2009年01月06日(火)
MEN'S EX 2月号 平成の寺子屋 赤峰幸生の上級ファッション塾 連載vol.04 [MEN'S EX 掲載記事]
「男の色気はVゾーンに宿る」
真のクラシックを追求し、服のみならず、生き方そのものに自らのスタイルをもつ男、赤峰幸生。氏が考える、男のお洒落を伝授します。第4回は、男のVゾーンについてのお話です。
Q 今日のVゾーンにはどんな赤峰イズムが詰まっているんですか?
それはもう、たくさんのイズムが詰まっています
「シャツの襟先までの長さには、私なりのこだわりがあり、スーツに収まらない短めのタイプは絶対に着用しません。襟に適度なロールが生まれるワイドカラーを合わせるのが私の定番です。あとはノットがシャツ襟の返りの部分にぴったりくっついていることです。ここに空間を作っては絶対にいけません。また、ノットの形を左右を対称に結ぶのは、あまりよろしくなく、プレーンノットで、あえて左右非対称にして結ぶのがエレガントだと思います。そして、色。私の中では、白以外に使う色は原則2色までと決めています。今回は全体をブルーでまとめ、タイに茶の柄が入っているものを選びました。ブルーと茶は相性がよく、そういう相性のいい色同士を組み合わせるよう心掛けています。」
Q 素敵なVゾーンを築くコツを教えてください
柄ものの合わせには気を遣います
「Vゾーンにおける柄ものの合わせにはかなりの気を遣います。まず合わせやすいのは、無地のタイを選ぶことです。そして、同じ大きさの柄同士を合わせないことですね。例えば、スーツとシャツにストライプを合わせるときは、両者のピッチを変えるようにしています。これは、柄もの同士を合わせる際の、私の中での鉄則です。色に関しては、基本はネイビーに茶、それとグレイに茶、あるいはブルー系で統一するなど、極力シンプルな合わせを心掛けています。」
■魔の逆三角形にこそ男のこだわりが凝縮されます
赤峰 ドーメルジャポンに加賀美さんという女性がいて、彼女と男のダンディズムの根っこはどこにあるのかという話になったときに、女性から見た男の色気はVゾーンのトライアングルのカタチで決まるとおっしゃっていましてね。1mmでもタイが緩んでいたら、男の色気を感じない、ここがぴったりフィットしていることが、男の色気の目安になるというんですね。これと同じような話をイタリアでも聞いたことがあります。私はこれを魔の逆三角形と呼んでいるのですが、これを踏まえながら、Vゾーンのキモはどういうところにあるかを考えていきたいと思います。
M.E. よろしくお願いします。
赤峰 魔の逆三角形は上着とシャツとタイの3つが集中する部分であり、ゴージの位置・角度・ラペル幅は、シャツとタイの関わり合いという意味で、非常に重要です。今はいっときほどハイゴージをよしとしていなくて、レギュラーな位置に落ち着いていると思います。シャツの襟は、ワイドスプレッドで襟先に向かってほのかなロールが生まれるものを、赤峰的にはよしとしています。イングリッシュワイドと言われる剣先の短い襟は、私はあまり着ません。あれを着て美しいのは、首の長い人です。エジンバラ公なんかはよくきれいに着ていますけど、体型的に日本人はあまり首が長くないのであまりしっくりこないものと解釈しています。一番重要なのはタイのノットです。正三角形ではなく、左右非対称の、若干歪みのあるノットが好きですね。フルウインザーノットだと、完全に左右非対称になってしまって、結び目もおにぎりみたいでいただけません。結び方としては、ノットの下の位置が襟の返りの位置の高いところに上がっているものがきれいで好きですね。
M.E. なるほど。
赤峰 次に合わせの話ですが、スーツの柄に対して、スーツ、シャツとタイの柄の大きさにはこだわりたいですね。それぞれの柄に強弱をつけるのがポイントです。その際、無地のタイはバリエーションで最初に揃えるべきです。無地のタイなら、上着とシャツのバランスを考えればいいわけですから。次に揃えたいのが、小ドットや小千鳥、織りで凹凸間を出したもの、ヘアラインストライプや小さいグラフチェックなどの、遠目無地の近目柄です。その際、全体を同系色、あるいは相性のいい色で合わせるのがポイントです。相性のいい色としては、ネイビー×茶、ライトグレイ×ピンク、ミディアムグレイ×茶×ブルーなどが代表的です。今日の私は同系のグラデーションでまとめていますが、2配色のうちのもうかたほうの色で靴やベルトなどのアクセサリーをまとめるとしっくりきます。むやみに色を使わないというのがすべての基本ですね。
