2013年09月25日(水)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『自然に溶け込む服』 2013年9月21日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
近年のファッションの大きな流れの一つに、洋服の原形を作った英国への回帰があると言われます。千鳥格子やチェックといった伝統的な柄や、厚みがある英国的な服地に世界中のデザイナーが手を伸ばしている。それはモノがあふれて混乱した状況が続いた後の、「基本に帰りたい」という心情の現れではないかと考えています。
しかし、そんな流行とは関係なく、ずっと英国の伝統を踏まえて服を作ってきたデザイナーがいます。私が敬愛するマーガレット・ハウエルです。
彼女が作る服は、自然に溶け込む色あいがすばらしい。スコットランドの草原や湖水地方の水の色、ブリティッシュ・ガーデンを想起させる色使い。自然な色こそを身に着けるべきだと考える私にとって、本質的な価値を備えた服に思えるのです。
彼女は毎年2回、ロンドンで新作を発表していますが、ファッションショーを見たこのコラムの担当編集者は「イメージ通りのマーガレット・ハウエルで、新味に乏しい」などと言います。いや何を言う、変わらないことこそが価値であり、今の時代に求められている「新しさ」だと思います。
次のシーズンには着られなくなるような服はもういらない。「賢い服」を少しずつ買い足していくような、新しい資本主義のキックオフを感じています。フォックス・ブラザーズ社の毛織物といった一流の素材を使い、マーガレット・ハウエルの服は決して安くありませんが、普遍的で、時代を超えていく服だと思います。
30年前に彼女に初めてお会いした時に、和服に関する書籍を贈ったら、たいそう喜ばれました。自然や伝統に共鳴する心情は日英に通じるものがあるように思えます。
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Posted by インコントロ STAFF at 12時27分 コメント ( 0 )