AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2007年04月06日(金)

MEN'S EX 5月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.12 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
スプリングコートの着こなし方

身も心も軽やかになる春ですが、日によってはまだまだ肌寒いこともしばしば。そんな時期に重宝するのが、スプリングコートです。そもそもコート好きを自任するおふたりは、はたしてこのアイテムをどう着こなすのか?ダンディズムや季節感をテーマに、対談はまたしても痛快に進んでいきました。

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■(写真右)赤峰幸生氏
・ベルソールの折り畳みサングラス(マックィーンモデル)
・プリンチペのボタンダウンシャツ
・アカミネロイヤルラインのタイ
・リヴェラーノ&リヴェラーノのオーダースーツ
・アカミネロイヤルラインのポプリン地のオリジナルコート
・ジョージ・クレバリーのストレートチップ
 
 
 
 
■(写真左)菊池武夫氏
・ボルサリーノの帽子
・ルイ・ヴィトンのシルクシフォンのストール
・40カラッツ&525のリネンコート
・スウェイン・アドニー・ブリッグのステッキ
・リーバイス505のホワイトジーンズ
・アディダスのスニーカー(アリ・クラシック)
 
 

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今回の撮影の舞台となったのは、銀座銀杏並木通りに面したレストラン「セラン」。春間近とはいえ、日が暮れてくるとまだまだ肌寒いようで、お二人ともコートを「ビシビシに締めて」会話に興じていました。それにしても、絵になります(笑)。

■コートほど男を感じるものはない
菊池  そもそも僕はね、コートが凄く好きなんですよ。重厚なものもあれば、ペラペラのシャツみたいなものもあって、丈ひとつとってもその長さはいろいろでしょ。だから、着る愉しみがあるんですよね。時期にしたって、一般的には冬の衣料と思われがちだけど、今回のスプリングコートのように、春先に颯爽と羽織って歩くタイプだってあるし、実際に僕は梅雨の時期まで着ることがありますからね。雨の中を傘をささずにコートを着て、濡れながら歩くんですよ。
赤峰  ご多分に漏れず僕もコートは好きで、それこそトレンチに始まって、いろいろなバリエーションを持っていますよ。特にこの時期は、プレーンなタイプのコートをダラッと着ている感じがピッタリですよね。やっぱりコートほど男を感じるものって僕はないなと思っていて、まさに菊池先生のおっしゃるように、多少の雨など気にしないでコートを濡らしながら大股で歩いている姿というのは、一番カッコイイなと思いますね。
菊池  パリでよく見かけた光景なんですけど、雨の日に傘をささずにコートを着て、雨が入らないようにパイプを下向きにくわえながら歩いてるおじさんがいるんですよ。シビれましたね。コートだって別にパリッとしたものを着ているわけじゃないんですけど、こういう何気ない仕種がサマになるんですから、やっぱり文化が違うなって思いますよ。
赤峰  そうですよね。(注1)アルベルト・ソルディがスプリングコートを羽織っている姿には、なんだか大人の魅力といったものがありましたよ。フレッド・アステア、ケーリー・グラント、(注2)スティーブ・マックィーンなんかもそうです。昔のアクアスキュータムのアクアファイブや、ロンドンフォグのテロッとした風合いのコートとかを何気なく着ているのを見ると、とにかく男が感じられます。
菊池  着古して、身体によく馴染んだ感じがカッコイイんですよね。刑事コロンボなんかはまさにそう。あの汚く着た雰囲気はすごく好きです。
赤峰  ヨレちゃうともう古いと思うんじゃなくて、ヨレてやっとコートらしくなってきたって感覚ですよね。だから新品を着るのは少し恥ずかしい。
菊池  そういう意味で、赤峰さんもよくコートが似合いますよね。
赤峰  ありがとうございます(笑)。僕が思うに、コートというのは95丈、100丈、110丈、だいたいこの3つがレングスの基本だと思うんですよ。あとはウエストを絞っているか、ストレートかといった具合。スプリングコートの場合、いくらサラッと着るとはいっても、やはりそこそこ台襟が高くて、襟に存在感がないといけません。チビ襟というのはちょっとね。ラインも、僕が着ているようにウエストがシェイプされているのだったり、あるいはAラインのコートなんてのもカッコいいと思います。
菊池  あぁ、いいですね。僕は結構Aラインが気分かな。なんといってもシルエットがキレイですよ。
赤峰  Aラインだと、振り返ったときの蹴回しが大きいからフレアがついて、そこに男のエレガンスが感じられるんですよ。雨のときは前をビシビシに締めるんだけど、ラインは優雅っていうのがなんともいえずいいですよね。映画「暗殺の森」(ベルナルド・ベルトルッチ監督、1970年)の中で、(注3)ジャン=ルイ・トランティニャンが着ていたのもそういった風情があって、すごくカッコよかったですね。それと、(注4)ジャック・タチ。丈が短くて少しAラインのコートに、これまたえらく短いパンツを合わせ、足元にはアーガイルの靴下が覗いている。それはそれでフレンチの粋がありました。

