを着たいんです。
赤峰 ダブルで下1つ掛けとかで着るとカッコイイですよね。Vゾーンも深めでね。ジャン・ギャバンとか(注4)リノ・ヴァンチュラみたいな感じです。ただ、最近、文化的にジャケットをエレガントに着こなしてる人って少ないなって思うんです。「このオヤジ、お洒落だな」って思える人って、イタリアとか見ていてもほとんどいない。どこか田舎っぽく感じてしまうんですよね。カッコいい人ってもっとシックですよ。さっき話したように、お洒落なフランス人って絶対的な人数は少ないですけど、お洒落な人のレベルは本当に高いですから。
菊池 確かにフランス人のお洒落な人って、本当にシックだと思います。コーディネーションのスキルが高くないと、ジャケット&パンツって上手くこなせないじゃないですか。
赤峰 モーリス・ロネとかもヤバいくらいにカッコいいですしね。
菊池 「死刑台のエレベーター」で彼が見せた着こなしって最高ですよね。
M.E. 実は前から思っていたんですけど、お2人のアイデアを合わせて、「Be Buffalo Forever!」ってブランド名で一着のジャケットを作ってみませんか?今でこそお2人の着こなしは全く異なりますけど、通過してきた原点が一緒なので面白いように話が通じ合っているなって思っていたんです。完成したら、それを着て連載ページにご登場いただいて(笑)。洋服が大好きな読者の琴線に触れるような1着を作って、40カラッツ&525で展開しましょうよ。
菊池 おっ、それは面白いですね(笑)。
赤峰 では、早速打ち合わせしましょうか(笑)。
菊池 今からだと、秋冬は間に合わないから春夏の商品化を目指して練っていきましょう。春夏に向けてだったら、時間はたっぷりありますし、きっと面白いものができますよ。
※そんなわけで、本連載でお2人のコラボレーションによるジャケットを作ることになりました。お二人ともかなりやる気になっていただいており、現在打ち合わせを重ねているところです。お二人が手掛けた夢のコラボジャケット、上手くいけば3月号あたりでお披露目できるかと思います。
(注1) 「ジョッパーズ」
乗馬用の長ズボン。動きやすさを重視しているため、上方部はゆったりしていて、膝から裾にかけてはスリムでぴったりフィットしたシルエットが特徴。
(注2) 「ジョージ・ハミルトン」
1939年、テネシー州メンフィス生まれ。役者としては有名ではないが、赤峰さんは彼の着こなしを絶賛。作品としての代表作は'79年の「ドラキュラ都へ行く」など。
(注3) 「クラーク・ゲーブル」
1901年、オハイオ州生まれ。'24年に「禁断の楽園」でデビュー。'34年の「或る夜の出来事」でアカデミー主演男優賞を受賞。'39年の「風と共に去りぬ」で大スターに。
(注4) 「リノ・ヴァンチュラ」
1919年、伊パルマ生まれ。幼少時にフランスへ移住。'54年に「現金に手を出すな」でデビュー。ギャングや刑事の役を多く演じた。代表作は「情報は俺が貰った」など。
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 0 )