M.E. なるほど。
個性を出すのもいいけれど、Vゾーンには守るべきいくつかのルールがある
(←)リヴェラーノ&リヴェラーノのフランネルスーツに合わせたシャツ、タイ、チーフはアカミネロイヤルライン。シャツはアルモのコットン、タイはフェルモ・フォサッティのシルク、チーフはカルロ・リーバのリネン。靴はニュー&リングウッド。
赤峰 次に素材の話です。タイの素材でいうと、代表的なところでは、イギリス、イタリア、日本のシルクがあります。イギリスの代表的なところでは、バーナーズの50オンスのガムツイルの生地ですね。これはナポリのマリネッラが使っていることで有名です。イタリアだと、コモ地方のフェルモ・フォサッティ社です。カルロ・リーバのグループ会社で、ここはフレスコの生地やサテン織りの生地が非常に得意ですね。発色の美しさは、群を抜いて素晴らしいですよ。日本だと、京都の西陣にあるオリシンという機屋ですね。横糸の密度がイタリアの生地屋と同じくらいに打ち込んであって、着物の帯からくる技術を上手に取り入れています。
M.E. 勉強になります。
赤峰 次にシャツ地です。私が一番気に入っているのは、スイスコットン。アルモ社のものですね。ここの生地はアルプスの水で洗うので、風合いが格段に違います。100番でも、120番とか140番に匹敵する風合いをもっています。イギリスの生地だと、一番好きだったのはウィリアム・ゲッツ。ここのコリコリしたブリティッシュポプリンは本当に素晴らしかったです。あと、アシュトンブラザーズも素晴らしかったのですが、現在は2社ともありません。その2社のスタイルを踏襲しているのが、エイコーンです。ジャーミンストリートのシャツ屋さんはここのを好んで使っています。あとは、トーマス メイソンやデヴィッド・ジョン・アンダーソン。英国の名前ですけど、今はメイド・イン・イタリーです。柄は昔のままなのでいいのはありますけど、頑固さはなくなってしまったかな。ちなみに、D.J.アンダーソンは、ロイヤルオックスフォードの生みの親です。最後に完全なイタリアですと、シクテス、それとオルトリーナ、テスタあたりでしょうか。話をまとめると、スイスの生地は仕上げが滑らか、イギリスの生地は質実剛健、イタリアの生地は、ひとことでいうとソフト、といったところでしょうか。あと、イタリアのカルロ・リーバはリネンのシャツ地がピカイチです。
M.E. オーダー時の参考になります。
赤峰 チーフに関しては白のリネンがいいんですけど、柄モノは、絶対に同じ柄はしません。ちょっとフェイントをかけるような合わせが上級っぽくて好きなんです。私のほうでいくつか組んでみましたので、コーディネイトの参考にしてみてください。
◆赤峰先生的Vゾーン合わせ◆
略礼服敵的意味合いのモノトーンコーディネイト
黒×白のキャンディストライプのシャツは、アルモの140双。これに黒ベースの花柄タイをコーディネイト。「スーツはもちろんミディアムグレイ。格子のチーフで洒落っ気を」。シャツ2万8775万円、タイ1万3650円(以上アカミネロイヤルライン/インコントロ) チーフ5040円(ロバート フレイザー/アイネックス)
赤峰先生的、茶とグレイの絶妙コンビネーション
ツイル織りのグレイシャツに、茶&グレイのヴィンテージ柄のタイ、それに同系のグレイチーフをコーディネイト。「ミディアムグレイだと色がボワッとしてしまうので、チャコールのスーツで印象を引き締めるのがポイントです」。シャツ2万8775円、タイ1万3650円、チーフ8400円(以上アカミネロイヤルライン/インコントロ)
柄の大きさを変えることで、柄を楽しむコーディネイト
シャンブレー織りのリネンシャツに、茶の幾何学模様のタイとチーフで、柄を楽しむ合わせ。「ウールでもモヘア混でも構いませんが、スーツはミディアムグレイ、靴は絶対茶を」。シャツ2万7300万円、タイ1万3650円(以上アカミネロイヤルライン/インコントロ) チーフ5040円(ロバート フレイザー/アイネックス)
今月のおさらい
壱 タイのノットは左右非対称で、合襟との返り部にぴったりつくよう結ぶべし
弐 まずは無地のタイをしっかり揃えるべし。柄モノ同士を合わせるときはピッチに変化を
参 色は同系色が基本。もしくは相性のいいネイビー×茶、ライトグレイ×ピンクなどをマスターせよ
四 チーフは白のリネンが基本。上級を目指すなら、異なる柄で、共通項のあるものを
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 0 )