■季節感を意識することって凄く重要ですよね
赤峰  ことヨーロッパにおいてスプリングコートというのは、イヤーラウンドの中のベースのコートという感じがありますよね。
菊池  そうですね。向こうはライナーの取り外しって常識みたいだから、冬はスプリングコートの裏にウールとかキルトのライナーをつけて、春になるとハズしてしまう。そんな着回しをしていますよ。
赤峰  最近でこそよく見かけるようになりましたが、もともとヨーロッパに中綿のコートとか、ダウンのコートってあまり存在しなかった。寒ければウールのオーバーコートを着るし、暖かければスプリングの一重のコートを着る。そういう使い分けをしていましたよね。
菊池  現在は地球温暖化などいろいろな問題がありますが、特に都市部にはシーズンがありません。食事でも生活でも、なんでも旬ってあるじゃないですか。そういった季節感を意識することって凄く重要ですよね。これは洋服も同じで、季節をきちんと意識して着ることってとても大切なことだと思います。昔はこの日を過ぎたらこれを着るってことがちゃんと決まってましたもんね。
赤峰  本当にそのとおりです。イギリスの昔のスプリングコートなんかは、アームホールのカマのところにループが両方ついていて、雨でずぶ濡れになったら、ハンガーの両肩に引っ掛けて乾かすようになっているんですね。現代と違って、自然とか、季節にきちんと向き合っていたことが、ここからもよくわかります。
M.E.今回はお二人ともオリジナルを着てご登場いただきましたが、それぞれのポイントなどを聞かせていただけますでしょうか。
菊池  僕はどうしても本筋からハズして物事を考えるタイプだから、あえてリネン素材のコートにしました。シワになりやすいけど、それがまたいい表情になるかなと思って。キレイにしているとなんだか落ち着かないんですよ(笑)。着こなしはビシッとしていても、どこかダラダラした感じが欲しいですね、僕の場合。
赤峰  早くも雰囲気が出てきていますよね。肩もずいぶんとナローでカッコイイです。
菊池  ありがとうございます。僕自身、それが凄く好きでね。スーツの上にコートを着たとき、肩がぐーんと平らになるのがイヤなんですよ。
赤峰  ジャン・ギャバンのトレンチ姿も肩がちょっとドロップ気味になっていてえらくシブい。
菊池  そう、あれがいいんですよ。
赤峰  確かに麻のコートは本流ではなく、やはりクラスなもの。いわゆる機能というよりは、これを着ることによる遊び心の表現ですよね。その点、僕のは逆で、ミリタリーの生地を使ったものです。ブリティッシュミラレーンという、バーブァーなども使っている生地屋の、リアルポプリンと呼ばれる高密度の生地を使い、防水性も高い作り。モデルとしては、'60年代後半から'70年代にかけて、モッズの時代に出てくるようなショートカットのスタイルです。ハ刺しも全部入れて、完全にテーラードな作りをしています。ただ、まだ新品なのでこれからもっといじめ抜いてピリを出したいですね。
菊池  これを着古したら凄くいい味わいになると思いますよ。僕だったらこのコートには、ザクッとしたコットンの、ローゲージの首が抜けているようなセーターを着て、緩めのパンツをはいて、といった感じで合わせてみたいですね。意外と構築的なイメージなので、バランスを崩して着ると面白いんじゃないかなって。
赤峰  なるほど、さすがは菊池先生。では、僕が先生のコートを着るとしたら、そうですね、確か色違いでネイビーもあったと思いますが、そっちを着て、中にコバルトブルーか、ロイヤルブルーのラコステの長袖のポロシャツを合わせ、ネイビーとのグラデーションを見せつつ、リーバイスのホワイトコーデュロイのトラウザースにスニーカーというのはいかがでしょう。春の気分にしっくりくるのでは。
菊池  いや〜、いいですねぇ。赤峰先生、お見事です!



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(注1) 「アルベルト・ソルディ」(右)
1920年イタリア生まれ。映画俳優として生涯で約150本の映画に出演し、'95年にはその功績が讃えられ、ベネツィア映画祭において特別功労賞を受賞。'03年没。

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(注2) 「スティーブ・マックィーン」
1930年アメリカ生まれ。'56年に「傷だらけの栄光」で映画デビュー。一躍人気スターの仲間入りを果たし、以後アクション映画を中心に数々の作品に出演する。'80年没。

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(注3) 「ジャン=ルイ・トランティニャン」
1930年フランス生まれ。'55年に「空と海の間に」で映画デビュー。'66年の「男と女」で一躍有名になり、今やフランス映画界を代表する名優としてその名を知られる。

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(注4) 「ジャック・タチ」
1903年フランス生まれ。映画監督兼俳優。'53年、「僕の伯父さんの休暇」を発表。主人公ユロ氏の風変わりなキャラクターとともに世界中で大ヒットを記録。'82年没。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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